古代オリンピック競技の全体像とは?全部で13の競技種目の具体的な内容とそれぞれの種目における最初の優勝者の名前
古代ギリシアのオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいては、短距離走や長距離走、格闘競技や戦車競走、そして、五種競技(ペンタスロン)といった様々な陸上競技が行われていたと考えられることになるのですが、
それでは、こうした古代のオリンピックにおける代表的な競技種目としては具体的にどのような競技の名が挙げられることになり、
それぞれの競技種目においては、具体的にどのような競技内容の競技が行われていたと考えられることになるのでしょうか?
古代オリンピックにおける大会全体の行程と競技種目とは?
そうすると、まず、
こうした古代のオリンピックにおいて、開会を告げるトランペットの演奏と弁舌家が読み上げる華麗な布告文によってはじまる開会式のすぐ後に行われていたと考えられるオリンピックの最初の競技としては、
スタディオン走と呼ばれる古代の短距離走にあたる競技が行われていたと考えられることになります。
そして、その後、こうしたスタディオン走以外で徒競走にあたる競技としては、ディアウロス走とドリコス走といった競技、さらには、武装競走や戦車競走といった競走競技が行われていたほか、
格闘競技としてはレスリングとボクシングとパンクラチオンと呼ばれる三つの競技種目が行われていたと考えられることになります。
また、そのほかにも、
五種競技(ペンタスロン)と呼ばれる混成競技においては、スタディオン走・走幅跳(走り幅跳び)・やり投げ・円盤投げ・レスリングという五つの種目が順番に行われていくことになっていて、
さらには、そのほかにも、トランペット演奏競技や弁論大会などといった運動競技以外の芸術的な技能を競う競技会を開かれていたと考えられることになります。
そして、
こうした全体として3~5日間ほどの古代オリンピックの行程における最後の日にあたるオリンピックの最終日には、それぞれの競技の勝者をほめ称えて、大会の成功を祝うための開かれた盛大な饗宴が1日を通して続いていくことになっていたと考えられることになるのです。
古代オリンピックにおける全部で13の種目の具体的な競技内容とは?
そして、
こうした古代オリンピックにおいて行われてスタディオン走、ディアウロス走、ドリコス走、武装競走と戦車競走、レスリングとボクシングとパンクラチオン、
そして、五種競技のみに含まれている走幅跳、やり投げ、円盤投げの三種目の競技と、付加的な競技として行われることがあったトランペット演奏競技と弁論大会といったそれぞれのオリンピックの競技種目の具体的な競技内容についてまとめると、それは以下のようなものであったと考えられることになります。
まず、はじめに挙げた三つの競走競技のうち、
スタディオン走は、約192 mの直線距離を走る速さを競っていくという現代の200m走に近い古代の短距離走にあたる陸上競技、
ディアウロス走は、約384mの距離を走っていくという現代の400m走に近い古代の中距離走にあたる陸上競技、
ドリコス走は、約4km~5kmの距離を走っていくという現代の4000m走または5000m走に近い古代の長距離走にあたる陸上競技として位置づけられることになります。
そして、その次に挙げた
武装競走(ホプリトドロモス)は、大盾を左手に持った重装歩兵(ホプリテス)の格好をした選手たちが350~400mくらいの距離を走っていく競走競技、
戦車競走(アルマトドロミア)は、テスリッポンと呼ばれる四頭立ての馬車、または、シノリスと呼ばれる二頭立ての馬車に乗った競技者たちが6km~7kmくらいの距離を走っていく競走競技として位置づけられることになります。
また、その次に挙げた三つの格闘競技のうち、
レスリングは、組み技や投げ技によって相手の肩や背中を地面に着けて組み伏せる、あるいは、絞め技や関節技によって相手を降参させることによって得点が入るという3ポイント先取のポイント制で勝敗の決着がつけられていた格闘競技、
ボクシングは、手や腕や肘などを用いた打撃攻撃のみが認められていて、対戦相手が降参するか意識を失って戦闘不能になることによって勝敗の決着がつけられていた格闘競技、
パンクラチオンは、急所への攻撃などのわずかな禁じ手を除く打撃攻撃や組み技や投げ技さらには関節技などといったほとんどすべての攻撃が有効な攻撃として認められていて、対戦相手が降参するか重傷を負って戦闘不能になるか、場合によっては、対戦相手の死をもって勝敗の決着がつけられることもあった古代の総合格闘技にあたる格闘競技として位置づけられることになります。
そして、その次に挙げた五種競技のうちに含まれている五種目の競技のなかで、すでに解説したスタディオン走とレスリングを除く、残りの走幅跳、やり投げ、円盤投げの三種目の競技については、
走幅跳は、現代の走幅跳よりも長さが短い10数mから20mほどの助走路を走り抜けていったのち、跳躍の際に、両手に持った1~4.5kgほどのダンベルのような重りを振って重心を変えながら跳躍距離を競っていく陸上競技、
やり投げは、現代の槍よりも長さの短い2m前後の長さの先端部分に金属加工のされた木製の槍を投げる際に、槍の中央部分に結び受けられた投擲用の革製のひもの助けも借りながら、投擲された槍の飛距離を競い合う陸上競技、
円盤投げは、現代の円盤よりも少し大きめで重い傾向にある直径16~35 cm、重さ1.25 kg~5.7 kgの石製または金属製の円盤を投げて、投擲された円盤の飛距離を競い合う陸上競技として位置づけられることになり、
最後に挙げたトランペット演奏競技 と 弁論大会といった付加的なオリンピックの競技においては、
主に、楽器の音の大きさや演奏の美しさ、あるいは、文章を読み上げていく際の発声の明朗さと声の大きさや美しさといったある種の身体的な能力と芸術的な技能が競われていくことになっていたと考えられることになるのです。
古代オリンピックの歴史とそれぞれの競技種目における最初の優勝者の名前
そして、
こうした古代のオリンピックにおけるそれぞれの競技が正式なオリンピック種目として採用されることになった年と大会の回次、その競技会において最初の優勝者となった人物の名前についてもすべて歴史上の資料に基づく記録が残されていて、
そうした歴史上の資料に基づく一連の記録について、それぞれの競技がオリンピックにおける正式種目として採用された年代順に並べていく形で整理していくと以下のようになります。
紀元前776年に行われた古代オリンピックの第1回大会において、オリンピックにおけるスタディオン走の最初の優勝者となったのはエリスのコロイボス(Koroibos)、
紀元前724年に行われた古代オリンピックの第14回大会において、オリンピックにおけるディアウロス走の最初の優勝者となったのはエリスのヒュペノス(Hypenos)、
紀元前720年に行われた古代オリンピックの第15回大会において、オリンピックにおけるドリコス走の最初の優勝者となったのはスパルタのアカントス(Acanthus)、
紀元前708年に行われた古代オリンピックの第18回大会で、オリンピックにおける五種競技の最初の優勝者となったのはスパルタのランピス(Lampis)、
紀元前708年に行われた古代オリンピックの第18回大会で、オリンピックにおけるレスリング競技の最初の優勝者となったのはスパルタのエウリュバトス(Eurybatos)、
紀元前688年に行われた古代オリンピックの第23回大会で、オリンピックにおけるボクシング競技の最初の優勝者となったのはスミルナのオノマストス(Onomastus)、
紀元前680年に行われた古代オリンピックの第25回大会で、オリンピックにおける戦車競走の最初の優勝者となったのはテーベのパゴンダス(Pagondas)、
紀元前648年に行われた古代オリンピックの第33回大会で、オリンピックにおけるパンクラチオンの最初の優勝者となったのはシラクサのリグダミス(Lygdamis)、
紀元前520年に行われた古代オリンピックの第65回大会で、オリンピックにおける武装競走の最初の優勝者となったのはヘライアのダマレトス(Damaretos)、
紀元前396年に行われた古代オリンピックの第96回大会で、オリンピックにおけるトランペット演奏競技の最初の優勝者となったのはエリスのティマイオス(Timaios)
紀元前396年に行われた古代オリンピックの第96回大会で、オリンピックにおける説教者の弁論大会の最初の優勝者となったのはエリスのクラテス(Krates)といった人物たちの名が挙げられることになります。
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そして、以上のように、
こうした古代ギリシアにおけるオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいては、
スタディオン走、ディアウロス走、ドリコス走、武装競走、戦車競走、レスリング、ボクシング、パンクラチオン、五種競技、そして、トランペットの演奏競技と弁論大会という全部で11の種目、
五種競技のみに含まれている走幅跳、やり投げ、円盤投げという三組の競技をそれぞれ別々にカウントした場合には、全部で13の競技種目が行われていたと考えられることになるのです。
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⑤スタディオン走とディアウロス走とドリコス走の違いとは?古代オリンピックの三つの競走競技における最初の優勝者の名前
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⑦武装競走(ホプリトドロモス)とは何か?ギリシア語の語源に基づく具体的な意味と重装歩兵の大盾との関係
⑧戦車競走(アルマトドロミア)とは何か?ギリシア語の語源に基づく具体的な意味とシノリスとテスリッポンという種目の違い
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⑮古代ギリシア最強のパンクラチオンの闘士とは?死してなおオリンピックの優勝者としての栄冠を手にした闘士アリキオン
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⑳古代オリンピックの五種競技の具体的な競技内容とは?短距離走・走幅跳・やり投げ・円盤投げ・レスリングの五種目の特徴
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㉒音楽と弁論が古代のオリンピックの種目に選ばれた理由とは?戦時における伝令部隊や後援部隊としての演奏者や弁舌家の役割
㉓古代オリンピック競技の全体像とは?全部で13の競技種目の具体的な内容とそれぞれの競技種目における最初の優勝者の名前
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次回記事:古代ギリシアの四大競技大会とは?四つの古代都市の地理的な関係とそれぞれの競技大会の開催間隔と順序
前回記事:音楽と弁論が古代のオリンピックの種目に選ばれた理由とは?戦時における伝令部隊や後援部隊としての演奏者や弁舌家の役割
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