古代オリンピックにおけるパンクラチオンの具体的な競技内容とは?古代ギリシア語におけるパンクラチオンの意味と勝敗の規定
前回までの記事で書いてきたように、古代ギリシアのオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいては、
古代ギリシア語ではピグマキアと呼ばれる古代のボクシングにあたる競技や、パレーと呼ばれる古代のレスリングにあたる競技が行われていたと考えられることになるのですが、
こうした古代のオリンピックにおける格闘競技としては、そうしたボクシングやレスリングに相当する競技のほかに、パンクラチオンと呼ばれる格闘競技も行われていたと考えられることになります。
れでは、こうした古代ギリシアのオリンピックにおけるパンクラチオンと呼ばれる格闘競技においては、具体的にどのような方式や手順によって競技が行われていたと考えられることになるのでしょうか?
古代ギリシア語におけるパンクラチオンの意味と何でもありの総合格闘技としての位置づけ
そうすると、まず、
こうした古代のオリンピックにおけるパンクラチオン(παγκράτιον、pankration)と呼ばれる格闘競技のことを意味する言葉は、
古代ギリシア語において「すべての」「あらゆる」といった意味を表すパン(παν、pan)という接頭辞と、「力」や「強さ」といった意味を表すクラトス(κράτος、kratos)という名詞が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。
そして、その名の通り、こうした古代ギリシア語においてパンクラチオンと呼ばれる格闘競技は、
急所への攻撃や噛みつき、相手の目を指で突くといったごく一部の禁じ手となる攻撃を除いて、
打撃攻撃から組み技や関節技まで、あらゆる格闘技におけるすべての攻撃が競技における有効な攻撃として認められている何でもありの総合格闘技として位置づけられていたと考えられることになるのです。
古代オリンピックのパンクラチオンにおける具体的な競技内容と勝敗の規定とは?
そして、
こうしたパンクラチオンと呼ばれる古代のオリンピックにおける総合格闘技にあたる競技種目においては、
ボクシングやレスリングといったほかの格闘種目の場合と同様に、競技への参加者は、基本的には、下着すら身につけない全裸の状態で戦うことになっていて、
対戦相手は体重などに関係なく、すべてくじ引きで決められたうえで、トーナメント方式で一人の優勝者が決まるまで対戦が繰り返されていくことになっていたと考えられることになります。
そして、
こうしたパンクラチオンと呼ばれる古代の総合格闘技にあたる格闘競技のルールにおいては、
基本的には、対戦相手が自ら敗北を認めて人差し指を伸ばした状態で手を上に挙げることによって降参の意思を示すことで勝敗が決まることになっていたと考えられるのですが、
前述したように、パンクラチオンにおいては、急所や眼球への攻撃や噛みつきなどを除く、ほとんどすべての攻撃が有効な攻撃として認められていたため、
そうしたあらゆる攻撃が飛び交うことになる競技の最中に、対戦相手のことを気絶させる、あるいは、骨折などの重傷を負わせることによって戦闘不能になることによって認められる勝利や、
極端な場合には、そうした危険な格闘の末に、対戦相手が結果として死亡してしまうことによっても勝利が認められることになっていたと考えられることになります。
ちなみに、
こうした古代オリンピックにおけるパンクラチオン競技の決勝戦においては、激しい格闘の末に、一方の選手が降参の意志を示した瞬間に、もう一方の選手もほぼ同時に力尽きて死んでしまうという悲劇とも言える珍事が発生したこともあるという記録が残されているのですが、
この場合には、
降参の意志を示すことによって選手自身が自らの手によって自分の敗北を認めるという行為は、戦闘不能や死によって審判が認定する敗北よりも優先されると判断されることによって、
すでに死んでしまった選手の遺体に対して、オリンピックの優勝者としてのオリーブの花で飾られた勝利の栄冠がかぶせられることになったと考えられることになるのです。
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次回記事:古代ギリシア最強のパンクラチオンの闘士とは?死してなおオリンピックの優勝者としての栄冠を手にした闘士アリキオン
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