日本において最も高貴な色とは何か?天皇を象徴する白・黄・青・赤の四色と冠位制度における最上位の色としての紫の関係

前回書いたように、フェニキアからローマ帝国、その後のヨーロッパの諸国家においては、巻貝から抽出された赤紫色が皇帝や王家を象徴する色として用いられていたのに対して、

、さらには、といった歴代の中国の統一王朝においては、主に黄色が皇帝を象徴する色として用いられていたと考えられるように、

一般的に、

西洋世界においては、紫色が最も高貴な色として位置づけられるケースが多いのに対して、東洋世界においては、黄色の方がより高貴な色として位置づけられるケースが多いと考えられることになります。

それでは、

日本においては、こうした様々な色彩の序列関係はどのようなものになっていると考えられ、歴史上いったどのような色が最も高貴な色として位置づけられてきたと考えられることになるのでしょうか?

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冠位制度における最上位の色としての紫と天皇を象徴する白

以前に冠位十二階において紫色が最上位の色である理由とは?の記事で詳しく書いたように、

603に推古天皇の摂政であった聖徳太子によって制定された冠位十二階などの日本における伝統的な冠位制度においては、

道教思想などの古代中国思想からの影響を受けることにより、基本的には、紫が最上位の色として位置づけられる傾向が強かったと考えられることになります。

しかし、その一方で、

最も高貴な存在である天皇を象徴する色としては、こうした冠位制度における最上位にあたる紫色が用いられるケースはあまりなく、

伝統的には白が自分以外の他の何色によっても染めることのできない最も神聖な色として位置づけられたうえで、それが天皇をも象徴する最高の服色とされるケースが多かった考えられることになります。

また、こうした白の他にも、

天皇や皇族が着用する(ほう、儀式などに用いる上衣)に用いられることが多い色であった黄丹(おうに)や、黄櫨染(こうろぜん)、

さらには、青白橡(あおしろつるばみ)や、赤白橡(あかしろつるばみ)といった色についても、

天皇や皇太子といった皇族が着用する服色として、臣下の者や下位の地位にある者がみだりに着用することが禁じられる色である禁色(きんじき)として位置づけられるケースもあったと考えられることになります。

天皇および皇太子専用の絶対禁色としての黄丹と黄櫨染の二色の位置づけ

このように、

日本の場合には、冠位制度においては、古代ローマ帝国やヨーロッパ諸国などと同様に、冠位十二階などの伝統的な冠位制度においては、紫色最も高貴な色として位置づけられるケースが多かったと考えられる一方で、

最も高貴な存在である天皇を象徴する色としては、伝統的には、最も神聖な純白の色であるが用いられるケースが多いほか、

中国の歴代王朝などと同様に、黄丹や黄櫨染などの黄色や、青白橡や赤白橡といった赤や青といった色についても皇族のみに着用が許される禁色にあたる最上級の高貴な色として位置づけられるケースもあったと考えられるように、

こうした日本における古代から近代へと至るまでの色彩の序列関係の事情はいろいろと錯綜していて、あまりはっきりしないところがあると考えられることになります。

しかし、

こうした上位の高官や皇族などにのみ着用が許された服の色である様々な禁色のなかでも、前述した黄丹黄櫨染の二色については、それぞれ、

黄丹(おうに)と呼ばれる赤みがかった黄色の色彩は、皇太子が儀式の際に着用する束帯装束にのみ用いられる皇太子専用の服色とされ、

黄櫨染(こうろぜん)と呼ばれる茶色がかった黄色の色彩は、天皇が儀式の際に着用する束帯装束にのみ用いられる天皇専用の服色とされていたように、

こうした黄色の系統に属する二色の色彩は、どんなに高位の地位にある官吏や貴族であっても、皇族以外の者には決して着用が許されない色、すなわち、通常の禁色よりも一段格が上の色彩にあたる絶対禁色として位置づけられていたと考えられることになるのです。

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以上のように、

日本においては、冠位十二階などの伝統的な冠位制度における色の序列関係において最上位に位置する色である紫や、古来からの天皇を象徴する色としての白、高貴な存在である皇族が用いる服色としての青、赤、黄といった様々な色が高貴な色として位置づけられていくことになっていったと考えられることになるのですが、

その中でも、

黄色の系統に属する黄丹黄櫨染の二色については、それらの色が天皇および皇太子専用の絶対禁色として位置づけられてきたことからも分かる通り、

究極的には、日本においても、

隋や唐といった歴代の中国王朝における色彩の序列関係と同様に、黄色の系統に属する色のあり方が、

天皇や皇族が有する特権的な権威のあり方を象徴する通常の色彩の序列関係を超えた至高の色として位置づけられてきたと捉えることができると考えられることになるのです。

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次回記事:三皇とは何か?天皇・地皇・人皇・伏羲・女媧・神農・燧人・黄帝という八人の帝王のうちで最も適切な三人とは誰か?

前回記事:紫と黄色はどちらの方がより高貴な色なのか?西洋世界と東洋世界における色彩観の違い

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