パンデミックの由来とは?古代ギリシア語の語源とパン・ゲルマン主義やデモクラシーとの関係
ウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされる感染症が人から人へと次々に感染を拡大していき世の中に広く流行している状況を意味する言葉としては、パンデミックやアウトブレイクといった言葉が有名ですが、
このうち、日本語では世界的流行あるいは感染爆発と訳されることもあるパンデミックという言葉は、その大本の語源となる意味においては、
古代ギリシア語における以下のような意味を持つ単語に由来する言葉であると考えられることになります。
パンデミックの古代ギリシア語に基づく語源と由来
そうすると、まず、
こうした英語におけるパンデミック(pandemic)という言葉は、
もともと、古代ギリシア語において、
「すべての」「あらゆる」といった意味を表す限定詞であるπᾶν(pan、パン)と、
「人々」「地域」「国家」といった意味を表す名詞であるδῆμος(demos、デーモス)という二つの単語が結びついてできた言葉であると考えられることになります。
つまり、一言いうと、
パンデミック(pandemic)という言葉は、こうした古代ギリシア語における語源的な意味に基づくと、
ウイルスや細菌などの病原体が世界中のあらゆる地域や国々へと感染を拡大していくことによって世界中のすべての人々が広く遍く感染の危機にさらされている状態のことを意味する言葉として解釈することができると考えられることになるのです。
古代ギリシア語のパンとデーモスに由来するパン・ゲルマン主義やデモクラシーといった五つの言葉
そして、
こうしたパンデミックの語源となった古代ギリシア語におけるpan(パン)とdemos(デーモス)という二つの言葉からは、他にも様々な言葉が派生していくことになり、
前者のpan(パン)という古代ギリシア語から派生した言葉としては、例えば、以下のような言葉が挙げられることになります。
パン・ゲルマン主義(Pan-Germanism)と言えば、19世紀末におけるドイツ人の民族主義の高揚によって広がり、のちにヒトラーが率いるナチス・ドイツへと引き継がれていくことになったドイツ民族を統合して世界帝国の建設を目指す民族運動のことを意味することになり、
パン・スラブ主義(Pan-Slavism)と言えば、18世紀末に始まったスラブ民俗学の復興運動を先駆けとして、19世紀半ばからスラブ民族の連帯と統一を目指す政治運動や独立運動へと発展していったヨーロッパ大陸全体における大規模な民族運動のことを意味することになります。
また、その他にも、地球外生命体の存在と起源をめぐる宇宙物理学の様々な学説のなかには、
パンスペルミア説(the theory of panspermia)と呼ばれる学説もあり、この学説では、人類を含むすべての生命の起源は遠い宇宙の別の惑星系から飛来した隕石に付着した微生物などの地球外生命体の存在のうちに求められることになり、我々が住んでいるこの宇宙全体はそうした宇宙空間を飛び交う未知の微生物に由来する生命にあふれているとする宇宙観が提示されていくことになります。
そして、それに対して、
後者のdemos(デーモス)という古代ギリシア語から派生した言葉としては、例えば、以下のような言葉が挙げられることになります。
英語において「民主主義」や「民主政治」のことを意味するデモクラシー(democracy)という言葉は、
古代ギリシア語において「人々」や「民衆」のことを意味するdemos(デーモス)と、「権力」や「支配」のことを意味するkratos(クラトス)という二つの名詞が結びついてできた言葉にあたり、
その他にも、古代エジプトに用いられていたヒエログリフ(聖刻文字)とヒエラティック(神官文字)と並ぶ3種類の文字のうちの1つであるデモティック(Demotic)と呼ばれる文字は、
「人々」や「民衆」にあたるdemos(デーモス)が用いる文字、すなわち、「民衆文字」のことを意味することになるのです。
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