年周視差とは何か?地球の公転運動との関係と太陽系外の恒星において観測される具体的な年周視差の大きさ
前回までの一連の記事のなかでは、日周視差あるいは地心視差と呼ばれる天体観測において地球の自転運動の影響を受けることによって生じる観測方向の角度のずれのあり方について詳しく考察してきましたが、
天文学の分野における視差のあり方は、天体の観測位置が一日のなかで変動していくこうした日周視差のあり方のほかに、天体の観測位置が一年のなかで変動していく年周視差と呼ばれる視差のあり方からも説明されていくことになります。
それでは、こうした日周視差と年周視差と呼ばれる二つの視差のあり方のうちの後者である年周視差とは、具体的にどのような特徴をもった視差のあり方であると考えられることになるのでしょうか?
天文学における年周視差と地球の公転運動との関係
そうすると、まず、
こうした天文学の分野における年周視差と呼ばれる視差のあり方は、
観測対象となる恒星を地球と太陽から見た場合の間で生じることになる観測方向の角度の差のことを意味していて、
地球の公転運動にともなってそうした視差のあり方が一年のなかで変動していくことになるために年周視差と呼ばれることになると考えられることになります。
そして、
こうした年周視差とも呼ばれる視差のあり方においては、地球の公転運動によって地球が太陽の周りを一年かけてグルグルと一周していくことにともなって、
基本的には、地球上から観測されることになる恒星の姿も、一年で一周する円運動を描いていくような形で観測されていくことになると考えられることになるのです。
年周視差が太陽系外の恒星についてのみ観測される理由
ちなみに、
ここで、年周視差が観測されることになる対象となる天体のことを「恒星」と呼んで限定していることには理由があり、
地球から観測することができる金星や火星などといった惑星やその周りを回る衛星といった太陽系内の天体は地球と同じように太陽の周りを回っていて、
上記の図において示したような太陽と地球からの距離が一年を通じて常にほぼ一定となるような関係のうちに位置づけることはできないため、
こうした年周視差と呼ばれる視差のあり方は、そうした地球から観測可能な惑星や衛星といった天体との関係においては観測することが不可能であると考えられることになります。
したがって、一般的に、
こうした年周視差と呼ばれる天文学における視差のあり方は、
太陽の周りを回っている惑星や衛星以外の天体、すなわち、地球と比較的遠い距離にある太陽系外の天体である太陽以外の恒星の運行のあり方についてのみ観測することが可能となると考えられることになるのです。
太陽系外の恒星における具体的な年周視差の大きさ
それでは、
こうした年周視差と呼ばれる視差のあり方は、実際にはどのくらいの角度になると考えられることになるのか?ということについてですが、
それについては、これまでの記事で取り上げてきた日周視差のあり方と比べても、こうした年周視差と呼ばれる視差のあり方における角度は極めて微細なものとなっていて、
例えば、
日周視差の最大値にあたる地平視差と呼ばれる視差のあり方においては、
太陽の地平視差のあり方は、角度の度分秒表記のあり方においておよそ8.794秒、すなわち、通常の度数表記のあり方においては0.002443度ほどの角度として観測されることになり、
月の地平視差のあり方にいたっては、およそ57分2.608秒、すなわち、0.950724度というほとんど1度に近い角度に至るほどの大きな視差が観測されることになるのに対して、
年周視差と呼ばれる視差のあり方においては、
例えば、
地球から見て太陽以外の最も近い恒星にあたるケンタウルス座α星についても、その視差の大きさは、角度の度分秒表記のあり方においておよそ0.75秒、すなわち、通常の度数表記のあり方においては0.000208度という非常に小さな角度としてしか観測することができず、
そのほかにも、例えば、現代の天文学においては、
はくちょう座61番星の年周視差はおよそ0.29秒、
七夕の織姫星として有名なこと座のα星にあたるベガの年周視差はおよそ0.13秒
といった年周視差についての観測なされていると考えられることになるのです。
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次回記事:日周視差と年周視差の違いとは?地球の自転運動と公転運動に基づく二つの視差のあり方の具体的な特徴
前回記事:月の地平視差を利用した地球と月の距離の計算方法とは?太陽系内の天体の距離を概算する実用的な観測データとしての日周視差
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