日周視差と年周視差の違いとは?地球の自転運動と公転運動に基づく二つの視差のあり方の具体的な特徴
天文学の分野においては、視差(しさ)と呼ばれる観測の対象となる天体を二つの地点から観測したときに生じる方向の差のあり方は、
日周視差と呼ばれる観測の対象となる太陽や月や惑星の観測方向が一日のなかで変動していくことになる視差のあり方と、
年周視差と呼ばれる観測の対象となる恒星の観測方向が一年のなかで変動していくことになる視差のあり方という二つの観点から説明されていくことになると考えられることになるのですが、
それでは、
こうした日周視差と年周視差と呼ばれる天文学における二つの視差のあり方には、より具体的にどのような特徴の違いがあると考えられることになるのでしょうか?
日周視差の具体的な特徴と地球の自転運動との関係
そうすると、まず、
詳しくは「日周視差とは何か?地球の自転運動との関係と太陽や月における具体的な地平視差の角度」の記事で書いたように、
前者の日周視差あるいは地心視差と呼ばれる視差のあり方は、
太陽や月といった天体を地球の中心にあたる地心から見た場合と、地球上の実際の観測地点から見た場合との間で生じる観測方向の角度の差のことを意味していて、
日周視差においては、地球の自転運動にともなって観測地点がクルクルと移動していくことによって視差のあり方が一日のなかで変動していくことになると考えられることになります。
そして、上記の左図において示したように、
こうした日周視差と呼ばれる視差のあり方は、地球の中心である地心と、地球上の観測地点と、観測対象となる天体を結ぶ三角形が観測地点の角において90度となる直角三角形によって結ばれる地点、
すなわち、地球から見て観測対象となる天体が地平線上に沈んでいく地点に到達したときに視差が最大化することになり、そうした最大化した日周視差のあり方は地平視差とも呼ばれることになります。
そして、こうした日周視差と呼ばれる視差のあり方は、
地球の中心から地表すなわち地球の半径にあたる6371 kmという天文学的には非常に短い距離の観測点の位置の違いによって生じる観測方向の角度の差のあり方であるため、
太陽や月あるいは金星や火星などの惑星といった地球と比較的近い距離に位置する太陽系内の天体を地球上から見るときに観測される視差のあり方として位置づけられることになると考えられることになるのです。
年周視差の具体的な特徴と地球の公転運動との関係
そして、それに対して、
後者の年周視差と呼ばれる視差のあり方は、
観測対象となる恒星を実際の観測地点となる地球から見た場合と、太陽から見た場合との間で生じる観測方向の角度の差のことを意味していて、
年周視差においては、地球の公転運動にともなって観測地点となる地球の位置が太陽の周りを一年かけてグルグルと一周していくことによって視差のあり方が一年のなかで変動していくことになると考えられることになります。
そして、こうした年周視差と呼ばれる視差のあり方は、
地球の公転軌道半径すなわち地球と太陽の距離にあたる1億4960万kmという比較的長い距離の観測点の位置の違いによって生じる観測方向の角度の差のあり方であり、
地球と同じように太陽の周りを回っている太陽系内の天体については、一年という長い時間のなかで地球との間の距離自体がどんどん変化していってしまい、年周視差だけを取り出して観測することは不可能となるため、
それは、
太陽以外の恒星といった地球と比較的遠い距離に位置する太陽系外の天体を地球上から見るときに観測される視差のあり方として位置づけられることになると考えられることになるのです。
日周視差と年周視差の具体的な特徴の違いのまとめ
以上のように、
こうした日周視差と年周視差と呼ばれる天文学における二つの視差のあり方における具体的な特徴の違いについて一言でまとめると、
前者の日周視差とは、
地球の自転運動によって引き起こされることになる観測対象となる天体を地球の中心にあたる地心から見た場合と地球上の実際の観測地点から見た場合との間で生じる観測方向の角度の差のことを意味する言葉であり、
太陽や月あるいは金星や火星などの惑星といった地球と比較的近い距離に位置する太陽系内の天体を地球上から観測する時に生じる視差のあり方であるのに対して、
後者の年周視差とは、
地球の公転運動によって引き起こされることになる観測対象となる天体を実際の観測地点となる地球から見た場合と太陽から見た場合との間で生じる観測方向の角度の差のことを意味する言葉であり、
太陽以外の恒星といった地球と比較的遠い距離に位置する太陽系外の天体を地球上から観測する時に生じる視差のあり方であるといった点に、
両者の視差のあり方における具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:天文学のパーセクという距離の単位の由来とは?恒星系と地球との間に存在する遠い隔たりを意味する言葉としてのパーセク
前回記事:年周視差とは何か?地球の公転運動との関係と太陽系外の恒星において観測される具体的な年周視差の大きさ
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