天文学のパーセクという距離の単位の由来とは?恒星系と地球との間に存在する遠い隔たりを意味する言葉としてのパーセク
天文学あるいはSF小説やSF映画などの分野においては、地球の遠方に位置する恒星との間の距離や、そうした恒星系同士の間の恒星間航行の距離などを表すのに用いられる単位として、パーセク(parsec)と呼ばれる距離の単位が用いられることがあります。
そして、
こうしたパーセクと呼ばれる距離の単位は、光が一年に進む距離にあたる光年で表すと約3.26光年、一般的に用いられている距離の単位であるキロメートルに直すと約30兆キロメートルという非常に長い距離を表す言葉として定義されることになるのですが、
それでは、
こうしたパーセクという天文学における距離の単位のことを意味する言葉は、より具体的にはどのような意味と由来を持つ言葉として定義されることになると考えられることになるのでしょうか?
パーセクという距離の単位の英語での語源と角度の単位としての「秒」
まず、
こうした英語におけるparsec(パーセク)という言葉は、
観測の対象となる天体を二つの地点から観測したときに生じる方向の差のあり方を示す「視差」のことを意味するparallax(パララックス)という単語と、「秒」を意味するsecond(セカンド)という二つの単語が合わさってできた言葉であると考えられることになります。
ちなみに、
こうしたparsec(パーセク)という言葉の語源の一つとして挙げたsecond(セカンド)すなわち「秒」という言葉は、
ここでは、時間の長さとしての秒数のことを意味しているわけではなく、それは、角度の度数秒表記における最小の単位としての「秒」のことを意味する言葉として用いられていると考えられることになります。
そして、
こうした角度の単位としての「秒」は、通常の度数表記のあり方においては 1/3600度すなわち約0.000278度という極めて微小な角度のことを意味することであると考えられることになるのです。
地球の公転運動によって生じる年周視差と距離の単位としてのパーセクの関係
それでは、こうした語源的な意味に基づいて考えていくと、
パーセクという天文学における距離の単位は具体的にどのような意味と由来を持つ言葉として解釈していくことができるのか?ということについてですが、
それについては、一言でいうと、
地球から見た観測対象となる恒星の視差のあり方が角度としての1秒に達することになる地点に位置する恒星と太陽との距離がこうした天文学における距離の単位としての1パーセクにあたる距離として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、
こうした天文学におけるパーセクという距離の単位のあり方の直接的な由来は、より正確には、地球の公転運動によって引き起こされることになる年周視差と呼ばれる視差のあり方にその直接的な由来が求められることになると考えられ、
詳しくは、「年周視差とは何か?地球の公転運動との関係と太陽系外の恒星において観測される具体的な年周視差の大きさ」の記事で書いたように、
年周視差においては、太陽の周りを回る地球の公転運動に基づいて、観測対象となる恒星を実際の観測地点となる地球から見た場合と太陽から見た場合との間で観測方向の角度の差が生じていくことになると考えられることになります。
そして、
観測対象となる天体と太陽との間の距離が遠く離れていくにしたがって、それに対応して、地球と太陽との間での観測方向の角度の差異にあたる年周視差は少しずつ小さくなっていくことになるのですが、
つまり、天文学の分野においては、上記の図において示したように、
そうした年周視差と呼ばれる視差のあり方が角度としての1秒すなわち約0.000278度に達する地点に位置する天体と太陽との間の距離がちょうど1パーセクにあたる距離として定義されることになると考えられることになるのです。
すべての恒星系と地球との間に存在する遠い隔たりを意味するパーセクという言葉
ちなみに、
地球からの天体観測においては、太陽から最も近い距離に位置する恒星系にあたるケンタウルス座α星の場合でも年周視差の角度は0.75秒という極めて小さい角度としてしか観測されることがなく、
前述したように、年周視差が小さくなるほど、それに対応して、観測対象となる天体の太陽との間の距離は遠くなっていくことになるため、
こうした太陽から最も近い距離に位置する恒星系にあたるケンタウルス座α星と太陽との間の距離は1.325パーセクすなわち約4.319光年という非常に遠い距離に位置していると考えられることになります。
そして、このように、
太陽系の外に位置するすべての恒星系は太陽や地球から見て1パーセク以上離れた距離に位置していると考えられることになるのですが、
そういった意味では、
こうしたパーセクと呼ばれる天文学における距離の単位は、地球を含む太陽系とその外側に位置するすべての恒星系との間に存在する距離の遠い隔たりを意味する単位のあり方としても捉えていくことができると考えられることになるのです。
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