球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?④虫歯の原因となるミュータンス菌とモラクセラ・カタラーリスの具体的な特徴
前回の記事までの一連の記事では、球菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる
ブドウ球菌に分類される黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌と腐性ブドウ球菌、
連鎖球菌に分類される肺炎球菌と化膿レンサ球菌(溶連菌)、そして、
双球菌の一種であるナイセリア属と呼ばれる細菌の種族に分類される髄膜炎菌と淋菌といった細菌の種類について、順番に考察してきましたが、
こうした球菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類としては、その他にも、
ストレプトコッカス・ミュータンスとモラクセラ・カタラーリス(カタル球菌)、さらには、乳酸球菌、腸球菌、ペプトコッカスといった細菌の種類の名も挙げていくことができると考えられることになります。
ミュータンス菌の具体的な特徴と虫歯だけではなく脳梗塞や心筋梗塞の遠因ともなる虫歯菌の位置づけ
まず、こうした球菌に分類されるその他の細菌の種類のうち、はじめに挙げた
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)という細菌は、虫歯の原因菌として知られているミュータンス菌といった呼び名で有名な直径1マイクロメートルくらいの大きさをした連鎖球菌に分類されるグラム陽性の嫌気性球菌の一種として位置づけられることになります。
そして、
こうしたストレプトコッカス・ミュータンスあるいはミュータンス菌と呼ばれる細菌は、人間の口腔内に存在する常在菌の一種であり、
乳幼児期における親からの食べ物の口移しや食器の共有などを通じて、感染者の唾液が口に入ることによって経口感染していくことになると考えられることになるのですが、
人間の口の中に住み着いたミュータンス菌は、食事の後などに口腔内に付着したスクロース(ショ糖)などの糖類を養分とすることによって、グルカンと呼ばれる粘着性が強い多糖類を合成して歯の表面に固着してプラーク(歯垢)を形成していくことになります。
そしてさらに、それと同時に、
こうしたミュータンス菌と呼ばれる細菌は、糖類を代謝していく際に、乳酸を生産していくことによって、口内環境を酸性の状態へと傾けていくことにより、歯を構成する主成分となっているエナメル質やその奥の象牙質の層を溶かしていくことになり、
それによって、歯の組織が細菌によって侵食されて穴が開いていくことを意味するう蝕、すなわち、虫歯と呼ばれる歯に対する細菌感染症の症状が引き起こされていくことになると考えられることになります。
また、
こうしたミュータンス菌と呼ばれる細菌は、虫歯の症状を引き起こすだけではなく、口内環境の悪化などによって口腔内において大量に増殖したミュータンス菌の一部が、口腔内に張り巡らされた毛細血管を介して、血管内へと侵入し、
そこからさらに、脳血管や心臓といった人体における重要な部位の血管に炎症を引き起こしていくことによって、脳出血や脳梗塞、あるいは、狭心症や心筋梗塞の遠因となってしまうケースもあると考えられることになるのです。
モラクセラ・カタラーリス(カタル球菌)の具体的な特徴と肺炎や気管支炎や中耳炎の原因菌としての位置づけ
そして、その次に挙げた、
モラクセラ(Moraxella)は、直径1マイクロメートル前後の大きさをしたグラム陰性の好気性球菌に分類される人間や動物の口腔や気道に生息する常在菌の一種にあたる細菌の種族であり、
その中でも、特に、
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis、カタル球菌)と呼ばれる細菌は、人間に対して病原性を示すことが多い細菌の種類として位置づけられることになります。
そして、
こうしたモラクセラ・カタラーリスと呼ばれる細菌は、前々回の記事で取り上げた肺炎球菌やインフルエンザ菌など共に、肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症の原因となる代表的な細菌の種類として挙げられることになり、
その他にも、副鼻腔炎や結膜炎、中耳炎などを引き起こすケースなどもあり、特に、小児における急性中耳炎においては、薬剤耐性を示す抗生物質の種類が多いことから治療が困難で症状が慢性化しやすい細菌の種類としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤乳酸球菌と腸球菌とペプトコッカスの具体的な特徴と常在菌としての位置づけ
前回記事:球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?③髄膜炎菌と淋菌というナイセリア属に分類される二つの双球菌の具体的な特徴
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