球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤乳酸球菌と腸球菌とペプトコッカスの具体的な特徴と常在菌としての位置づけ
黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌と腐性ブドウ球菌、肺炎球菌と化膿レンサ球菌(溶連菌)、ナイセリア属に分類される髄膜炎菌と淋菌、そして、虫歯菌の一種であるストレプトコッカス・ミュータンスや、モラクセラ・カタラーリス(カタル球菌)といった
球菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類について順番に取り上げてきましたが、
今回の記事では、最後に、乳酸球菌や腸球菌、そして、ペプトコッカスといった通常の場合人体に対して悪影響を及ぼす危険性の低い常在菌常在菌に分類されることになる球菌の種類についても順番に詳しく考察していきたいと思います。
乳酸球菌の具体的な特徴と分類される代表的な細菌の種類
まず、はじめに挙げた
乳酸菌とは、その名の通り、糖類を養分として分解することによって乳酸をつくる働きをする細菌の総称であり、
こうした乳酸菌と呼ばれる細菌のグループは、その形状の違いに応じて、乳酸球菌と乳酸桿菌と呼ばれる二つのグループへと分類されていくことになります。
そして、このうち、
前者の乳酸球菌には、具体的には、エンテロコッカス(Enterococcus)やラクトコッカス(Lactococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、リューコノストック(Leuconostoc)、そして、ストレプトコッカス(Streptococcus)といった細菌の種族に属する
直径1マイクロメートルくらいの大きさをしたグラム陽性の嫌気性球菌に分類される細菌の種類が分類されることになります。
そして、
こうした乳酸球菌に分類されることになる様々な細菌は、ヨーグルトやチーズあるいは漬物といった発酵食品の製造などに利用されることがあるほか、
人間や動物の口腔内や腸内においても広く生息している腸内細菌や常在菌の一種としても位置づけられることになるのです。
腸球菌の具体的な特徴とバンコマイシン耐性腸球菌の危険性
そして、その次に挙げた
腸球菌とは、その名の通り、人間を含む哺乳類の腸内に生息する常在菌のうち球形の形状をした細菌の種類のことを意味する言葉であり、
基本的には、前述した乳酸球菌に分類される細菌の種類のうち、エンテロコッカス(Enterococcus)に代表されるような人間の腸内においても生息することが可能な細菌の種族が、こうした腸球菌と呼ばれる細菌の種族に分類されることになると考えられることになります。
そして、
こうした腸球菌と呼ばれる細菌は、前述した乳酸菌と同様に、自然界において常在する人体に対して悪影響を及ぼす危険性の低い細菌の種類として分類されることになると考えられることになるのですが、
その一方で、
免疫不全などの症状によって細菌感染に対する抵抗力が著しく低下した患者においては、腸球菌が人体内の本来は生息することができないはずの場所にも感染を拡大していってしまうことによって、
日和見感染症として尿路感染症などの原因となってしまうケースもあり、さらには、こうした腸球菌と呼ばれる細菌が血管内へと侵入していってしまうことによって、心内膜炎や敗血症といったより重篤な感染症の症状が引き起こされてしまうケースもあると考えられ、
特に、バンコマイシン耐性腸球菌などのようにペニシリンやバンコマイシンといった様々な抗生物質の種類に対して耐性を備えた薬剤性耐性菌の場合には、こうした抗生物質が効果を発揮しないことによって、日和見感染症の治療自体が非常に困難となってしまうケースもあると考えられることになるのです。
ペプトコッカスの具体的な特徴と粘膜に生息する常在菌としての位置づけ
そして、最後に挙げた
ペプトコッカス(Peptococcus)は、直径1マイクロメートルくらいの大きさをしたグラム陽性の嫌気性球菌に分類される細菌の一種であり、
人間の口腔内や腸内、さらには、皮膚などといった人体の粘膜を中心とする部位に広く生息している常在菌の一種として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、
こうしたペプトコッカスと呼ばれる細菌は、すり傷や切り傷などを負ったときの傷口の化膿や、手術後に発生する術後感染などの原因となるほか、子宮内膜炎などの原因となる細菌の種類としても位置づけられることになるのです。
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そして、以上のように、
こうした球菌と呼ばれる細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、このシリーズの初回から今回までの一連の記事で取り上げてきた
黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、化膿レンサ球菌(溶連菌)、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、髄膜炎菌、淋菌、ストレプトコッカス・ミュータンス、モラクセラ(カタル球菌)、乳酸球菌、腸球菌、ペプトコッカス
といった全部で12種類の細菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?①大腸菌の具体的な特徴と急性胃腸炎や尿路感染症の原因菌としての位置づけ
前回記事:球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?④虫歯の原因となるミュータンス菌とモラクセラ・カタラーリスの具体的な特徴
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