不整脈の危険度レベルに応じた五段階の分類、致死性不整脈と準致死性不整脈そして比較的危険性の低い不整脈の種類のまとめ

これまでのシリーズで書いてきたように、

不整脈の種類には、心室細動や心室頻拍といった直接命にかかわる重篤な不整脈から、単発散発型の期外収縮や、二段脈三段脈の期外収縮といった比較的危険性の低いまで、さまざまな種類があると考えられることになります。

そこで今回は、こうした様々な種類の不整脈の総まとめとして、

前回までに取り上げた代表的な種類の不整脈について、直接命にかかわる危険性の度合いに応じてレベル分けしていく形で分類した場合、

それぞれの不整脈の種類は、どのような危険度の段階にある不整脈であると考えられるのか?ということについて考えていきたいと思います。

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危険度のレベルに応じた不整脈の五段階の分類

これまでに取り上げてきた不整脈の種類を、それぞれの不整脈自体が直接命にかかわる危険度の高さに応じて分類すると、例えば、以下のような形で分類することができると考えられることになります。

それは、

①致死性不整脈

②致死性不整脈へと直結する危険性のある不整脈疾患

③準致死性不整脈

④直接命にかかわる危険性は低いが別の重篤な疾患の原因となる不整脈

⑤比較的危険性の低い不整脈

という五段階の分類です。

まず、

直接命にかかわる危険性の高い致死性不整脈に分類される不整脈の種類としては、

冒頭でも挙げた心室細動と心室頻拍という頻脈性の致死性不整脈のほかに、房室ブロックと洞不全症候群という徐脈性の致死性不整脈も挙げられることになります。

上記の四つの種類の不整脈が引き起こされてしまった場合、血液を送り出す心室部分が事実上の機能停止状態へと陥ってしまう危険性があるので、これらの不整脈の種類は、短時間で心停止へと直結してしまう危険性のある致死性不整脈に分類されることになります。

そして、次に、

心臓自体に狭心症や心筋梗塞、心筋症といった器質的な病変がない場合でも、上記のような致死性不整脈へと直結する危険性のある不整脈疾患の種類としては、

ブルガダ症候群やQT延長症候群QT短縮症候群カテコラミン誘発性多型性心室頻拍や進行性心臓伝導障害といった不整脈疾患の種類が挙げられることになります。

これらの不整脈疾患においては、全身に血液を送り出す心室部分の電気的興奮の伝導経路に異常が直接生じてしまうことになるので、

それよって、上述した致死性不整脈に該当するような心室部分の重篤な不整脈が引き起こされてしまう危険性があると考えられることになるのです。

それに対して、

致死性不整脈へと直結するとは言えないまでも、命に関わる危険性がまったくないとも言い切れない準致死性不整脈には、

WPW症候群における心房細動(偽性心室頻拍や、早期再分極症候群(J波症候群の具体的な特徴)、さらには11伝導型心房粗動といった不整脈疾患が分類されると考えられることになります。

これらの不整脈疾患の場合、心室部分に直接重篤な不整脈の発作が引き起こされるケースは、前述した致死性不整脈へと直結する危険性のある不整脈疾患に分類される不整脈と比べて比較的少ないものの、

これらの不整脈の状態が長時間にわたって継続したり、様々な条件が重なってしまうと、心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈に移行してしまうケースもあるので、準致死性不整脈に分類するのがより適当であると考えられることになります。

そして、その次の危険度のレベルに分類される直接命にかかわる危険性は低いが別の重篤な疾患の原因となる不整脈には、

通常の心房細動や、41伝導型~21伝導型までの心房粗動などが分類されると考えられることになります。

これらの不整脈の場合、心室細動や心室頻拍などの直接命にかかわる不整脈が引き起こされる可能性は低いものの、

こうした不整脈の状態が長く続くと、心房内における血液の流れが停滞するようになり、心房内で停滞していた血液がかたまって血栓を形成し、それが全身の血流に乗って脳動脈などへと飛んでしまうことによって、脳梗塞といった別の致命的な疾患の原因となってしまう可能性があると考えられることになるのです。

そして最後に、比較的危険性の低い不整脈の形態としては、

単発の期外収縮散発型の期外収縮、期外収縮の通常の脈拍のリズムと交互に現れる二段脈や三段脈と呼ばれる期外収縮、上室性頻拍洞性頻脈などが挙げられることになります。

これらの不整脈においては、脈が飛ぶように感じられたり、突然強い動悸が感じられたりすることによって、強い自覚症状や不快感が生じることになりますが、

実際に、こうした不整脈自体が死に直結するような重篤な不整脈へとつながる危険性はほとんどないと考えられることになります。

ただし、

心房部分や房室接合部で生じる頻脈発作である上室性頻拍や、通常の脈拍のリズムが速くなっているだけの洞性頻脈においても、

安静時でも1分間に120回を超えるような状態となる場合は多少注意が必要で、特に、1分間に180回を超えるような高度の頻脈状態が生じている場合には、

そうした頻脈状態自体がもたらす心臓への負担から、より重篤な頻脈性不整脈へとつながってしまう可能性もゼロではないので、

こうしたケースでは、立ちくらみめまい失神といったより危険性の高い症状が現れることがないか、十分に注意を払うことが必要となります。

・・・

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以上のように、

不整脈の種類は、それぞれの不整脈自体が直接命にかかわる危険性の度合いに応じて上記のような五段階の分類に分けて捉えることができると考えられることになります。

そして、五段階の危険度レベルと、それぞれのレベルに分類されると考えられる具体的な不整脈の形態や不整脈疾患との対応関係についてまとめると以下のようになります。

前回までに取り上げた様々な不整脈の種類は、

①致死性不整脈:心室細動心室頻拍房室ブロック洞不全症候群

②致死性不整脈へと直結する危険性のある不整脈疾患:ブルガダ症候群QT延長症候群QT短縮症候群カテコラミン誘発性多型性心室頻拍進行性心臓伝導障害

③準致死性不整脈:WPW症候群における心房細動(偽性心室頻拍)早期再分極症候群(J波症候群)11伝導型心房粗動

④直接命にかかわる危険性は低いが別の重篤な疾患の原因となる不整脈:通常の心房細動41伝導型~21伝導型までの心房粗動

⑤比較的危険性の低い不整脈:単発の期外収縮散発型の期外収縮二段脈および三段脈上室性頻拍洞性頻脈

という危険度のレベルに応じた五段階の分類に分けて捉えることができると考えられることになるのです。

ただし、

上記の危険度レベルに応じた五段階の分類は、あくまで不整脈という単独の症状自体でみた危険度の分類であり、

実際には、狭心症や心筋梗塞、心筋症といった器質的な心疾患の有無、めまいや失神などの危険な兆候や、その他の自覚症状の有無

さらには、通常の心電図検査のほかに、負荷心電図(運動によって心臓に負荷をかけた状態の心電図)やホルター心電図(小型の計測器の装着による日常生活における長期間の心電図)などの結果を踏まえたうえで、

個人個人の不整脈における実際の危険性の高さが総合的に判断されていくことになります。

・・・

このシリーズの初回記事致死性不整脈の四つの分類と心室細動と心室頻拍の違い

前回記事:WPW症候群における心房細動が偽性心室頻拍とも呼ばれる理由とは?副伝導路によって形成されるリエントリー回路の仕組み

関連記事:致死性不整脈を引き起こす代表的な五つの不整脈疾患の種類のまとめ

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