藍藻(シアノバクテリア)とは何か?①青色の光合成色素を持つ原核生物に分類される単細胞性の微細な藻類、藻類とは何か?⑨
このシリーズの前回の記事で書いたように、広義における藻類に分類される単細胞性の微細な藻類の種族としては、
渦鞭毛藻やクリプト藻やラフィド藻といった鞭毛藻類に分類される生物の種族の他に、珪藻類や藍藻類といった生物の種族の名前などが挙げられることになります。
そして、
こうした広義における藻類に分類される生物の種族の中の最後に挙げた藍藻と呼ばれる生物の種族は、現在では正式にはシアノバクテリアと呼ばれることが多いのですが、
それでは、
こうした藍藻とシアノバクテリアと呼ばれる二つの言葉は、互いにどのような関係にあり、
こうした藍藻あるいはシアノバクテリアと呼ばれる生物の種族は、具体的にどのような特徴を持った生物の種族であると考えられることになるのでしょうか?
藍色の藻類を意味する藍藻と、藍色の細菌を意味するシアノバクテリア
藍藻(らんそう)とは、その名の通り、藍色(あいいろ)、すなわち、濃い青色や緑がかった青色をした藻類のことを意味する言葉であり、
藍藻に分類される生物は、光合成を行うために用いられる色素として、体内に緑色の色素であるクロロフィル(葉緑素)の他に、フィコシアニン(藍藻素)と呼ばれる青色の色素も持っているため、
そうした全体的に少し青みがかった緑色をした体色をしている場合が多いと考えられることになります。
また、それに対して、
シアノバクテリア(cyanobacteria)とは、
英語で青緑色や藍緑色を意味する名詞であるcyan(シアン)が接頭辞となったcyano-(シアノ)に、細菌を意味する名詞であるbacteria(バクテリア)が結びつくことによってできた言葉であり、
その名の通り、青緑色あるいは藍色(あいいろ)の色をした細菌、すなわち、藍色細菌(らんしょくさいきん)のことを意味する言葉であると考えられることになります。
光合成を行う植物としての藍藻と、原核生物に分類される細菌としてのシアノバクテリア(藍色細菌)という二つの捉え方の違い
それでは、なぜ、同じ生物の種族が、
藍藻という藻類、すなわち、植物の一種のことを意味する名前で呼ばれているのと同時に、シアノバクテリア(藍色細菌)という細菌の一種のことを意味する名前でも呼ばれているのか?ということについてですが、
それは、こうした藍藻あるいはシアノバクテリアと呼ばれる生物が、
光合成を行うことによって酸素を発生させているという点では、植物としての性質を満たしているものの、その細胞全体の構造としては、一般的な植物や動物の細胞構造ではなく、むしろ、細菌と同じ構造をしているという点にその理由が求められることになると考えられることになります。
一般的な植物や動物の場合は、それが人間などの多細胞生物の細胞であれ、ゾウリムシのような単細胞生物であれ、すべての生物が自らの細胞の内部に核膜を持ち、細胞の遺伝情報を担うDNAが格納されている核と細胞質が明確に区分されている真核生物に分類されるのに対して、
細菌の場合は、核膜を持たないため、そうした一般的な植物や動物の細胞に見られるような核と細胞質の間の明確な区分は存在せずに、細胞の遺伝情報を担うDNAが細胞の内部でむき出しの状態で浮遊している原核生物に分類されることになるのですが、
藍藻あるいはシアノバクテリアと呼ばれる生物は、上記の二つの生物の分類のうち、核膜を持たずに、核と細胞質の間の明確な区分が存在しない細菌と同じ原核生物に分類される生物であると考えられることになるのです。
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以上のように、
藍藻あるいはシアノバクテリアと呼ばれる生物の種族の具体的な特徴としては、
それが植物学的には広義における藻類に区分される単細胞性の微細な藻類に分類される生物の種族であり、
光合成に用いられる色素として、体内に緑色の色素であるクロロフィル(葉緑素)の他に、青色の色素であるフィコシアニン(藍藻素)も比較的多く含まれているため、全体として少し青みがかった緑色の体色をしている場合が多いという点や、
光合成を行うことによって酸素を発生させる生物であるという点では、植物としての性質を有してはいるものの、
核膜を持たず、核と細胞質の間の明確な区分は存在せずに、細胞の内部でDNAがむき出しの状態で浮遊している原核生物に分類されるという点では細菌と同じ細胞構造を持った生物であるといった点が挙げられることになると考えられることになります。
そして、
こうした生物の一群に対して、藍藻とシアノバクテリア(藍色細菌)という二つの異なる呼び名が用いられることがある理由としては、
上述したように、これらの生物が植物の性質と細菌の構造という二つの特徴をあわせ持った存在であると考えられるという点が挙げられることになるわけですが、こうしたことを踏まえると、
つまり、
藍藻あるいはシアノバクテリアと呼ばれる生物の種族は、
それが光合成を行い酸素を発生させるという植物としての性質に重きを置いて捉えられる場合には、藍藻と呼ばれて、藻類、すなわち、植物の一種として分類されることになり、
それに対して、
核膜を持たずに細胞の内部でDNAがむき出しの状態で浮遊している原核生物であるという細菌としての性質に重きが置かれる場合には、シアノバクテリア(藍色細菌)と呼ばれて、今度は細菌の一種として分類されることになると考えられることになるのです。
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次回記事:藍藻(シアノバクテリア)は植物と細菌のどちらのグループに分類されるのか?、藍藻とは何か?②
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