ユーグレナ植物とは何か?①生物学における具体的特徴とミドリムシとの関係と健康食品としてのユーグレナ、藻類とは何か?⑩
このシリーズの前回までの記事で詳しく書いてきたように、広義における藻類に分類される単細胞性の微細な藻類の種族には、
渦鞭毛藻やクリプト藻やラフィド藻といった鞭毛藻類に分類される生物や、珪藻類や藍藻類といった種族の名前などが挙げられることになるのですが、
こうした単細胞性の微細な藻類に分類される様々な生物のなかでも、特徴的な性質を持った生物の種族の名前をさらに挙げていくとするならば、
ユーグレナ植物やクロララクニオン植物、灰色藻といった種族の名前を挙げていくことができると考えられることになります。
今回は、そうした微細な藻類の種族のうち、ユーグレナ植物と呼ばれる生物の種族について、それが生物学的には具体的にどのような特徴を持った生物であるのか?ということについて詳しく考えていきたいと思います。
ユーグレナ植物の生物学における具体的な特徴とは?
ユーグレナ植物とは、英語ではeuglenid(ユーグレイド)あるいはeuglenoid(ユーグレノイド)と呼ばれる単細胞性の藻類の一群のことを意味する言葉であり、
細胞構造の違いや、淡水性や海産性あるいは他の生物との共生関係といった生育環境の違い、光合成能力の有無などに応じて、さらに、40~50種程度の種族とそうした種族のいずれかに分類される800~1000種類程度の下位分類となる生物の種類への細かい分類がなされていくことになります。
そして、
こうしたユーグレナ植物に分類される生物の具体的な特徴としては、
ユーグレナ植物は、単細胞性の藻類の一種に分類される生物であるということのほかに、
植物細胞と同様に光合成を行う種族が多く分類されている一方で、鞭毛(べんもう)と呼ばれる運動性を持った器官を有していて、
感光点と呼ばれる原始的な視覚器官にも通じるような光の強弱を感じ取る機能を持つ部位や、特定の方向から来る光を遮ることによって感光点に到達する光の方向性を調整する機能などを持つ眼点(がんてん)と呼ばれる細胞小器官が存在するという点が挙げられることになり、
また、その他にも、
前述したように、ユーグレナ植物は光合成を行う種族が多いという点では、広義における藻類、すなわち、植物の一種にも分類されるものの、
そうしたユーグレナ植物には、通常の植物細胞に見られるような丈夫な外郭構造である細胞壁が存在せず、動物細胞と同様に細胞膜のみによって細胞が保護されているという柔軟な構造をしているといった点などが、
他の一般的な植物とユーグレナ植物とを区別する具体的な特徴として挙げられることになると考えられることになります。
ユーグレナ植物とミドリムシとの関係と、健康食品としてのユーグレナ
そして、
こうしたユーグレナ植物(ユーグレイド)に分類される生物のうち、最も代表的な種族が、
日本語ではミドリムシ(緑虫)、英語ではeuglena(ユーグレナ)と呼ばれる生物であると考えられることになるのですが、
近年の日本においては、こうしたユーグレナ植物と呼ばれる生物の一群は、様々な優れた栄養素を多く含む健康食品の素材となる植物としても注目されていて、
ユーグレナ植物に含まれる具体的な栄養素の種類としては、
例えば、
ロイシン、イソロイシン、リシン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、メチオニン、フェニルアラニンといった9種類の必須アミノ酸のすべてを含む全部で18種類のアミノ酸の他に、
ビタミンB1、B2、B6、B12、ビタミンC、D、E、ナイアシンや葉酸、マグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛といった各種ビタミンやミネラルから、
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、オレイン酸やリノール酸といった不飽和脂肪酸、クロロフィル(葉緑素)やルテインなどの抗酸化物質、
さらには、高分子の多孔質構造を持つことによって、通常の食物繊維よりもさらに効率の良いデトックス作用を持っているとも考えられているパラミロンと呼ばれる独自成分の名前などが挙げられることになります。
そして、そういう意味では、
日本語において、「ミドリムシ」という言葉が用いられる時には、それが「~虫」という表現となっていることからも分かる通り、
こうした生物が鞭毛を備えることによって運動性を持ち、植物細胞に見られるような細胞壁を持たないといったどちらかというと動物的な側面が強調される表現となっていると考えられるのに対して、
日本において「ユーグレナ」という言葉が用いられる時には、上述したような健康食品の素材となるような栄養素を豊富に含む藻類といった植物的な側面が強調される形で、こうした表現が用いられているケースが多いとも考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
ユーグレナ植物(ユーグレイド)やミドリムシ(ユーグレナ)と呼ばれる生物の種族の生物学における具体的な特徴としては、
それが光合成を行うと同時に鞭毛と呼ばれる運動性を持つ器官も備えた単細胞性の藻類の一種に分類される生物であり、
通常の植物細胞とは異なり、細胞壁は持たずに、細胞膜のみによって覆われた柔軟な構造を持ち、
感光点と呼ばれる原始的な視覚器官に通じる機能や眼点と呼ばれる光の方向性を調整する機能を備えた細胞小器官を持っているといった点が挙げられると考えられることになります。
そして、
日本語において「ミドリムシ」という言葉が用いられるときには、それがどちらかというと動物的な性質を強調する表現となっているのに対して、
「ユーグレナ」という言葉が用いられるときには、こうした言葉が近年の日本においては、健康食品の素材となる栄養素を豊富に含む藻類のことを意味する言葉として用いられるケースが多いように、
それはどちらかというと、日本語においては、植物的な側面を強調する表現となっているとも考えられることになるのです。
・・・
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