植物の起源はシアノバクテリアなのか?真核細胞と光合成細菌の融合体としての植物細胞の起源、藍藻とは何か?③

前回書いたように、シアノバクテリアあるいは藍藻と呼ばれる生物は、細胞内における光合成色素の分布といった光合成の具体的な仕組みのあり方に植物細胞との相違点が見られることや、

紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌といった他の光合成細菌との関係や、その分類上の問題などから、

生物学的には、植物ではなく細菌に分類する方がより適切な分類のあり方であると考えられることになるのですが、

その一方で、

こうしたシアノバクテリアのような光合成を行う細菌の種族は、しばしば、現在の植物の起源となった生物としても取り上げられることになります。

そこで、今回の記事では、

そうしたシアノバクテリア藍藻と呼ばれる生物が、果たして、本当に植物の直接的な祖先や起源となる存在であると言えるのか?という問題について、また改めて考えてみたいと思います。

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世界最古の光合成生物としての紅色細菌と酸素発生型の光合成の起源

冒頭で述べたように、シアノバクテリアは、しばしば、植物の起源としても捉えられる生物であり、

かつては、今から35憶年ほど前に、地球上ではじめて光合成を行った生物が、シアノバクテリアのような光合成細菌の一種であったと考えられていたのですが、

現在では、

こうした光合成の起源となる生物は、シアノバクテリアのような青色や緑色系統の色素を多く含む酸素発生型の光合成を行う細菌の種族ではなく、

カロテノイドなどの赤色や褐色の色素を多く含む紅色細菌の一種が実際に地球上ではじめて光合成を行った生物であったと考えられています。

そして、

こうした紅色細菌においては、光合成の仕組みのあり方も、現在の植物細胞とは大きく異なっていて

光合成の際には、水(H2O)ではなく硫化水素(H2S)などを利用し、

光合成の際に放出される副産物も、酸素(O2)ではなく硫黄(S)や硫酸(H2SO4)などが発生していたと考えられることになります。

そして、こうしたことを考え合わせると、

前述したように、世界最古の光合成生物は、シアノバクテリアではなく紅色細菌であったと考えられるものの、酸素発生型の光合成の起源はそうした紅色細菌の種族における光合成のあり方には求めることができない以上、

そういう意味では、

現在の植物細胞における光合成の起源となった生物は、こうした地球上ではじめて光合成を行った硫黄発生型の光合成を行う紅色細菌ではなく、酸素発生型の光合成を行うシアノバクテリアのような細菌の種族であったとも考えられることになるのです。

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真核細胞とシアノバクテリアとの融合体としての植物細胞の起源

しかし、その一方で、

そうした酸素発生型の光合成の起源がシアノバクテリアに求められるということから、植物細胞の直接的な起源もシアノバクテリアにあるということが必ずしも帰結するというわけではなく、

そもそも、

細菌であるシアノバクテリアと植物細胞とでは、細胞核を持つ原核生物と細胞核を持たない真核生物という細胞の構造のあり方自体が根本的に大きく異なっているので、

そうした原核生物である細菌が、真核生物である植物細胞の直接的な祖先や起源となること自体が通常はあり得ないことであると考えられることになります。

そして、

地球上においてシアノバクテリアに属する細菌の種族の存在がはっきりと確認されていて、最初の真核生物も誕生したと考えられている時期は、両方ともちょうど今から27憶年ほど前の時期であったと考えられることになるのですが、

以上のようなことを考え合わせると、

シアノバクテリア自体が植物細胞の直接的な起源となる生物であったというよりは、むしろ、

酸素発生型の光合成を行うシアノバクテリアのような光合成細菌を、それとは別の何らかの真核生物の細胞自らの体内に取り込むことによって、体内に現在の植物細胞における葉緑体のような働きを担う細胞小器官を持った新たな細胞が誕生し、

それが現在における植物細胞の直接的な起源となったと考える方がより妥当な解釈であると考えられることになるのです。

・・・

つまり、そういう意味では、

シアノバクテリアと呼ばれる生物の種族は、真核生物である植物の直接的な起源となる生物であるとは言えないものの、それは、植物細胞内の最も重要な細胞小器官である葉緑体の直接的な起源となる生物であり、

太古の昔、現在のミトコンドリアに類するような小さな細胞生物を、それよりも大きな細胞生物自らの体内に取り込んで共生関係を営むことによって、人間を含めたあらゆる動物の起源となる細胞が生じたと考えられることになるのと同様に、

植物の起源となる細胞も、そうしたミトコンドリアの起源と同様に、葉緑体の起源となるシアノバクテリアのような細胞生物を、それよりも大きな別の真核細胞生物が自らの体内に取り込んで共生関係を営むことによって新たな細胞が誕生し、

そうした新たに誕生した真核細胞とシアノバクテリアとの融合体こそが、現在存在するあらゆる植物の起源となる細胞となったと考えられることになるのです。

・・・

次回記事:ユーグレナ植物とは何か?①生物学における具体的特徴とミドリムシとの関係と健康食品としてのユーグレナ、藻類とは何か?⑩

前回記事:藍藻(シアノバクテリア)は植物と細菌のどちらのグループに分類されるのか?、藍藻とは何か?②

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