テトロドトキシンを体内に蓄積する代表的な20種類の生物の種族と無毒性のフグの存在および毒素の具体的な利用方法の違い
「動物性の自然毒の代表的な種類とは?」の記事で書いたように、食中毒の原因となる代表的な動物性の自然毒の種類としては、
まず第一に、フグの毒として有名なテトロドトキシンと呼ばれる毒素の種類が挙げられることになりますが、
こうしたテトロドトキシンを自らの体内に蓄積する生物の種類としては、そうしたフグ科に属する魚の種類の他にも、タコやカニ、貝やカエルといった様々な種類の生物の種族が挙げられることになると考えられることになります。
シガテラの原因となる代表的な毒素の種類と食中毒の具体的な症状
こうしたテトロドトキシン(Tetrodotoxin)と呼ばれる毒素を自らの体内に蓄積する具体的な生物の種族について、代表的な生物の種類の例を順番に挙げていくと、
①トラフグ(虎河豚)や②マフグ(真河豚)、③クサフグ(草河豚)といったフグ科に属する魚の種類の他にも、
④ツムギハゼ(紬沙魚)などの他の魚類や、⑤ヒョウモンダコ(豹紋蛸)や⑥オオマルモンダコ(大丸紋蛸)といったタコ類などの一部、
⑦スベスベマンジュウガニ(滑々饅頭蟹)や⑧ウモレオウギガニ(埋扇蟹)などの甲殻類(こうかくるい)や、⑨カブトガニ(兜蟹)などの鋏角類(きょうかくるい)といった海洋性の節足動物の種類が挙げられることになるほか、
⑩トゲモミジガイ(棘紅葉貝)と呼ばれるヒトデ類の一部や、⑪キンシバイ(錦糸貝)や⑫ハナムシロガイ(花筵貝)、⑬ボウシュウボラ(房州法螺)、⑭オオナルトボラ(大鳴門法螺)といった貝類、
⑮ヒラムシ(平虫)や⑯コウガイビル(笄蛭)といった扁形動物や、
さらには、⑰アカハライモリ(赤腹井守)や⑱シリケンイモリ(尻剣井守)や⑲カリフォルニアイモリ、⑳アテロパスと呼ばれる中南米のカエルといった両生類のなかにも、
こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素を持つ生物の種族が存在すると考えられることになるのです。
その他の渦鞭毛藻や珪藻によって生産された毒素が魚貝類の体内に蓄積されることによって引き起こされる食中毒の具体的な特徴
また、その一方で、
こうしたフグを中心とする海洋生物の体内におけるテトロドトキシンの蓄積濃度には、それぞれの海洋生物が棲んでいる海域や季節の移り変わりなどによって大きな違いが生じてくることになるということが分かっていて、
例えば、
シロサバフグ(白鯖河豚)やクロサバフグ(黒鯖河豚)と呼ばれる同じフグの種類の場合においても、一般的に、南方の南シナ海産のクロサバフグは毒性が高いのに対して、北方の日本近海で獲れるクロサバフグはほとんど無毒の状態に近い場合が多いということが知られているというように、
こうした日本近海で獲れるシロサバフグやクロサバフグといったフグの種類のなかには、テトロドトキシンを含む人体に対して毒性を示す毒素をほとんど含んでいない無毒性のフグなども存在していると考えられることになるのです。
ちなみに、
こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素は、その毒素を有するそれぞれの生物の種族によって、毒素の具体的な利用方法にも大きな違いが見られることになり、
例えば、
フグの場合には、通常の場合、自らの皮膚からテトロドトキシンを分泌したり、卵巣の内部に大量のテトロドトキシンを蓄積したりすることによって、
自分たちのことを捕食しようとする外敵を寄せつけないようにして自分自身や卵を守るという防護的な目的のためにこうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素を利用していると考えられることになるのですが、
それに対して、
ヒョウモンダコの場合には、餌となる生物を捕食する際に、相手に噛みついてから唾液腺から分泌される毒素を獲物に注入することによって、獲物を麻痺させて捕食しやすくするという攻撃的な目的のために、こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素を利用していると考えられることになるのです。
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次回記事:フグの漢字表記「河豚」や異名「てっぽう」の語源と古代ギリシア語に基づく学名の由来とは?「四本の大きな歯を持つ魚」
前回記事:動物性の自然毒の代表的な種類とは?③渦鞭毛藻や珪藻に由来する毒素の魚貝類への蓄積が引き起こす食中毒の具体的な特徴
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