動物性の自然毒の代表的な種類とは?③渦鞭毛藻や珪藻に由来する毒素の魚貝類への蓄積が引き起こす食中毒の具体的な特徴
前々回と前回に引き続いて、今回の記事でも動物性の自然毒にあたる魚貝毒に分類される代表的な毒物の種類について取り上げていくと、
今までの記事で取り上げてきたテトロドトキシン、サキシトキシン、コノトキシン、シガトキシンといった毒素のほかにも、
さらに、マイトトキシン、スカリトキシン、シガテリン、パリトキシン、ブレベトキシン、ペクテノトキシン、オカダ酸、アザスピロ酸、ドウモイ酸といった毒素の種類が挙げられることになります。
シガテラの原因となる代表的な毒素の種類と食中毒の具体的な症状
⑤マイトトキシン、⑥スカリトキシン、⑦シガテリン
このうち、はじめに挙げたマイトトキシン(Maitotoxin)、スカリトキシン(Scaritoxin)、シガテリン(Ciguaterin)と呼ばれる三つの毒素の種類は、
前回取り上げたシガトキシン(Ciguatoxin)と同様に、主に熱帯の海に生息する毒性を持った一部の有毒渦鞭毛藻によって生産された毒素が一部の魚類や貝類の体内に蓄積されることによって、それらの魚を食べた人間に対しても食中毒を引き起こすことになると考えられることになります。
そして、
こうしたシガトキシン、スカリトキシン、スカリトキシン、シガテリンといった熱帯性の有毒渦鞭毛藻が生産する毒素を蓄積した魚類を食べることによって引き起こされる食中毒は、
一般的に、これらの毒素を蓄積する代表的な魚貝類の種類として挙げられる中南米のカリブ海に生息する巻き貝の一種であるチャウダー貝のことを意味するシガ(Cigua)という現地での名称にちなんで、シガテラ(Ciguatera)と呼ばれていて、
こうしたシガトキシン、スカリトキシン、スカリトキシン、シガテリンといった毒素は、こうしたシガテラの原因となる毒素という意味で、シガテラ毒として総称されることになるのですが、
そうしたシガテラ毒を原因とする食中毒においては、前回の記事でも詳しく取り上げたように、腹痛や下痢やおう吐といった消化器系の症状と、温度感覚異常や手足のしびれ、さらには、不整脈や血圧低下といった神経系の中毒症状が同時並行的に進行していくことになると考えられることになるのです。
その他の渦鞭毛藻や珪藻によって生産された毒素が魚貝類の体内に蓄積されることによって引き起こされる食中毒の具体的な特徴
⑧パリトキシン、⑨ブレベトキシン
そして、その次に挙げたパリトキシン(Palytoxin)やブレベトキシン(Brevetoxin)といった毒素は、
前者のパリトキシンは、有毒渦鞭毛藻によって生産された毒素がアオブダイやソウシハギなどの魚類の体内に蓄積されることによって、
後者のブレベトキシンは、同じく有毒渦鞭毛藻によって生産された毒素がカキなどの貝類の体内に蓄積されることによって食中毒の原因となると考えられ、
こうしたパリトキシンやブレベトキシンを原因とする食中毒においては、フグ毒として有名なテトロドトキシンなどの場合と同様に、手足のしびれや骨格筋の麻痺、さらには、呼吸困難や血圧の低下といった神経系の中毒症状が引き起こされていくことになると考えられることになります。
⑩ペクテノトキシン、⑪オカダ酸、⑫アザスピロ酸
それに対して、その次に挙げたペクテノトキシン(Pectenotoxin)やオカダ酸(Okadaic acid)、アザスピロ酸(Azaspir acid)といった毒素は、同じく有毒渦鞭毛藻によって生産された毒素が魚貝類の体内に蓄積されることによって食中毒の原因となると考えられ、
こうしたペクテノトキシンやオカダ酸やアザスピロ酸を原因とする食中毒においては、吐き気や嘔吐、腹痛や下痢、さらには、胃けいれんといった比較的重篤な症状へと進行していきやすい消化器系の中毒症状が引き起こされていくことになると考えられることになります。
⑬ドウモイ酸
そして、最後に挙げたドウモイ酸(Domoic acid)という毒素は、ケイ酸質の殻で覆われた単細胞性の藻類である珪藻の一種によって生産された毒素がムラサキイガイ(ムール貝)などの貝類の体内に蓄積されることによって食中毒の原因となると考えられ、
こうしたドウモイ酸を原因とする食中毒においては、神経毒によって脳細胞や中枢神経が直接障害を受けることによって、記憶喪失などを中心とする脳障害が引き起こされてしまうことになると考えられることになるのです。
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次回記事:テトロドトキシンを体内に蓄積する代表的な20種類の生物の種族と無毒性のフグの存在および毒素の具体的な利用方法の違い
前回記事:動物性の自然毒の代表的な種類とは?②サキシトキシン、コノトキシン、シガトキシンを含む生物の種類と食中毒の具体的な症状
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