心理学における「同一化」と「同一視」の定義と自我の防衛機制における「取り入れ」が最大限に高められた自我認識のあり方、防衛機制とは何か?⑦

前回の記事で書いたように、現実の社会生活において生じる様々な心理的ストレスから自分自身の心を守るために機能する自我の防衛機制の代表的な種類の一つとしては、

自分自身が持っている性質や感情を他者へと移し替えることよって、自分にとって受け入れがたい欲求や感情などを他者の側に転嫁してしまう心の働きのことを意味する「投射」や「投影」と呼ばれる心の働きが挙げられる一方で、

それとは反対に、

他者の内に存在する性質や感情をそのまま自分自身のものとして受け入れる心の機能である「取り入れ」や「摂取」と呼ばれる心の働きもそうした自我の防衛機制の働きの一つとして挙げられることになります。

そして、

こうした「取り入れ」や「摂取」と呼ばれる心の働きと関連した自我の防衛機制のあり方としては、

その他に、「同一化」や「同一視」と呼ばれる心の働きが挙げられることになると考えられることになります。

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心理学における「同一化」や「同一視」の定義とその具体例とは?

まず、

フロイトの精神分析学などにおける心理学上の概念としての同一化(同一視、Identificationとは、一言でいうと、

他者が持っている優れた性質を自分自身の人格の内に取り入れたうえで、自分自身の存在をそうした他者の内へと重ね合わせることによって自分自身の価値を高めていこうとする心の働きのことを意味する言葉であると考えられることになり、

具体的には、例えば、

有名人や自分が尊敬する人物などに対して自分自身の存在を重ね合わせていき、相手に対して強く感情移入していくことによって、その人物が経験するすべてのことを我がことのように感じて一喜一憂することや、

対象となる人物の行動や持ち物から、服装や髪形といった点に至るまで、その人物に関する一挙手一投足すべてを真似していくような行動をとることなどが、

こうした同一化や同一視と呼ばれる心の働きの具体例として挙げられることになると考えられることになります。

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自我における「取り入れ」が最大限に高められることによってもたらされる自我認識における「同一化」の実現

そして、

以上のようなものとして心理学における「同一化」や「同一視」と呼ばれる心の働きを定義することができるとすると、

それは、冒頭で挙げた他者の性質を自分自身の人格の内へとそのまま受け入れることを意味する「取り入れ」や「摂取」と呼ばれる心の働きと極めて近い性質を持った自我の防衛機制のあり方として捉えられると考えられることになるのですが、

それでも、あえて、こうした「取り入れ」「同一化」と呼ばれる心の働きの間に存在する相違点を挙げるとするならば、

「取り入れ」と呼ばれる心の働きにおいては、自らの人格の内へと取り入れられることになる要素は、相手が自分に対して向けてくる感情や規範として受け入れられる性質といった、あくまでも他者が有する性質の一部にとどまると考えられることになるのですが、

それに対して、

今回取り上げた「同一化」と呼ばれる心の働きにおいては、対象となる相手の人格に対して自分自身の人格が直接的に重ね合わされていくことによって、対象となる相手が有する性質が全面的に自分自身の人格の内へと取り入れられていくことになるといった点に、

両者の心の働きのあり方の具体的な違いを見いだすことができると考えられることになります。

つまり、そういった意味では、

自らの人格の内へと取り入れる他者の性質の範囲が無制限に拡大されていくことによって、前回取り上げた「取り入れ」や「摂取」と呼ばれる防衛機制のあり方が最大限に高められた状態こそが、

今回取り上げた「同一化」や「同一視」と呼ばれる心の働きが実現されている状態として位置づけられることになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:「同一視」の過程において他者への愛情が憎しみへと反転していく原理と二重の心理的過程において進行していく自我の防衛機制のあり方、防衛機制とは何か?⑧

前回記事:心理学における「投射」あるいは「投影」と呼ばれる心の働きの具体例と自己と他者の境界の不明確性の問題、防衛機制とは何か?⑥

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