致死性不整脈を引き起こす代表的な五つの不整脈疾患の種類のまとめ

このシリーズの初回から前回までの記事では、

心臓に器質的な病変が見られない場合でも、心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈へと直接つながる危険性のある不整脈疾患には具体的にどのような種類があるのか?ということについて考えてきました。

そこで、今回は、

そうした致死性不整脈へと直接つながる危険性のある不整脈疾患の種類について改めて列挙したうえで、それぞれの疾患における不整脈の性質の違いについてまとめていきたいと思います。

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致死性不整脈を引き起こす代表的な五つの不整脈疾患の種類

心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈へと直接つながる危険性のある代表的な不整脈疾患の種類としては、

QT延長症候群QT短縮症候群ブルガダ症候群、さらには、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍進行性心臓伝導障害といった不整脈疾患の種類が挙げられることになります。

このうち、はじめに挙げたQT延長症候群(Long QT syndrome、略称:LQTSとは、

心臓の拍動を司る電気的刺激を作り出すときに働く心筋細胞のイオンチャネルと呼ばれる部位の異常によって、心臓の電気的興奮が収束するまでの時間であるQT時間が通常より長くなってしまう不整脈疾患であり、

QT時間の延長によりいったん生じた心臓の興奮が収まりにくくなる状態が続くことによって、心室内で電気的刺激が勝手に繰り返し伝導されてしまうリエントリー回路が形成されることになり、

それによって、心室頻拍の一種であるトルサード・ド・ポアンツなどのより重篤な不整脈へと移行する危険性が高まってしまうことになります。

これに対して、QT短縮症候群(Short QT syndrome、略称:SQTSとは、

QT延長症候群とは逆に、心臓の電気的興奮の間隔であるQT時間が通常よりも短くなることによって、心室内における電気的刺激の伝導が不安定となってしまい、

それによって心室頻拍や心室細動へとつながってしまうリスクが高まる不整脈疾患であると考えられることになります。

ちなみに、QT延長症候群もQT短縮症候群も、その大本の原因である心筋細胞のイオンチャンネルの異常は、

先天的な遺伝子異常によって引き起こされる場合と、血液中のカリウムやマグネシウム、カルシウムといった電解質異常や、抗生物質や抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬や向精神薬などの薬物使用の副作用といった後天的な要因によって引き起こされる場合の二パターンがあるのですが、

このうち、先天性のQT延長症候群の発症頻度が5000人に1程度と比較的多く見られる疾患であるのに対して、先天性QT短縮症候群の発症率は極めて低い非常に稀な疾患であるという点に、両者の疾患の違いが見られることになります。

そして、次に挙げたブルガダ症候群(Brugada syndromeとは、

何らかの原因によって心臓の内側と外側に電位差が生じてしまうことによって、心臓全体における電気的刺激の伝達状態が不安定になってしまう不整脈疾患ということになります。

心臓の心外膜側と心内膜側に電位差が生じてしまうことによって心筋の興奮の持続時間に部分的な差異が生じてしまうことになり、

それがさらに、心室内の電気的刺激の伝導におけるリエントリー回路の形成へとつながることなどによって、心室頻拍や心室細動などへと移行する危険性が高まってしまうことになるのです。

ブルガダ症候群の場合も、その大本の原因は、QT延長症候群などの場合と同様に、心筋細胞のイオンチャネルと呼ばれる部位の異常にあるケースが多いと考えられのですが、この疾患の場合は、その不整脈の具体的な原因が不明であるケースも多く、

この症候群の発生比率の男女比が10:女1であることから、ブルガダ症候群の発症の誘因としては、男性ホルモンの影響も関与していると考えられています。

そして、その次に取り上げたカテコラミン誘発性多型性心室頻拍進行性心臓伝導障害は、共に、発生頻度が低い極めてまれな遺伝子異常に基づく疾患ということになるのですが、

このうち、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍(Catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia、略称:CPVTとは、運動や感情的興奮などによる身体的・感情的ストレスが誘因となって心室頻拍が引き起こされやすくなる頻脈性の不整脈疾患であるのに対して、

進行性心臓伝導障害(Cardiac conduction disturbance、略称:CCDの方は、心臓の電気的刺激の伝導経路の線維変性が徐々に進行していくことによって徐脈傾向が進み、房室ブロックと呼ばれる心臓の電気刺激の伝達経路の遮断が引き起こされやすくなる徐脈性の不整脈疾患ということになります。

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以上のように、

心臓に器質的な病変が見られない通常の健康体の人に対しても、心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈を直接引き起こしてしまう原因となりうる代表的な不整脈疾患の種類としては、

QT延長症候群QT短縮症候群ブルガダ症候群カテコラミン誘発性多型性心室頻拍進行性心臓伝導障害といった不整脈疾患の種類が挙げられることになります。

そして、

上記の五つの不整脈疾患のうち、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍を除いた残り四つの不整脈疾患は、心臓の拍動を司る電気的刺激を作り出すときに働く部分である心筋細胞のイオンチャネルと呼ばれる部位の異常に大本の原因があるケースが多いと考えられているように、

これらの致死性不整脈へと直接つながる危険性のある不整脈疾患はすべて、心臓の電気的刺激の伝導経路の異常によって引き起こされる疾患であり、そのなかでも特に、心室における電気的刺激の伝導経路の異常に関連する不整脈疾患であると考えられることになるのです。

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次回記事頻脈と徐脈の定義と具体的な判断基準とは?一般的な不整脈の三つのタイプ①

前回記事:WPW症候群の具体的な特徴と致死性不整脈との関係とは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類⑥

関連記事:不整脈の危険度レベルに応じた五段階の分類、致死性不整脈と準致死性不整脈そして比較的危険性の低い不整脈の種類のまとめ

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