QT延長症候群とQT短縮症候群の違いとは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類②

前回書いたように、

狭心症や心筋梗塞、心筋症といった心臓の器質的な病変がない場合でも、心室細動や心室頻拍へとつながってしまう危険性が比較的高い不整脈としては、QT延長症候群ブルガダ症候群といった症候群の名が挙げられることになりますが、

QT時間に関連する不整脈の病態の中には、QT延長症候群とは反対に、QT時間が通常より短くなってしまうことによって生じる不整脈であるQT短縮症候群も存在します。

こうしたQT延長症候群QT短縮症候群という二つの症候群のあり方には具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

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QT延長症候群とQT短縮症候群の発症の仕組みと両者の疾患の共通点と相違点

QT延長症候群とQT短縮症候群は、共に、心臓の電気的興奮が始まってから収束するまでの時間であるQT時間の異常に起因する疾患ということになりますが、

このうちの前者であるQT延長症候群Long QT syndrome、略称:LQTS)においては、

その名の通り、心臓の電気的興奮が始まってから収束するまでの時間であるQT時間が通常よりも長くなることによって、心室頻拍や心室細動といったより重篤な不整脈へとつながる危険性が高まってしまうのに対して、

後者であるQT短縮症候群Short QT syndrome、略称:SQTS)の場合は、

QT延長症候群とは反対に、心臓の電気的興奮の持続時間であるQT時間が通常よりも短くなることによって、心室頻拍や心室細動へとつながるリスクが高まることになります。

QT延長症候群の場合も、QT短縮症候群の場合も、その症状の大本の原因は、細胞レベルにおいて心臓の電気的興奮を作り出す部位にあたる細胞膜のイオンチャネルの部分の異常にあると考えられているのですが、

どちらの症候群の場合でも、結局、一定の心拍数に対する適切な電気的刺激の伝達が行われにくくなることになるので、

QT延長の場合もQT短縮の場合も同様に、心臓内での電気的興奮の伝達の混乱が生じることによって心臓の電気的状態が不安定となり、心室頻拍や心室細動といったより重篤な不整脈へとつながる危険性が高まってしまう疾患であると考えられることになるのです。

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QT延長症候群とQT短縮症候群の原因と発症率の違い

前述したように、QT延長症候群とQT短縮症候群は、両者とも細胞のイオンチャンネルの部位に起因する疾患であると考えられているので、それぞれの疾患の原因となる要素も似通っていて、

共に、何らかの遺伝子異常を原因とする先天性QT延長症候群および先天性QT短縮症候群と、

その他の外的要因を原因とする後天性QT延長症候群および後天性QT短縮症候群とに大きく分けられることになります。

そして、

このうちの後者である後天性QT延長症候群と後天性QT短縮症候群の原因となる具体的な外的要素としては、

後天性QT延長症候群の場合は、低カリウム血症低マグネシウム血症といった電解質異常が原因となり得るのに対して、

後天性QT短縮症候群の場合は、高カリウム血症高カルシウム血症などが発症の原因となることがあります。

また、どちらの疾患も共に、抗生物質や抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬や向精神薬といった薬物の使用や、他の疾患による発熱などが発症の誘因となるケースもあることが分かっています。

また、それぞれの症候群の発症頻度については大きな差があり、先天性QT延長症候群の場合は、発症率は5000人に1程度と比較的多く見られる疾患であるのに対して、

先天性QT短縮症候群の場合は、発症率が極めて低く、正確な発生頻度の統計がいまだ得られていないほどに非常に稀な疾患であることが分かっています。

・・・

以上のように、

QT延長症候群LQTS)は、一定の脈拍に対する心臓の電気的興奮の持続時間であるQT時間が通常よりも長くなる疾患であるのに対して、

QT短縮症候群SQTS)は、その反対にQT時間が通常よりも短くなる疾患であるという点に両者の症状の具体的な違いが見られることになりますが、

どちらの疾患の場合も、心臓の電気的興奮を作り出す部位にあたる細胞膜のイオンチャネルの部分の異常によって心臓の電気的状態が不安定となり、

心臓内での電気的興奮の伝達の混乱が生じることによって、心室頻拍や心室細動といったより重篤な不整脈へとつながる危険性が高まるという点では共通する疾患であると考えられることになります。

そして、

後天的な発症の原因としては、どちらの疾患の場合も、血中のカリウムやマグネシウム、カルシウムなどの電解質の濃度異常や、薬物の副作用発熱などが発症の誘因として挙げられることになるのですが、

先天的な発症については、先天性QT延長症候群の場合は、発症率は5000人に1程度と比較的多く見られる疾患であるのに対して、

先天性QT短縮症候群の場合は、発症率が極めて低い非常に稀な疾患であるといった点に、両者の疾患の相違点が見られることになるのです。

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次回記事カテコラミン誘発性多型性心室頻拍と進行性心臓伝導障害の特徴、致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類③

前回記事:致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類とは?QT延長症候群とブルガダ症候群の違い

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