致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類とは?QT延長症候群とブルガダ症候群の違い

前回書いたように、

心臓の器質的な病変がない通常の健康体の人に対しても、突然死を引き起こしてしまう危険性が高い致死性不整脈としては、

頻脈性の致死性不整脈に分類される心室細動心室頻拍という二つの深刻な不整脈の状態が挙げられることになります。

それでは、

こうした一見すると健康に見える人にも、突然、致死性の不整脈を引き起こす危険性のある代表的な不整脈の種類としては、具体的にどのような種類の疾患が挙げられることになるのでしょうか?

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QT延長症候群とブルガダ症候群の違いとそれぞれの疾患の具体的な特徴

狭心症や心筋梗塞、心筋症といった心臓の器質的な病変がない場合でも、心室細動や心室頻拍へとつながってしまう危険性が比較的高い不整脈としては、

QT延長症候群ブルガダ症候群といった症候群の名が挙げられることになります。

QT延長症候群とブルガダ症候群は、共に、心臓が自分自身で作り出している電気的刺激が正しく心臓全体に伝わらなくなることによって生じる不整脈ですが、

電気的刺激の混乱が生じる部位や、症候群の原因となる要素、不整脈が誘発されやすい要因などに違いがみられることになります。

まず、はじめに、

QT延長症候群long QT syndrome、略称:LQTS)についてですが、

QT延長症候群のQTとは、心電図の波形において心室の興奮の始まりを表すQ興奮の沈静化を表すTのことを意味していて、

一言で言うと、心臓の一拍の拍動において、電気的刺激による興奮によって心室が収縮を開始してから興奮が完全に収束するまでのまでの時間の長さを表す言葉ということになります。

QT延長症候群では、心臓が電気的刺激を作り出すときに働く細胞膜のイオンチャネルと呼ばれる部位などの異常により、電気的刺激により心臓が興奮を開始してから収束するまでのQT時間が通常より長くなってしまうことになるのですが、

こうしたQT時間の延長によって、いったん生じた心臓の興奮が収まりにくくなる状態が続くことになり、正常な心拍をもたらす通常の電気的刺激とは別に、勝手に電気的興奮を繰り返し伝達し続けてしまうリエントリ-回路が形成されてしまい、

前の拍動の電気的刺激によってもたらされた心臓の興奮が収まりきらないうちに、次の拍動の電気的刺激が重なるように押し寄せて来てしまうことによって、心室頻拍や心室細動などへとつながる危険性が高まってしまうことになるのです。

そして、より正確には、

QT延長症候群は、遺伝子異常などによって生じる先天性QT延長症候群と、他の外的な要因によって生じる後天性QT延長症候群にさらに分けられることになりますが、

後者の後天性QT延長症候群の主な原因としては、低カリウム血症や低マグネシウム血症といった血液中の電解質異常によって引き起こされるほか、

マクロライド系抗生物質や抗ヒスタミン剤、抗ウイルス薬や、抗不整脈薬、向精神薬といった薬物の使用の副作用として引き起こされることもあります。

次に、心室細動などの重篤な不整脈へとつながりやすいもう一つの代表的な不整脈の疾患であるブルガダ症候群Brugada syndrome)についてですが、

この症候群の場合は、何らかの原因によって心臓の内側と外側で電位差が生じてしまうことによって、心臓全体における電気的刺激の伝達状態が不安定となり、心室頻拍や心室細動などへとつながる危険性が高まってしまうと考えられることになります。

ブルガダ症候群の場合も、先天性QT延長症候群の場合と同様に、心筋細胞のイオンチャネルと呼ばれる部位の遺伝子異常が関与しているケースもあるのですが、はっきりとした原因は不明であるケースも多く、

この症候群を発症する男女比が男10:女1と男性に多く見られる疾患であることから、ブルガダ疾患の発症の有無には男性ホルモンの影響が関与しているとも考えられています。

また、

ブルガダ症候群が誘因となる不整脈発作は、夜間、特に早朝にかけて多く見られることが知られていて、その他にも、飲酒食べ過ぎなどが発作の誘因となる場合もあります。

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QT延長症候群とブルガダ症候群の発症率と積極的治療の可否

ちなみに、

一般的に、先天性QT延長症候群の発症率は5000人に1程度、それに対して、ブルガダ症候群の発症率は1000人に1程度とされていますが、

これは、失神や頻脈発作などの危険な兆候や自覚症状などもまったく見られず、心電図においても実際に心室細動などの危険な状態へと陥る可能性は低いと判断される比較的軽度の状態のケースも含めた数値ということになります。

したがって、

実際に、QT延長症候群ブルガダ症候群と診断されても、必ず高確率で心室細動から突然死へと至ってしまうわけではなく、

自覚症状の有無や負荷心電図などの結果を踏まえたうえで、リスクが低い状態であると判断できる場合は、薬物治療や、ペースメーカー植え込み型除細動器(ICDの体内への留置といった積極的治療は行わずに、経過観察を行った方が適切である場合も多く見られることになるのです。

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次回記事QT延長症候群とQT短縮症候群の違いとは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類②

関連記事トルサード・ド・ポアンツの具体的な特徴とQT延長症候群との関係とは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類⑤

前回記事:致死性不整脈の四つの分類と心室細動と心室頻拍の違い

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