致死性不整脈の四つの分類と心室細動と心室頻拍の違い
心臓が血液を送り出す脈拍のリズムの乱れである不整脈のうち、
狭心症や心筋梗塞、心筋症といった心臓の器質的な病変がない通常の健康体の人であっても、意識の消失から突然死へとつながる危険性がある不整脈の種類は、特に区別して致死性不整脈という分類で呼ばれることがあります。
こうした致死性不整脈と呼ばれる不整脈には、どのようなタイプの違いがあり、それぞれのタイプの致死性不整脈には、具体的にどのような種類の不整脈が分類されることになるのでしょうか?
頻脈性の致死性不整脈と徐脈性の致死性不整脈
一般的に、不整脈の種類は、通常の状態よりも脈拍のリズムが速くなる頻脈と、その反対に脈拍のリズムが遅くなる徐脈という二つのタイプに大別されることになりますが、
それと同様に、
致死性の不整脈も、頻脈性の致死性不整脈と徐脈性の致死性不整脈という二つのタイプに大きく分けられることになります。
そして、
頻脈性の致死性不整脈には、心室細動と、心室頻拍という二つの不整脈の種類が、
それに対して、
徐脈性の致死性不整脈には、房室ブロックと、洞不全症候群という二つの不整脈の種類がそれぞれ分類されることになるのですが、
このうち、
一般的に、通常の健康体の人にも比較的起こりやすい致死性不整脈としては、頻脈性の致死性不整脈である心室細動と心室頻拍が該当することになります。
心室細動と心室頻拍の違い
心室細動(Ventricular fibrillation、略称:Vf)とは、心臓の各部屋のうち、全身に血液を送り出す部屋にあたる心室の部分が小刻みに震えて痙攣したような状態になってしまい、全身に血液を送ることができなくなっている状態のことを指す不整脈であり、
いったん心室細動の状態に陥ると、心筋は無秩序な収縮を繰り返し、血流がほとんど停止した状態のまま無駄にエネルギーを消費してしまうことになり、心臓自身が生み出す電気刺激によって元の状態へと回復するのは難しくなるので、
発症からできるだけ早いうちにAED(自動体外式除細動器)使った外部からの電気刺激による心室細動の状態のリセットや、心臓マッサージによる血流の循環の補助を行うことが救命率を上げるために不可欠となります。
それに対して、
心室頻拍(Ventricular Tachycardia、略称:VT)の方は、心室細動と同じく全身に血液を送り出す器官である心室の部分に生じる不整脈であり、
心室から発生した異常な刺激によって拍動が非常に速くなる心室由来の異常な頻脈が引き起こされることにより、全身の血流量が著しく低下し、脳に送られる血液も少なくなることによって、めまいや失神などの症状を引き起こすことになります。
そして、
こうした心室頻拍の状態が悪化すると、結局、心筋の痙攣による実質的な血流の停止である心室細動の状態へと陥ってしまうことになるので、
心室頻拍は、心室細動に次いで命の危険性の高い不整脈として、致死性不整脈の一つに分類されることになるのです。
房室ブロックと洞不全症候群の違い
また、これに対して、
もう一方のタイプの徐脈性の致死性不整脈に分類される不整脈である房室ブロックと洞不全症候群は、
共に、心臓の電気刺激がうまく伝わらないことによって、心拍数が異常に低下したり、拍動の間隔が異常に長く開いたりしてしまう不整脈ですが、
房室ブロックでは、何らかの原因で心臓の電気刺激を伝える伝達経路が遮断されてしまい、発生した電気刺激がうまく伝達されないことによって徐脈が生じるのに対して、
洞不全症候群では、心臓の電気刺激を発生させる器官である洞結節やその周辺部に異常が生じることによって、電気刺激自体が発生しにくくなることによって生じる徐脈であるという点に、両者の不整脈の原因の違いがみられることになります。
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以上のように、
通常の健康体の人であっても、意識の消失から突然死へとつながる危険性がある不整脈である致死性不整脈には、大きく分けて、
心室細動と心室頻拍、房室ブロックと洞不全症候群という四つの種類の不整脈が分類されることになります。
そして、
心室細動と心室頻拍が、心室由来の異常な頻脈や心筋の痙攣によって、結果として全身の血流が停止してしまう危険性のある頻脈性の致死性不整脈に分類されるのに対して、
房室ブロックと洞不全症候群は、心臓の電気刺激が伝わらないことによって、文字通り心臓が停止してしまう危険性のある徐脈性の致死性不整脈に分類されることになるのです。
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次回記事:致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類とは?QT延長症候群とブルガダ症候群の違い
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