イタリアでの新型コロナウイルスの感染拡大の日本への短期的および中期的な影響とイギリスと東京オリンピックとの関係
3月1日の時点におけるイタリアでの新型コロナウイルスの新規感染者の増加数が573人となり、現時点において世界で最も増加数が多い韓国の586人とほぼ並んだ。
(ちなみに、韓国における新規感染者の増加数は前日の813人と比べて減っているが、韓国における感染拡大がここでいったん踏みとどまることができるかどうかは、引き続きあと一週間ほどのデータを注視してからでないと分からない)
こうしたイタリアを中心とするヨーロッパ大陸での感染拡大は、日本国内に住む我々にとって具体的にどのようなレベルでの影響をおよぼすことになるのだろうか?
イタリアとヨーロッパ大陸における新型コロナウイルスの感染拡大の現状分析
感染拡大が始まる直前の2月20日から昨日の3月1日までの11日間におけるイタリア国内での感染者の増加の推移を見ていくと以下のようになる。
・イタリアにおける新型コロナウイルス感染者数の推移(2月20日~3月1日)
2月20日:3人
2月21日:19人
2月22日:79人
2月23日:157人
2月24日:217人←ロンバルディア都市封鎖
2月25日:323人
2月26日:470人
2月27日:655人
2月28日:889人
2月29日:1128人
3月1日:1701人
イタリアでは感染拡大を阻止するために、2月24日の段階で中国の武漢の場合と同様に、感染の中心地にあたるロンバルディア州を中心とする11の自治体に対して都市封鎖を行ったが、
その後も感染の増加は止まらず、現在では感染拡大の中心地はロンバルディア州だけにとどまらず、その近隣のヴェネト州(ヴェネツィアが州都)とエミリア・ロマーニャ州(ボローニャが州都)にまで広がっている。
2月28日に書いた記事の補足部分でも少し触れたように、都市封鎖のような強硬策には、自国政府から見捨てられたと判断した市民たちがパニックに陥ることによってかえって封鎖地域からの強行脱出を試みてしまう、
あるいは、強い不安感に駆られた市民たちが近くの病院やスーパーなどに殺到することによって感染機会が増えてしまうといった弊害が大きい反面、それに見合うだけの十分な防疫効果をもたらさない可能性がある。
いずれにせよ、結果としてイタリアが行った都市封鎖の効果は限定的であったようで、ヨーロッパ大陸方面における第一段階におけるウイルス感染拡大の封じ込めは失敗に終わりつつあるようである。
イタリアの隣国であるフランスとドイツでも感染者が増加していて(3月1日現在のフランスの感染者は130人(前日比30人増)、ドイツの感染者も同じく130人(前日比51人増))、
2週間ほど前に感染拡大が危惧されつつあった東京でのオリンピック開催に不安を訴えて、代わりにロンドンでのオリンピック開催を訴えた市長候補の演説が話題となったイギリスも他人事ではない状況になりつつある。
イタリアの感染拡大の日本国内への短期的な影響とイギリスとの関係
それでは、
このように現時点において感染拡大が大きく広がりつつあることが確認されているイタリアに対して、
日本が同じく感染拡大が確認されている韓国の一部の地域に対して行っているのと同様に渡航中止勧告や渡航制限の措置を課すことが必要なのかというと、
もちろん、それもできればやっておくのに越したことはないが、現実的な問題としてはそうした措置を講じるべき必要性は比較的低いかもしれない。
というのは、
イタリア国内にいる人々の視点に立った場合、わざわざ自国から遠く文化も大きく異なる日本をあまり積極的に避難先に選ぼうとするとは思えないからである。
(しかもヨーロッパから見て、日本はウイルスの発生地である中国に近く、当初からヨーロッパの人々はこのウイルスのことをより広くアジア発祥のウイルスとして捉えている傾向もある)
逆に言えば、
中国で感染拡大が広がった初期の段階において、自国の感染拡大から逃れようとした中国の人々が距離的に近く文化的にもある程度の共通点のある島国である日本に向けて避難も兼ねて渡航してきたのと同様に、
イタリアでの感染拡大から逃れようとする人々は、自国から近く文化的にも共通点の多い海によって囲まれた島国であるイギリスを最も安全な避難先と考えて渡航を試みる可能性が高いと考えられる。
つまり、
中国や韓国における感染拡大を最も警戒すべき国は日本であるのと同様に、
イタリアの感染拡大を最も警戒すべき国はイギリスであるということである。
イタリアの感染拡大の日本国内への中期的な影響と東京オリンピック
ただし、
こうしたイタリアを中心とするヨーロッパ大陸全域における新型コロナウイルスの感染拡大の兆しは、
東京オリンピックの開催を4か月半後に控えた日本にとっては中期的には大きな影響をおよぼすことになるとも考えられる。
(もっとも、東京オリンピックについては、もはや、その開催の確率自体が五分五分以下になっているという印象も否めないが)、
というのは、
たとえ、現時点で日本政府が行っている一斉休校やイベントの自粛、さらには中国や韓国などに対する渡航制限の措置などが功を奏して日本国内おける感染拡大を学校の新年度が始まる4月ごろまでに鎮静化させることができたとしても、
その時点において、ヨーロッパ大陸を含む世界中のその他の地域において大規模な感染拡大やウイルスの蔓延状態が継続していたとするならば、
東京オリンピックがウイルスの日本への再移入と世界中への再拡散のための培養装置と化してしまう危険性があるからである。
ヨーロッパ大陸を含むアジア地域以外での世界規模でのパンデミックが避けることが難しい情勢となってきたことが明らかになりつつある以上、
今回の新型コロナウイルスと日本国民を含む全人類との戦いには長期戦を覚悟して臨まなければならないと考えられる。
しかし、その一方で、
ちょうど一週間前に書いた「新型コロナウイルスは本当に満員電車で感染を広げているのか?」の記事で詳しく考察したように、
このウイルスはインフルエンザのようにそれほど容易に満員電車のような場所で感染を拡大することはなく、
閉鎖的な空間での長時間の会話や飲食、換気の悪い場所で行われるイベントやサークル活動などを避けることによって感染爆発を未然に防ぐことがある程度可能であると考えられるので、
過度に日常生活を制限しすぎることなく、疲労困憊してしまわない程度に手指衛生を中心とする十分な感染症対策を継続していくことが重要であると考えられる。
・・・
次回記事:パンデミックの由来とは?古代ギリシア語の語源とパン・ゲルマン主義やデモクラシーとの関係
前回記事:新型コロナウイルスによる医療崩壊はいつ起きるのか?感染者の増加ペースと医療崩壊が起きる限界地点との関係
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