パンデミックとエピデミックとエンデミックの具体的な意味の違いとそれぞれに分類される代表的な感染症の種類
ウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされる感染症の流行の状態を表す疫学用語としては、世界的な流行状態のことを意味するパンデミックという言葉のほかに、エピデミックやエンデミックといった言葉が用いられることもありますが、
それでは、こうしたパンデミック・エピデミック・エンデミックという三つの疫学用語には、それぞれ具体的にどのような意味の違いがあると考えられることになるのでしょうか?
パンデミックとエピデミックとエンデミックの具体的な意味の違いと分類される代表的な感染症の種類
そうすると、まず、こうした三つの疫学用語のうち、
エンデミック(endemic)とは、感染症の伝播が比較的狭い地域に限定されている状態のことを意味していて、日本語においては地域流行といった言葉として訳されることになり、
こうしたエンデミックと呼ばれる地域的な流行の状態にある感染症が、そのまま特定の地域に常在化していく場合には、特に、日本語では風土病や地方病と呼ばれることになります。
そして、こうしたエンデミックあるいは風土病の一種として取り扱われることも多い代表的な感染症としては、熱帯地域におけるマラリアや黄熱病やデング熱といった感染症の種類が挙げられることになるほか、
日本国内における代表的な風土病としては、日本脳炎や成人T細胞白血病、日本住血吸虫症(現在はすでに撲滅)といった感染症の種類が挙げられることになります。
そして、それに対して、
エピデミック(epidemic)とは、一つまたは複数の国や地域において一時的に感染が拡大している状態のことを意味していて、
日本語においては流行、あるいは、世界的な大流行にあたるパンデミックとの対比においては、局所的流行や一時的流行といった言葉として訳されることもあります。
そして、こうしたエピデミックという表現は、インフルエンザなどの感染症が特定の国や地域において通常の予測の範囲を超えて流行を拡大している状態を指して用いられることがあるほか、
2002年11月に中国の広東省において発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)も、中国や香港を中心に世界37か国へと感染を拡大していったものの、
それぞれの国における感染の流行は局所的なものにとどまり、流行の期間も半年ほどで収束することになったため、局所的で一時的な流行の拡大を意味するエピデミックの段階にとどまると考えられることになります。
そして、それに対して、
パンデミック(pandemic)とは、世界中のあらゆる地域や国々へと感染が拡大していくことによって世界中のすべての人々が広く遍く感染の危機にさらされている状態のことを意味していて、日本語においては世界流行や汎発流行などと訳されることになります。
そして、こうしたパンデミックという表現は、近年においては2009年に発生した新型インフルエンザの世界的流行のことを指して用いられたほか、
1918年~1919年の2年間にわたって世界的な大流行を引き起こして当時の世界人口の4分の1にあたるおよそ5億人の感染者と5000万人の死者を出したと推定されているスペイン風邪などもパンデミックの代表的な事例として挙げられることになります。
パンデミックとエピデミックとエンデミックの違いのまとめ
以上のように、
こうしたパンデミック・エピデミック・エンデミックという感染症の流行の状態を示す三つの疫学用語の具体的な意味の違いについて、一言でまとめると、
エンデミックは地域的な流行
エピデミックは局地的で一時的な流行の拡大
パンデミックは世界的で大規模な流行
のことを意味することになり、
一般的に言って、
エンデミック<エピデミック<パンデミック
の順番で、
それぞれの国や地域そして世界全体における流行の規模が大きくなっていくことになると考えられることになるのです。
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