古代オリンピックにおけるスポーツ以外の競技種目とは?トランペット演奏と弁論大会という芸術的な技能を競う二つの種目
前回までの一連の記事では、古代ギリシアのオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいて行われていた代表的な競技種目として、
スタディオン走とディアウロス走とドリコス走と呼ばれる古代における三つの競走競技や、武装競走や戦車競走、
さらには、ボクシングやレスリングやパンクラチオンといった格闘競技や、五種競技のみに含まれる走幅跳・やり投げ・円盤投げという三組の競技といった数多くの陸上競技の種目が挙げられることになるのですが、
こうした古代のオリンピックにおいては、そうした陸上競技にあたる運動競技のほかにも、音楽や詩文あるいは弁論術や説教者としての技能を競う競技会が開かれることもあったと考えられることになります。
それでは、こうした古代オリンピックにおける運動競技としてのスポーツ以外の競技種目としては、具体的にどのような種目が競技会の対象となる種目として位置づけられていたと考えられることになるのでしょうか?
トランペット演奏と弁論大会という芸術的な技能を競う二つの種目
そうすると、まず、
そうした古代オリンピックにおけるスポーツ以外の競技種目としては、代表的なものとしては、トランペット奏者と説教者の技能を競うコンテストが開催されていたと考えられ、
こうした芸術的な技能を競う二つの種目においては、
前者のトランペットの演奏競技においては、主に、楽器の音の大きさや演奏の美しさが評価の対象となっていったのに対して、
後者の説教者の弁論大会においては、弁論の内容自体よりも、文章を読み上げていく際の発声の明瞭さと声の大きさや美しさなどが評価の対象となっていたと考えられることになります。
もともと、
古代ギリシアのオリンピアの祭典を中心とする古代オリンピックの大会は、トランペットの音が鳴り響き、説教者や布告者にあたる人物が大会の開会を告げることによって始まることになっていったと考えられるのですが、
そうした古代のオリンピックにおける開会式の祝典にあたるような場において取り行われていた楽器の演奏や説教者が読み上げる布告文といった一連の儀式が、
のちに、一つの競技会として独立して、そうした楽器の演奏家や説教者としての技能が互いに競い合われていくようになることによって、
こうした運動競技以外の芸術的な技能を競うオリンピックの種目が新たに生まれていくことになっていったと考えられることになるのです。
古代オリンピックの芸術系の種目における代表的な優勝者の名前
そして、具体的には、
こうしたトランペットの演奏競技や説教者の弁論大会といった古代のオリンピックにおける芸術的な技能を競う種目は、
両方とも、紀元前396年に開催された古代オリンピックの第96回大会から新たに正式な種目として採用されることになったという記録が残されていて、
こうした古代オリンピックの第96回大会において、
前者のトランペットの演奏競技会の最初の優勝者となった人物としてはエリスのティマイオス(Timaios of Elis)
後者の説教者の弁論大会の最初の優勝者となった人物としてはエリスのクラテス(Krates of Elis)
という二人の人物の名が挙げられることになります。
また、
特に、前者のトランペットの演奏競技会において最も有名な優勝者の名前としては、
紀元前328年~292年までの第113回大会~第122回大会までの10大会連続で優勝をおさめることになったメガラのヘロドルス(Herodorus of Megara)という人物の名が挙げられることになり、
彼が打ち立てた10大会連続での優勝という記録は、こうした芸術系の種目も含めた場合の古代のオリンピックにおける最多優勝記録としても位置づけられることになるのです。
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次回記事:音楽と弁論が古代のオリンピックの種目に選ばれた理由とは?戦時における伝令部隊や後援部隊としての演奏者や弁舌家の役割
前回記事:古代オリンピックの五種競技の具体的な競技内容とは?短距離走・走幅跳・やり投げ・円盤投げ・レスリングの五種目の特徴
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