音楽と弁論が古代のオリンピックの種目に選ばれた理由とは?戦時における伝令部隊や後援部隊としての演奏者や弁舌家の役割

前回の記事で書いたように、古代ギリシアオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいては、

競走競技格闘競技などといった運動競技の種目のほかに、トランペットの演奏競技説教者の弁論大会といった音楽と弁論の技能を競い合う競技会なども開かれることがあったと考えられることになるのですが、

このように、古代オリンピックにおける運動競技以外の種目として、音楽と弁論という二つの種目が選ばれることになったのには、具体的にどのような理由と背景があると考えられることになるのでしょうか?

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平和の祭典であると同時に新たな戦争への準備期間でもある古代オリンピックの位置づけ

そうすると、まず、

こうした古代ギリシアオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいては、重装歩兵(ホプリタイ)の格好した選手が走る武装競走や、二頭立てまたは四頭立ての戦車を走らせる戦車競走

あるいは、軽装歩兵(ペルタスト)散兵戦における主力武器として用いていた投げ槍を投擲するやり投げなどといった、戦争に用いられる武器や装備品が用いられる競技が数多く含まれていたと考えられることになります。

そして、こうしたことからも分かるように、

古代のオリンピックに行われていた古代ギリシアの世界においては、オリンピックの祭典は、ギリシアを構成している都市国家同士が互いに争い合うのをやめて休戦する平和の祭典であると同時に、

そうした平和の祭典としてのオリンピックの終わりと共に、またすぐに始まっていくことになると考えられる新たな戦争へと備えて軍備を整えておくという軍事訓練的な側面も持った競技会であったとも捉えていくことができると考えられることになるのです。

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戦時における伝令部隊や後援部隊としての演奏者や弁舌家の役割

そして、こうした新たな戦争に備えるための兵士の訓練といった軍事的な観点から見た場合、

古代オリンピックにおいて、競技会の対象として位置づけられていたトランペットの演奏競技弁論大会という二つの種目には、

単なる芸術的な技能を競うための競技会としての位置づけを超えたある種の軍事訓練のような役割が与えられていたとも考えられることになります。

具体的には、

こうした古代オリンピックの競技会においても用いられていたトランペットなどの楽器の演奏は、オリンピアの祭典などの平時における行事や儀式だけで行われていたわけはなく、

平時において、そうした平和の祭典としてのオリンピックの開会を告げ知らせていたトランペットの奏者や声が大きくて言葉巧みな弁舌家たちは、

戦時においては、開戦や勝利を告げ知らせるための伝令としての役割や、従軍音楽隊として大きな音で音楽を奏でることによって、自軍の士気の高揚させる、あるいは、敵軍を威圧していくといった役割を担っていたと考えられることになります。

つまり、そういった意味では、

古代ギリシアオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいて、トランペットの演奏競技弁論大会などといった運動競技以外の種目が採用されていくことになっていった具体的な理由と背景については、

単に、古代ギリシア世界においてオリンピックの活動が隆盛を極めていくなかで、音楽と弁論といった運動競技以外の分野へと、そうした古代オリンピックにおける活動の範囲が拡大されていくことになっていったというだけではなく、

平時においてオリンピックの開会を告げ知らせる役割を担っていたトランペットの奏者弁舌家たちが、その一方で、戦時においては伝令部隊後援部隊としての役割を担っていくことによって、

そうした軍隊における後援部隊軍事的な訓練といった要素も兼ねて、こうしたトランペットの演奏競技弁論大会などといった、一般的には、芸術的な技能を競い合う競技会が、

古代オリンピックにおける新たな競技種目として取り入れられていくことになっていったとも考えられることになるのです。

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次回記事:古代オリンピック競技の全体像とは?全部で13の競技種目の具体的な内容とそれぞれの種目における最初の優勝者の名前

前回記事:古代オリンピックにおけるスポーツ以外の競技種目とは?トランペット演奏と弁論大会という芸術的な技能を競う二つの種目

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