食中毒の原因となる病原体および病因物質の代表的な種類と分類のまとめ
このシリーズの初回から前回までの一連の記事では、食中毒の原因となる様々な病原体や病因物質の種類や分類のあり方について詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、こうした一連の記事の総まとめとして、これまでに取り上げてきた食中毒の原因となるすべての病原体および病因物質の種類とその分類のあり方について、改めて網羅的にまとめて書いていきたいと思います。
食中毒の原因となる病原体および病因物質の代表的な種類と分類のまとめ
そうすると、まずは、
こうした食中毒の原因となる様々な病原体や病因物質の種類は、大きく分けて、以下の図において示したように、
細菌性食中毒、ウイルス性食中毒、寄生虫食中毒、自然毒食中毒、化学性食中毒という五つのグループへと分類していくことができると考えられることになります。
細菌性食中毒の原因となる代表的な病原菌の種類と分類のまとめ
まず、
こうした五つのグループのうちのはじめに挙げた細菌性食中毒を引き起こす原因となる代表的な細菌の種類としては、
詳しくは、「食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
食物内毒素型の食中毒菌としては、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌といった細菌の種類が、
生体内毒素型の食中毒菌としては、セレウス菌、ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌、毒素原性大腸菌といった細菌の種類が、
感染型の食中毒菌としては、カンピロバクター、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、ナグビブリオ、エルシニア菌、リステリア菌、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、凝集性大腸菌といった細菌の種類が、
感染症型食中毒菌としては、コレラ菌、赤痢菌、チフス菌、パラチフスA菌といった細菌の種類がそれぞれ挙げられることになると考えられることになります。
ウイルス性食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類のまとめ
そして、
その次に挙げたウイルス性食中毒を引き起こす原因となる代表的なウイルスの種類としては、
詳しくは、「食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスという全部で五つのウイルスの種類を挙げることができると考えられることになります。
寄生虫食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類のまとめ
そして、
その次に挙げた寄生虫食中毒を引き起こす原因となる代表的な寄生虫の種類としては、
詳しくは、「食中毒の原因となる寄生虫の代表的な種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
クリプトスポリジウム、サイクロスポラといった原虫として分類される寄生虫の種族のほかに、
アニサキスに代表されるような線虫、肝吸虫や日本住血吸虫などに代表される吸虫(ジストマ)、サルコシスティス(肉胞子虫)、クドア(粘液胞子虫)といった寄生虫の種類が挙げられることになります。
自然毒食中毒の原因となる代表的な動植物の種類と分類のまとめ
それに対して、
その次に挙げた自然毒食中毒を引き起こす原因となる様々な毒素の種類は、それぞれの毒素を体内にもっている生物の種類の違いに応じて、
植物性自然毒と動物性自然毒そして菌類(毒キノコ)がもっている毒素の種類へと分類されていくことになると考えられることになります。
そして、このうち、
植物性の自然毒による食中毒の原因となる代表的な植物および毒素の種類としては、詳しくは「植物性の自然毒の代表的な種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
トリカブト、ドクウツギ、ドクゼリという日本三大有毒植物に分類される植物に含まれるアコニチン、コリアミルチン、シクトキシンと呼ばれる毒素の種類を筆頭に、
ドクニンジン(コニイン)、イヌサフラン(コルヒチン)、チョウセンアサガオ(アトロピン)、ベラドンナ(アトロピン)、マンドレイク(アトロピン)、スイセン(リコリン)、ヒガンバナ(リコリン)、シキミ(アニサチン)、イラクサ(アセチルコリン)、ジギタリス(ジギトキシン、ジゴキシン)、 ジャガイモ(ソラニン)、ウメ(アミグダリン)、ギンナン(ギンコトキシン)
といった植物および植物性の自然毒の種類が挙げられることになります。
そして、それに対して、
動物性の自然毒による食中毒の原因となる代表的な動物および毒素の種類としては、詳しくは「動物性の自然毒の代表的な種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
トラフグ、マフグ、クサフグなどのフグ科の魚類に含まれるテトロドトキシンや、ハコフグに含まれるパリトキシンといった毒素の種類を筆頭に、
ツムギハゼ(テトロドトキシン)、 カブトガニ(テトロドトキシン)、ヒョウモンダコ(テトロドトキシン)、スベスベマンジュウガニ(テトロドトキシン)、ムラサキイガイやカキや アサリやホタテガイなどの二枚貝(サキシトキシン)、イモガイ(コノトキシン)、ドクウツボ(シガトキシン)、ドクカマス(シガトキシン)、アオブダイ(パリトキシン)、ソウシハギ(パリトキシン)
といった動物および動物性の自然毒の種類が挙げられることになります。
また、
菌類(毒キノコ)による食中毒の原因となる代表的な動物および毒素の種類としては、詳しくは「毒キノコに含まれる自然毒の代表的な種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
ドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケという毒キノコの猛毒御三家として挙げられることになるキノコの種類に含まれているアマトキシンと呼ばれる毒素の種類を筆頭に、
ニガクリタケ(ファシクロール)、コレラタケ(アマトキシン)、ドクササコ(クリチジン)、ニセクロハツ(2-シクロプロペンカルボン酸)、タマシロオニタケ(アリルグリシン)、ツキヨタケ(イルジン)、ドクヤマドリ(ボレベニン)、クサウラベニタケ(ムスカリン)、イッポンシメジ(ムスカリン)、テングタケ(イボテン酸)、ベニテングタケ(イボテン酸)、 ワライタケ(シロシビン)、オオワライタケ(シロシビン)、カエンタケ(トリコテセン)、シャグマアミガサタケ(ギロミトリン)、スギヒラタケ(不明)
といった菌類および菌類に由来する毒素の種類が挙げられることになるのです。
化学性食中毒の原因となる代表的な化学物質の種類と分類のまとめ
そして、
最後に挙げた化学性食中毒のグループには、農薬、殺虫剤、洗剤、漂白剤、食品添加物といった様々な製品や薬品のうちに含まれる人体に対して有毒な化学物質の種類のほかに、
鉛や水銀やヒ素やカドミウムなどの重金属や、ダイオキシン類に代表されるような
PCB(ポリ塩化ビフェニル)と呼ばれる化学物質の種類についても、摂食すると内臓障害やホルモン異常、さらには、発がん性といった生体への強い毒性を示す化学物質の種類として位置づけられることになります。
そして、
その次に挙げたアレルギー様食中毒などとして分類されることもある食中毒の種類については、
食品が腐敗していく際に、アミノ酸がヒスタミン生成菌と呼ばれるような細菌のグループによって分解されることによって、ヒスタミンに代表されるようなアミンと呼ばれるアレルギー症状の原因ともなる化学物質が生成されていくことで引き起こされる食中毒であると考えられることになります。
そして、
こうしたヒスタミンなどの化学物質を原因とする食中毒は、それが、ヒスタミン生成菌と呼ばれる一連の細菌のグループによって生産される化学物質によって引き起こされる食中毒であるという点を考慮すると、
それを化学性食中毒ではなく、細菌性食中毒のなかでも、食物内毒素型に分類される食中毒の一種として位置づけるという分類のあり方も考えられることになるのですが、
こうしたヒスタミンを原因とする食中毒は、特定の細菌が調理の過程などにおいて外部から付着したのちに増殖を広げていくことによって引き起こされる細菌性の食中毒であるというよりは、
食材となる生物の体内や表面などにも、もともと存在しているような常在菌が、食物が腐敗していくにしたがって自然に増殖していくことによって引き起こされる食中毒であると考えられることになるので、
それは、通常の細菌性食中毒とは異なる食中毒のグループとして位置づけられている化学性食中毒の内に含める方が、より一般的な食中毒の分類のあり方であるとも考えられることになります。
また、
その次に挙げた食中毒の原因となる代表的なカビ毒の種類としては、詳しくは、「食中毒の原因となる代表的なカビの種類」にはじまる一連の記事のなかで詳しく考察してきたように、
アスペルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属といったカビの種族によって主に生産されることになる
アフラトキシン、オクラトキシン、トリコテセン、パツリン、シトリニン、シトレオビリジン、
シクロクロロチン、イスランジトキシン、ルテオスカイン、ルブロスカイリン、ルグロシン、ステリグマトシスチン、ルブラトキシン、フモニシン、ゼアラレノン、麦角アルカロイド
といったカビ毒の種類が挙げられることになるのですが、
こうしたカビ毒によって引き起こされる食中毒についても、それがカビによって生産された毒素によって引き起こされる食中毒であるという点を重視する場合には、化学性食中毒に分類されることになるのですが、
その一方で、
それが、もともとは、カビという真菌の一種にあたる生物によって引き起こされる食中毒であるという点を重視した場合には、
こうしたカビ毒を原因とする食中毒は、化学性食中毒ではなく、前述した自然毒食中毒のなかでも、菌類の毒素によって引き起こされる食中毒の一種として分類される場合もあると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:原虫が原因となる12の代表的な感染症の種類とは?①マラリア原虫やクリプトスポリジウム、トキソプラズマの具体的な特徴
前回記事:微生物による食中毒の原因となる代表的な30種類の細菌とウイルスおよび寄生虫の分類のまとめ
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