植物性の自然毒の代表的な種類とは?①日本三大有毒植物であるトリカブト・ドクウツギ・ドクゼリに含まれる毒性成分の種類
前回の記事で書いたように、食中毒などの中毒症状の原因となる自然毒の種類は、大きく分けて、植物性の自然毒と動物性の自然毒という二つのグループへと分類されていくことになるのですが、
このうち、前者の植物性の自然毒に分類される代表的な種類としては、具体的にどのような毒物の種類が挙げられることになると考えられ、
それぞれの植物性の自然毒における具体的な性質や引き起こされる中毒症状の特徴としてはどのような点が挙げられることになると考えられることになるのでしょうか?
植物性の自然毒に分類される代表的な毒性成分の種類
動物と違って外敵から身を守るために回避行動や物理的な反撃といった手段をとることができない植物のなかには、捕食者にとって有毒な成分を自らの体内に保有することによって、自らの身を守るという化学的な防御システムをもった生物の種族が数多く存在していて、
そうした植物性の自然毒に分類される毒物の種類も数百種類以上におよぶことになると考えられることになるのですが、そうした多様な植物性の自然毒の代表的な種類としては、
例えば、
アコニチン、コリアミルチン、シクトキシン、コニイン、アトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミン、オレアンドリン、コルヒチン、アニサチン、リコリン、アセチルコリン、ジギトキシン、ジゴキシン、ソラニン、サポニン、アミグダリン、ギンコトキシン
といった毒性成分の種類などが挙げられることになります。
日本三大有毒植物に分類されるトリカブト・ドクウツギ・ドクゼリに含まれる毒性成分の種類
①アコニチン
このうち、はじめに挙げたアコニチン(Aconitine)とは、紫色や白、黄色やピンクといった多彩な色の花をつけるキンポウゲ科に属する多年草であるトリカブト(鳥兜)が持つ毒の主成分であり、
こうしたアコニチンと呼ばれる毒物は、人間の神経系に障害を引き起こすことによって、嘔吐やけいれん、さらには、呼吸困難や心臓発作といった中毒症状を引き起こして人間を死に至らしめることになる非常に危険な植物性の自然毒の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
②コリアミルチン
そして、その次に挙げたコリアミルチン(Coriamyrtin)は、東日本に広く自生しているウリ目ドクウツギ科の落葉低木であるドクウツギ(毒空木)が持つ毒の主成分であり、
ドクウツギは、赤から黒紫へと熟していく多肉質で多汁の甘い実を多くつけるのですが、そうした枝や葉さらにはその先になる甘い果実を含めたすべての部分には猛毒であるコリアミルチンなどの毒成分が含まれていて、
こうしたコリアミルチンと呼ばれる毒物は、人間の中枢神経へと強く作用して、激しいけいれんや呼吸困難といった中毒症状を引き起こして人間を死に至らしめることになるというやはり非常に危険な植物性の自然毒の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
③シクトキシン
そして、三番目に挙げたシクトキシン(Cicutoxin)は、日本全国に広く分布する
セリ科の多年草であり夏に多数の白い小花をつけるドクゼリ(毒芹)が持つ毒の主成分であり、
こうしたシクトキシンと呼ばれる毒物は、人間の中枢神経系から延髄へと作用することによって、全身の筋肉が硬直するようなけいれん発作や頻脈、呼吸困難といった中毒症状を引き起こすことによって人を死に至らしめることもある猛毒成分にあたる植物性の自然毒の種類として位置づけられることになります。
そして、
こうした今回の記事で取り上げたアコニチン、コリアミルチン、シクトキシンという三種類の植物性の自然毒の成分、そして、それぞれの毒成分を自らの体内に保有している
トリカブト、ドクウツギ、ドクゼリという三つの植物の種類は、すべて合わせて日本三大有毒植物とも呼ばれることになる猛毒を持った有毒植物の種類としても位置づけられることになるのです。
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次回記事:植物性の自然毒の代表的な種類とは?②ドクニンジンやチョウセンアサガオといったその他の代表的な有毒植物に含まれる毒成分
前回記事:自然毒による食中毒の原因となる代表的な植物や動物の種類とは?キノコとカビを原因とする食中毒の分類のされ方の違い
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