心理学における「身体化」の定義と古代ギリシア語における「ソーマ」そして神経症や心身症との関係とは?防衛機制とは何か?㉒
前回書いたように、人間の心が現代社会における様々なストレス状況から自分自身を守るために発達させる自我の防衛機制の種類のなかで、
人間の意識の内における論理的思考や理性的な機能が深く関わる防衛機制のあり方としては、「合理化」や「知性化」といった心の働きが挙げられることになると考えられることになるのですが、
それに対して、
そうした心理的ストレスに対応する形で無意識の領域の内に抑圧された様々な感情や衝動が、意識における思考の働きを介さずに、直接的に身体面へと影響を与える心の働きのあり方としては、
「身体化」と呼ばれる防衛機制の種類が挙げられることになると考えられることになります。
「身体化」という言葉の定義と古代ギリシア語における「ソーマ」
まず、冒頭でも述べたように、フロイトの精神分析学にはじまる深層心理学の分野においては、「身体化」(Somatization)と呼ばれる概念は、
現代社会において生じる様々な心理的ストレスに対応する形で無意識の領域の内へと抑圧された感情や衝動が、
意識における思考の働きを介さずに、直接的に身体面へと影響を与えていく形で顕在化していく現象を意味する概念として定義されることになると考えられることになります。
ちなみに、
こうした「身体化」という日本語における訳語に対応する英語のsomatization(ソーマタイゼーション)という言葉は、もともとは、
古代ギリシア語において「肉体」のことを意味するsoma(ソーマ)という言葉が語源となって生み出された言葉であり、
より正確に言えば、こうした英語におけるsomatizationという言葉は、20世紀前半のドイツやアメリカなどの精神医学界において、
古代ギリシア語やラテン語における”soma”(ソーマ)という名詞が動詞化してできた”somatize”という単語に、さらに、動作の結果や状態のあり方のことを表す名詞をつくる名詞語尾である”-ation”が結びつけられることによって新たにつくられた造語であると考えられることになるのです。
自我の防衛機制の働きとしての「身体化」と神経症や心身症との関係
以上のように、
心理学における自我の防衛機制の種類の一つとして分類される「身体化」(Somatization)と呼ばれる心の働きのことを意味する概念は、
古代ギリシア語におけるsoma(ソーマ)という言葉を大本の語源とすることによって、20世紀前半の精神医学界において創り出された比較的新しい心理学上の概念であると考えられることになります。
そして、
こうした「身体化」と呼ばれる防衛機制の働きにおいては、無意識の領域の内に抑圧されていた感情や衝動が身体面へと影響を与えていく際に、
通常の場合、当人にとって不快な様々な身体症状などを伴う形でそうした抑圧された感情や衝動の身体面への影響が表出していくことになると考えられることになるのですが、
より具体的には、深層心理学や精神分析学の観点においては、
神経症や、心身症、心気症といった人間の心の働きが関与することによって生じている様々な疾患や身体的な症状のあり方は、
そのすべてが、人間の心が現代社会における様々なストレス状況から自分自身の心を守るために発達させているる自我の防衛機制のうちの一つとして数え上げられるこうした「身体化」と呼ばれる心の働きが関与することによって引き起こされている疾患や症状として捉えられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:神経症と心身症の違いとは?両者に分類される具体的な疾患の種類と心の病と体の病の中間に位置する症状の分類のあり方
このシリーズの次回記事:妄想と白昼夢の違いとは?現実の世界と想像の世界の区別という観点から見た両者の具体的な特徴の違い、防衛機制とは何か?㉓
前回記事:心理学における「合理化」と「知性化」の違いとは?現状の認識の側を歪める「合理化」と自分自身の心の側を変化させる「知性化」の相違点、防衛機制とは何か?㉑
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