食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類と具体的な症状の特徴とは?①カンピロバクターとウェルシュ菌による食中毒
前回の記事で書いたように、食中毒の原因となる主要な病原菌の種類としては、
カンピロバクター、ウェルシュ菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌という細菌性食中毒の病原体となる五大病原菌の名が挙げられることになります。
それでは、
こうした食中毒の五大病原菌として挙げられているそれぞれの細菌は、具体的にどのような特徴を持った細菌の種族であると考えられ、
それぞれの細菌によって引き起こされる食中毒の症状には具体的にどのような特徴があると考えられることになるのでしょうか?
カンピロバクターによって引き起こされる食中毒の特徴と細菌の具体的な性質
まず、
こうした食中毒の原因となる五大病原菌の筆頭として挙げられる細菌の種族としては、カンピロバクターと呼ばれる細菌の種族の名が挙げられることになり、
2017年の厚生労働省の食中毒統計に基づくと、日本国内において発生する細菌性食中毒のおよそ35%がこうしたカンピロバクターを病原菌とする食中毒であると考えられることになります。
カンピロバクター(Campylobacter)という細菌の学名は、ギリシア語において「曲がっている」を意味する形容詞であるcampylos(カンピロス)と、ラテン語において「細菌」を意味する名詞であるbacterium(バクテリウム)が結びつくことによって付けられた学名であり、
こうしたカンピロバクターと呼ばれる細菌の種族は、その名の通り、菌体の長さが0.5 ~5µm、幅が0.2~0.8µm程度の細長い棒状の菌体の全体がうねうねと曲がりくねった形状をしています。
そして、
こうしたカンピロバクターと呼ばれる細菌は、一般的に、様々な動物の腸の内部などに広く常在していて、
鶏肉などの肉類の加熱が不十分である場合や、そうした肉類からの包丁やまな板といった調理器具などを介したサラダといった別の食品への二次汚染、
あるいは、飼育している鳥類や犬や猫といったペットの排泄物などを介して感染が広がるケースなどもあると考えられることになります。
また、
こうしたカンピロバクターが原因となる食中毒の具体的な症状の特徴としては、
病原菌に感染してから食中毒を発症するまでの潜伏期間が2日から7日程度と比較的長いといった点や、
主症状としては、腹痛と下痢と発熱などの症状が挙げられるほか、吐き気や頭痛、倦怠感や筋肉痛といった症状も見られることがあり、
発熱は多くの場合37℃から38℃台にとどまる一方で、特に、腹痛や下痢の症状は比較的強く表れる傾向にあり、下痢の回数が1日10回以上にもおよぶケースや、粘血便と呼ばれる微量の血液が混じった粘液を伴うような下痢の症状が現れることもあるといった点が挙げられることになります。
ウェルシュ菌によって引き起こされる食中毒の特徴と細菌の具体的な性質
そして、
その次に食中毒の主要な原因となる病原菌として挙げたウェルシュ菌は、川や海あるいは土壌中などの自然界において広く分布している嫌気性(酸素を必要とせずに増殖する)の桿菌(細長い棒状の細菌)に分類される細菌であり、
日本国内において発生する細菌性食中毒のおよそ18%がこうしたウェルシュ菌を病原菌とする食中毒であると考えられることになります。
そして、
こうしたウェルシュ菌と呼ばれる細菌は、芽胞(がほう)と呼ばれる高い耐熱性を備えた構造体を形成することによって高温でも死滅せずに生き残ることがあり、
ウェルシュ菌による食中毒の発生は、肉類や魚介類や野菜を使用した煮込み料理などの大量の食材を調理する際に、一度は加熱処理がなされた場合でも、
その後、料理がそのまま冷えた状態で長期間放置されていると、外気に直接触れていない食品の内部においてウェルシュ菌が増殖してしまうことによって、
弁当や仕出し屋、旅館や学校の給食などにおける集団食中毒の原因となってしまうケースがあると考えられることになります。
また、
こうしたウェルシュ菌が原因となる食中毒の具体的な症状の特徴としては、
8時間から20時間程度の比較的短い潜伏期間の後で、腹痛と水様性の下痢といった症状が現れる一方で、嘔吐や発熱といった症状はほとんど見られることがなく、
通常の場合は、発症から1日から2日程度で回復するといった比較的軽度の症状にとどまるケースが多いと考えられることになるのです。
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次回記事:食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類と具体的な症状の特徴とは?②病原性大腸菌とサルモネラ菌とブドウ球菌
前回記事:食中毒の六大病原体とは何か?日本国内の食中毒患者の9割を占める病原菌とウイルスについての統計学的な分析
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