食中毒の六大病原体とは何か?日本国内の食中毒患者の9割を占める病原菌とウイルスについての統計学的な分析
前回の記事で書いたように、食中毒の原因となる具体的な病原菌やウイルスの種類は、厚生労働省の食中毒統計において用いられている病原体の区分のあり方に基づくと、
全部で16種類の細菌やウイルスの種類へと分類されることになると考えられることになります。
それでは、
こうした16種類の細菌やウイルスのうち、実際に日本国内において発生している食中毒の主要な原因となっている病原体の種類としては、
統計学的には具体的にどのような細菌やウイルスの種類が挙げられることになると考えられることになるのでしょうか?
日本国内で発生する食中毒の主要な原因となる六大病原体とは?
例えば、
2017年の厚生労働省の食中毒統計においては、一つの店舗や食品などから発生した食中毒事件の発生件数を調べる事件数ベースで見ていくと、
そうした食中毒事件の病原体となっている細菌やウイルスの種類は上位のものから順に、
カンピロバクターが原因となった食中毒が320件、ノロウイルスが原因となった食中毒が214件、そして、サルモネラ菌が35件、病原性大腸菌が28件※、ウェルシュ菌が27件、ブドウ球菌が22件と続いていくことになります。
そして、それに対して、
患者数ベースで見ていくと、
ノロウイルスが原因となった食中毒の患者数が8,496人、カンピロバクターが原因となった食中毒の患者数が2,315人、ウェルシュ菌が1,220人、病原性大腸菌が1214人、サルモネラ菌が1,183人、ブドウ球菌が336人と続くことになります。
このように、
日本国内において発生している食中毒の主要な原因となっている病原体の種類としては、
上述したようなノロウイルス、カンピロバクター、ウェルシュ菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌という全部で6種類の細菌とウイルスが挙げられることになると考えられることになるのです。
※ただし、病原性大腸菌については、ここでは、腸管出血性大腸菌(VT産生)とその他の病原大腸菌に挙げられている件数および患者数を合わせた数値をそれぞれ挙げている。
食中毒の発生件数ベースと患者数ベースにおける六大病原体が占める割合
そして、
上述した6種類の細菌とウイルスによって引き起こされた食中毒の発生件数と患者数をそれぞれ足し合わせると、
2017年に上述した6種類の細菌とウイルスによって引き起こされた食中毒の発生件数は646件、食中毒の患者数は14,764人となり、
それに対して、
2017年に発生した食中毒の発生件数の総数は1,014件、食中毒の患者数の総数は16,464人となっているので、
そういった意味では、
食中毒の発生件数ベースでは、
646÷1,014≒63.7%
食中毒の患者数ベースでは、
14764÷16,464≒89.7%
つまり、ほとんど9割にも達する患者の食中毒が、こうしたノロウイルス、カンピロバクター、ウェルシュ菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌という6種類の細菌とウイルスによって実際に引き起こされていると考えられることになるのです。
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以上のように、
2017年の厚生労働省の食中毒統計において示されている日本国内における食中毒の発生における病原物質についての統計学的な分析に基づくと、患者数ベースで見た場合、
細菌やウイルスだけではなく、寄生虫や原虫、あるいは、化学物質や自然毒なども含めたすべての食中毒の9割以上が上述した全部で6つの病原体のいずれかが原因となることによって引き起こされていると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした細菌性食中毒の主要な原因となるカンピロバクター、ウェルシュ菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌という食中毒の五大病原菌に、ウイルス性食中毒の大部分を占めるノロウイルスを加えた全部で6つの病原体の種類が、
日本国内における食中毒の発生において、最も一人ひとりの患者における食中毒の発症の原因となりやすい食中毒の六大病原体として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類と具体的な症状の特徴とは?①カンピロバクターとウェルシュ菌による食中毒
前回記事:食中毒原因菌として指定されている16種類の細菌の種類とは?厚生労働省の資料に基づく食中毒統計の歴史
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