深層心理学の三つの分類とは?フロイトとユングとアドラーの心理学理論の違いのまとめ、深層心理学とは何か?⑪
人間の心の階層構造を分析して、その根底に存在する人間の心の深層、すなわち、無意識の構造や、それを含めた人間の心の全体像についての探究を進めていく学問分野である深層心理学に分類される代表的な心理学の学派としては、
フロイトの精神分析学と、ユングの分析心理学、そしてアドラーの個人心理学という三つの学派の名前を挙げることができると考えられることになります。
そこで、今回の記事では、今までの一連の記事のまとめてとして、こうした深層心理学を代表する三つの心理学の学派のそれぞれにおける心理学理論の具体的な特徴と、学派同士の主要な学説の違いのあり方について一通りまとめていきたいと思います。
フロイトとユングとアドラーの心理学理論の具体的な特徴のまとめ
まず、こうした深層心理学における三つの心理学の学派のうちの筆頭として挙げられるフロイトの精神分析学とは、
深層心理学の先駆者にあたるオーストリアの精神科医であったジークムント・フロイト(Sigmund Freud、1856年~1939年)によって創始された心理学の学派であり、
精神分析学の心理学理論においては、まずは、人間の心のあり方が、意識と前意識と無意識と呼ばれる三つの階層構造において捉えられたうえで、
特に、そのなかでも自由連想法や夢分析といった精神分析の手法を駆使していくことによって無意識の領域の探究が進めていくことになります。
また、こうしたフロイトの精神分析学においては、そうした無意識の領域に存在する人間の生の原動力となるエネルギーのあり方がリビドーと呼ばれるある種の性的なエネルギーとして捉えられることによって、
そうした根源的な性的なエネルギーとしてのリビドーを重視する心理学理論が展開されていくことにもなるのです。
それに対して、その次に挙げたユングの分析心理学とは、
20世紀前半のスイスの心理学者および精神科医であったカール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung、1875年~1961年)によって創始された心理学の学派であり、
分析心理学の心理学理論においては、フロイトの精神分析学においてすでに詳細な探究が進められていた無意識の領域が、個人の心の内部にとどまる個人的無意識として位置づけ直されたうえで、
人間の心のより深い階層において、そうした個人の心のレベルを超えた人類全体に共通する普遍的な無意識の領域である集合的無意識の存在が新たに見いだされていくことになります。
そして、こうしたユングの分析心理学においては、そうした集合的無意識の領域の内に、さらに元型と呼ばれる個人の経験を超越した普遍的なイメージや観念の存在の存在が見いだされていくことになり、
そうした元型的なイメージの存在は、個人における夢や空想や、さらには、古今東西の神話や宗教などにおいても共通して見いだされていくことになると主張されていくことになるのです。
そして、最後に挙げた心理学の学派であるアドラーの個人心理学とは、フロイトと同じオーストリア出身の精神科医であったアルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870年~1937年)によって創始された心理学の学派であり、
個人心理学の心理学理論においては、個人の心の内部における自我を中心とした主体的な人格形成のあり方が重視されていくことになり、
そのなかでも、特に、個人としての人間の心の内に生じる劣等感と、そうした劣等感を自らの意志で克服しようとする補償作用のあり方などを中心とする自我における主体的な意志の力がその心理学理論の中心に位置づけられていくことになります。
また、こうしたアドラーの個人心理学においては、そうした個人の心における主体的な意志の力や、個人としての人間が互いに協調することによって形成される共同体の内部における自助的な相互支援を重視していく形で、
神経症や精神疾患といった様々な心理的・精神的問題の治療などが進められていくことになるのです。
自我と無意識・リビドー・外向性と内向性という三つの観点から見た三つの心理学理論の主要な特徴の違い
それでは、こうしたフロイトの精神分析学と、ユングの分析心理学、そしてアドラーの個人心理学という三つの心理学の学派の間には、具体的にどのような違いがあるのか?ということについてですが、
それについては、自我と無意識の力関係の捉え方と、リビドーの重視のあり方の違い、そして、心理的特性における外向性と内向性の対立という三つの点において、
互いの心理学理論同士の間における主要な相違点を見いだすことができると考えられることになります。
つまり、
フロイトとユングの心理学においては無意識の領域を重視する形で心理学的探究が進められていて、特にユングの分析心理学においては個人的無意識の領域を超えた集合的無意識の存在が重視されていくのに対して、アドラーの心理学においてはそうした無意識の領域そのものよりも自我における主体的な意志の力を重視されているという点、
フロイトの心理学においてはリビドーと呼ばれる性的欲動や性的なエネルギーのあり方が人間の心全体の活動の源となる根源的な心的エネルギーとして重視されているのに対して、ユングとアドラーの心理学においては、そうした性的なエネルギーとしてのリビドーを特別に重視するような思想は見られないという点、
そして、
フロイトの心理学は、そうしたリビドー呼ばれる性的なエネルギーを介した他者との間の外的な関係性を重視するという意味で外向的な心理学理論として位置づけることができるのに対して、
アドラーの心理学は、個人の心の内部における自我の主体的な意志の力を重視するという意味で内向的な心理学理論として位置づけることができ、それに対して、
ユングの心理学においては、自らの心の内部において見いだされた無意識の領域がさらに人類全体に共通する集合的無意識へとつながっていくことによって、自分自身の心についての内的な洞察が自分自身にとっての外的な領域についての探求にも同時につながっていくことになるという意味での双方向的な心理学理論が展開されていると考えることができる点、
という全部で三つの観点において、こうした三者の心理学理論の間における主要な特徴の違いを見いだすことができると考えられることになるのです。
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次回記事:深層心理学の七つの分類とは?ラカンの構造主義的心理学からヒルマンの元型的心理学までの現代心理学の系譜、深層心理学とは何か?⑫
前回記事:フロイトとユングの心理学における五つの特徴の違いとは?男女観と宗教観の違いと元型やリビドーといった概念の捉え方の違い、深層心理学とは何か?⑩
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