リビドーとは何か?①ラテン語の原義におけるリビドーという言葉の意味とローマ神話における美と愛の女神リベンティーナ
このシリーズの前回の記事で書いたように、人間の心の奥底にある潜在意識の領域に存在する心のあり方のことを指し示す言葉としては、
フロイトの心理学においては、一般的に、無意識やエス(イド)といった概念が用いられることになると考えられることになるのですが、
こうしたフロイトの心理学において登場する無意識やエス(イド)といった概念と深い関わりがある心理学上の概念としては、そのほかに、リビドーと呼ばれる概念が挙げられることになると考えられることになります。
そして、
こうしたリビドーと呼ばれる心理学上の概念は、もともとは、ラテン語に起源を持つ言葉であると考えられることになるのですが、
それでは、そうしたリビドーという言葉は、ラテン語における原義となる意味においては、具体的にどのような意味を持つ言葉であったと考えられることになるのでしょうか?
ラテン語におけるリビドーの語源となる「喜び」や「楽しさ」といったプラスの感情を意味する言葉
まず、
こうしたフロイトの精神分析学などの深層心理学の理論において語られている心理学上の概念としてのリビドー(libido)の概念は、
もともとは、ラテン語におけるリビドー(libido)というまったく同じスペルの言葉に由来する概念であると考えられることになります。
そして、
こうしたラテン語におけるリビドー(libido)という単語は、もともとは、ラテン語において「~の気に入る」「好ましい」といった意味を表す動詞であるlibet(リベット)という単語から派生していできた名詞であり、
こうしたlibet(リベット)という動詞からは派生してできた単語としては、libido(リビドー)という名詞のほかにも、
「うれしい」「喜ばしい」といった意味を表す形容詞であるlibens(リベンス)という単語や、そこからさらに派生してできた「喜び」や「楽しみ」といった意味を表す名詞であるlibentia(リベンティア)といった単語などが挙げられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうしたラテン語におけるリビドーの語源となる言葉であるlibet(リベット)という単語は、
その大本の意味においては、喜びや楽しさといった人間にとってプラスとなる感情を意味する言葉として用いられていた単語であると考えられることになるのです。
ローマ神話における美と愛の女神リベンティーナと人間における欲望や情愛を意味するラテン語におけるリビドーという言葉の意味
そして、
こうしたリビドーの語源となるラテン語におけるlibet(リベット)という動詞の名詞形にあたるlibentia(リベンティア)という言葉からは、そのほかにもさらに、
リベンティーナ(Libentina)と呼ばれるローマ神話における女神のことを意味する単語なども派生していくことになるのですが、
こうしたリベンティーナと呼ばれる女神の名は、日本では英語読みでヴィーナスと呼ばれることが多いローマ神話における美と愛の女神であるウェヌス(Venus)の別名として用いられていた古代ローマ時代における神々の古い呼称の一つであり、
特に、こうした女神が持つ肉体的な美しさや快楽の側面が強調される表現として、こうしたリベンティーナという呼称が用いられていたと考えられることになります。
そして、
こうしたローマ神話における美と愛の女神の呼称であるリベンティーナという名詞と同じように、ラテン語におけるlibet(リベット)という動詞から派生した単語であるリビドー(libido)という名詞についても、
それは、こうしたlibet(リベット)というラテン語の言葉における情愛や快楽の面が強調されるような形で成立していった単語であると考えられ、
ラテン語におけるリビドー(libido)という単語は、そうした美や愛を強く求めて続けていくような人間における欲望や願望、情愛や情欲、
そして、そうした欲望や情愛が過度になることによってもたらされるわがままや気まぐれ、さらには、放蕩や淫蕩といった意味を表す言葉として用いられるようになっていったと考えられることになるのです。
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以上のように、
心理学上の概念としてのリビドー(libido)の大本の語源となる言葉としては、
ラテン語において「~の気に入る」「好ましい」といった意味を表す動詞として用いられ、その大本の意味においては、喜びや楽しさといったいった人間にとってプラスとなる感情を意味する言葉であったlibet(リベット)という言葉の存在が挙げられることになると考えられることになります。
そして、
こうした同じlibet(リベット)というラテン語の言葉から派生した単語としては、ローマ神話における美と愛の女神のことを意味するリベンティーナ(Libentina)という単語も挙げることができるように、
こうしたラテン語におけるリビドー(libido)という言葉は、その大本となる意味においては、恋人同士が互いに相手に対して惹かれあう時に感じるような美と情愛の感情のことを意味する言葉であり、
そうした意味から、そうした美や愛を強く求めて続けていく人間における欲望や情愛のあり方のことを意味するラテン語におけるリビドー(libido)という言葉の一般的な意味が形づくられていくことになっていったと考えられることになるのです。
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次回記事:フロイトの心理学におけるリビドーの定義とは何か?あらゆる生命活動の原動力となる根源的な性的欲動としての心的エネルギーの概念、リビドーとは何か?②
前回記事:『禁断の惑星』の「イドの怪物」に込められた二つの意味とは?潜在意識の内に存在する無限なる精神エネルギーによって創り出された形容し難い何者かの存在
このシリーズの前回記事:無意識とエス(イド)の関係とは?意識と自我の領域へ能動的に働きかける力を持つ無意識的な心のあり方としてのエス(イド)の定義
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