無意識とエス(イド)の関係とは?意識と自我の領域へ能動的に働きかける力を持つ無意識的な心のあり方としてのエス(イド)の定義

前回書いたように、フロイトの心理学においては、ドイツ語ではエス(Esラテン語ではイド(Idと呼ばれる心の部分は、

「~が欲しい」「~したい」といった人間の心の奥底に存在する原始的で本能的な欲求や衝動などを司る心の部分として定義されることになります。

そして、フロイトの心理学理論においては、

意識や自我といった心の領域の外に存在するとされるこうした人間の心の奥底に存在する無自覚的な心の領域のことを指し示す言葉としては、無意識というより有名な概念も用いられることになりますが、

それでは、

こうしたエスやイドといった言葉によって言い表されている心の部分と、無意識と呼ばれる心の領域とは、互いに具体的にどのような関係にある心理学上の概念であると考えられることになるのでしょうか?

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無意識とエス(イド)の関係と、意識と自我の領域への影響の及ぼし方の違い

無意識とエス(イド)の関係と意識と自我の領域への影響

まず、冒頭でも触れたように、

無意識と呼ばれる心の領域と、エス(イド)呼ばれる心の部分とは、

両者とも、意識や自我によって直接的に自覚されることがない人間の心の奥底に存在する心のあり方のことを意味する概念であるという点において、互いに共通する特徴を持った概念であると考えられることになります。

そして、

こうした二つの心理学上の概念のうちの前者である無意識の内には、現時点において意識されていない心的要素のうち、注意を向ければすぐに思い出すことができる前意識の領域に含まれている部分を除いた心の深い領域に存在する無自覚的な心的要素のすべてが含まれることになるのですが、

それに対して、

後者であるエス(イド)の内には、冒頭でも述べたように、人間の心の奥深くに存在する様々な心的要素のうち、欲求や衝動といった自我や意識の領域へと積極的に働きかけを行っていくような心的要素のみが含まれることになると考えられることになります。

つまり、

無意識の領域の内に含まれる様々な心的要素のなかには、特に感情的な抑圧などを受けているわけでもなくただ心の奥底の深い部分に眠っているだけの過去の記憶や、一度考えたことはあるが今となってはなかなか思い出すことができないただ忘れ去られているだけの思念や知覚なども含まれることになりますが、

そうしたどこか漠然としていて受動的な側面の強い心的要素については、それが自我や意識によって自覚されることがない心の奥底に存在する心の要素であるとしても、必ずしもエスやイドといった心の部分に含まれるというわけではなく、

人間の心の内には、そういった無意識の領域の内には存在するが、エス(イド)と呼ばれる心の部分の内には含まれることがない思念や記憶、知覚や印象といったものが数多く存在していると考えられることになるのです。

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意識と自我の領域へ能動的に働きかける力を持った無意識的な心のあり方としてのエス(イド)の定義

以上のように、

無意識エス(イド)と呼ばれる心の領域は、両者とも、意識や自我の領域の内へと直接的にはのぼってくることができない人間の心の奥底に存在する無自覚的な心のあり方のことを意味する概念であるという点においては、互いに共通していると考えられることになるのですが、

それに対して、

無意識の領域の内には含まれることになると考えられるただ忘れ去れているだけの古い記憶や思念、漠然とした印象や知覚といった心の要素は、

必ずしもエス(イド)の内には含まれることにはならないといった点において、両者の間には大きな相違点も存在すると考えられることになります。

つまり、

無意識と呼ばれる心の領域は、人間の心の奥底に存在する無自覚的な心的要素のすべてを含む心の領域として位置づけられることになるという点において、

それは、エスやイドと呼ばれる心の部分と比べると、より大きな広がり持った概念として捉えることができると考えられることになり、

それに対して、

エス(イド)と呼ばれる心の部分は、意識や自我によって自覚されることがない無意識の領域のなかでも

特に、そうした意識や自我といった心の領域へと能動的に働きかけて積極的に影響を与える力を持った心の部分として位置づけられることになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:『禁断の惑星』の「イドの怪物」に込められた二つの意味とは?潜在意識の内なる無限の精神エネルギーによって創り出された形容し難い何者かの存在

前回記事:エス(イド)とは何か?③フロイトの心理学におけるエスの定義と発生学的な観点におけるエスから自我そして超自我への心の分化のあり方

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