意識と前意識と無意識の三層構造における抑圧と検閲とリビドーの関係とは?フロイトの精神分析学②、深層心理学とは何か?④
前回の記事で書いたように、深層心理学と呼ばれる学問分野は、オーストリアの精神科医であったフロイトの精神分析と呼ばれる精神療法の手法の発展を通じて確立されていったと考えられ、
フロイトの精神分析においては、具体的には、自由連想法や夢分析といった手法が用いられることによって、人間の心の内にある深層心理や無意識の構造が明らかにされていくことになったと考えられることになります。
そして、
こうした深層心理学と呼ばれる学問分野の基礎が築かれたフロイトの前期の心理学理論においては、以下で述べていくように、
意識と前意識と無意識と呼ばれる三つの心の階層構造において、こうした人間の心における深層心理や無意識の構造が捉えられていくことになります。
フロイトの精神分析学における意識と前意識と無意識の構造
冒頭で述べたように、フロイトの精神分析学における前期の心理学理論においては、
意識(consciousness)と無意識(unconscious)と呼ばれる人間の心の二層構造のモデルに、さらに、前意識(preconscious)と呼ばれる三つ目の心の領域が加えられた三層構造のモデルにおいて、人間の心の構造が捉えられていくことになります。
そして、
こうした意識と無意識、そして、前意識と呼ばれる三つの心の領域の関係は、人間の心を一つの丸い球のようなものとしてイメージした場合、
以下のような形で図示することができるような階層構造の関係として捉えることができると考えられることになります。
つまり、上図において示したように、
人間の心を一つの球やボールのようなイメージで捉えることができるとした場合、
意識は、そうした心の階層の内の上部において自覚されている顕在的な心の領域のことを示すのに対して、
無意識は、心の階層の下部において抑圧されていて自分自身では自覚することができない潜在的な領域のことを示していると考えられ、
それに対して、
前意識と呼ばれる心の領域は、そうした自覚的な心の領域である意識と、無自覚的な心の領域である無意識の両者の間の中間領域、または、境界領域として位置づけられることになる心の領域として捉えることができると考えられることになるのです。
意識と前意識と無意識における抑圧と検閲とリビドーの関係
そして、
こうした人間の心の奥底に存在する潜在的な心の領域である無意識の内部においては、
自覚的な心の領域である意識の内には直接のぼってくることのない様々な観念や記憶、情動などがうごめいていると考えられることになるのですが、
そうした無意識の内に存在する観念や情動の多くは、自覚的な心の領域である意識にとっては受け入れがたい負の要素を含んでいることがあるので、
そのような意識にとって都合の悪い観念や記憶や情動の多くは、心の構造の上部からの抑圧を受けることによって、半永久的に無意識の領域の内へと閉じ込められてしまうことになります。
しかし、それと同時に、
こうした無意識の領域に存在する観念や情動は、人間における様々な心的な活動の原動力となる役割も担っていると考えられ、
フロイトは、そうした無意識の領域に存在する人間の生の原動力となるエネルギーをリビドー(libido)と呼ばれるある種の性的なエネルギーとして位置づけることになるのですが、
それは、より一般的な言い方をするならば、動物の本能のようなものに近い生得的な心的エネルギーとして捉えることができる力であると考えられることになります。
そして、
こうしたリビドーと呼ばれる心的エネルギーを含む無意識の領域に存在する様々な観念や情動は、
意識と無意識の中間領域にあたる前意識の領域における検閲を経ることによって、意識に直接悪影響を及ぼすことがないようなマイルドな形へと変換されて意識の領域へと上昇していくことになると考えられることになるのですが、
そうした前意識における検閲を経て意識の内に現れる無意識に由来する様々な観念や情動の姿は、具体的には、夢の中に登場する様々な象徴や、自由連想の内に現れる特徴的な言葉のつながり、言い間違いや神経症の症状などの内にもその姿の一端を見いだすことができると考えられることになるのです。
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以上のように、
フロイトの精神分析学における前期の心理学理論においては、
意識と前意識と無意識という三層構造において人間の心の領域の構造が捉えられていて、
意識にとって受け入れがたい観念や記憶や情動の多くは、抑圧によって無意識の領域へと閉じ込められることになる一方で、
そうした無意識の領域に存在する様々な観念や情動は、人間の生の原動力となるリビドーと呼ばれる本能的な心的エネルギーとしての働きも担っていて、
そうしたリビドーを含む無意識の領域に存在する様々な観念や情動の一部は、前意識の領域における検閲を経ることによって、意識にとってあまり害のない形へと変換され、
夢の中や、とりとめのない言葉の連想、あるいは、ちょっとした言い間違えなどのうちに、時おり顔を出してくることになると考えられることになるのです。
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次回記事:無意識という言葉の三つの意味とは?記述的・局所的・力動的という多義的な意味を持つフロイトによる無意識の定義
このシリーズの次回記事:自我と超自我とエスという人間の心の三つの部分の具体的な特徴と性質とは?フロイトの精神分析学③、深層心理学とは何か?⑤
前回記事:フロイトの精神分析学とは何か?①自由連想法と夢分析に基づく神経症の治療を目的とする精神療法、深層心理学とは何か?③
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