球菌に分類される12種類の代表的な細菌の種類のまとめ、球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑥
このシリーズの初回から前回までの一連の記事では、球菌(coccus、コッカス)と呼ばれる細胞の形が球形の形状をしている細菌のグループに分類される細菌のなかでも、
人間に対して細菌感染症を引き起こす病原体となる細菌や、人体の皮膚の表面や腸内などにおいて生息する常在菌の一種として位置づけられることになる代表的な細菌の種類について順番に詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、こうした球菌に分類される代表的な細菌の種類に関する一連の記事の総まとめとして、
そうした球菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる全部で12種類の代表的な細菌の種類について改めてまとめていく形で、体系的に記述していきたいと思います。
ブドウ球菌と連鎖球菌に分類される代表的な球菌の種類
まず、
こうした球菌と呼ばれる細菌のグループに分類される細菌のなかでも、最も代表的な細菌の種類としては、
ブドウ球菌や連鎖球菌(レンサ球菌)と呼ばれる細菌の種族に分類されることになる細菌の種類の名が挙げられることになります。
そして、このうち、
前者のブドウ球菌と呼ばれる細菌の種族に分類されることになる代表的な細菌の種類としては、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌という三つの細菌の種類の名が挙げられることになるのですが、
このうち、はじめに挙げた
黄色ブドウ球菌は、皮膚や消化管、喉や鼻の粘膜や毛髪といった人間を含む様々な動物の体の内外に広く分布する常在菌の一種として位置づけられると同時に、手足などにすり傷などのケガをした場合に傷口の化膿の原因となるほか、食品中においてエンテロトキシンと呼ばれる毒素を生産しながら増殖することによって食中毒の原因菌ともなる細菌の種類、
表皮ブドウ球菌は、その名の通り、人間の皮膚の表面に存在する常在菌の一種であり、通常の場合は、皮脂などを養分として脂肪酸などの皮膚を弱酸性の状態に保つ物質を分泌することによって、他の病原菌から表皮を守るバリアーのような役目を果たしている人間と共生関係にある細菌の種類、
腐性ブドウ球菌は、主に、泌尿器の周囲の皮膚や粘膜などに存在する常在菌の一種であり、宿主となる人間の体力や免疫力が弱ってきた場合などには、尿路感染症などの原因となる細菌の種類としてそれぞれ位置づけられることになります。
そして、それに対して、
後者の連鎖球菌(レンサ球菌)に分類されることになる代表的な細菌の種類としては、肺炎球菌や化膿レンサ球菌(溶連菌)といった細菌の種類の名が挙げられることになり、
このうち、はじめに挙げた
肺炎球菌は、人間の喉や鼻などの粘膜に常在している連鎖球菌の一種であり、免疫機能が低下した際などに、喉や鼻の粘膜から気管や肺といった呼吸器への感染を広げていくことによって、高熱や痰を伴う湿った咳といった症状を引き起こす肺炎の原因菌となる細菌の種類、
化膿レンサ球菌(溶連菌)は、飛沫感染や接触感染などを通じて人間の体内において急速に感染を広げていくことによって、溶連菌感染症といった呼び名で有名な口蓋扁桃(扁桃腺)に化膿を伴うような強い喉の痛みと高熱を引き起こす急性咽頭炎の原因菌となる細菌の種類としてそれぞれ位置づけられることになるのです。
髄膜炎菌や淋菌といったナイセリア属に分類される細菌
また、その他の代表的な球菌の種類としては、例えば、髄膜炎菌や淋菌といったナイセリア属と呼ばれる細菌の種族に分類される細菌の種類の名が挙げられることになり、
このうち、前者の
髄膜炎菌は、飛沫感染によって気道へと侵入したのち、血流を介して脳や脊髄といった中枢神経系へと感染を広げていくことによって、発熱や頭痛や嘔吐といった症状や、赤や紫色の斑点状の発疹などを特徴とする細菌性髄膜炎の原因菌となる細菌の種類、
そして、後者の
淋菌は、淋病(りんびょう)と呼ばれる尿道炎や排尿痛、子宮頚管炎や不妊症などを引き起こす性感染症の原因菌となるほか、喉に感染した場合には咽頭炎の原因、比較的稀なケースではあるものの目に感染した場合には細菌性の結膜炎を引き起こすことによって失明する危険性もある細菌の種類として位置づけられることになります。
虫歯の原因となるミュータンス菌と気管支炎の原因菌となるカタル球菌
そして、その他の、人体に対する細菌感染症の原因菌となる代表的な球菌の種類としては、例えば、ミュータンス菌やカタル球菌といった細菌の種類の名も挙げられることになり、
このうち、前者の
ミュータンス菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)は、人間の口腔内においてプラーク(歯垢)を形成したうえで、口腔内における糖類を養分として乳酸を生産して口内環境を酸性の状態へと傾けていくことによって、歯の組織が侵食されて穴が開いていくう蝕、すなわち、虫歯の原因菌となる細菌の種類、
そして、後者の
カタル球菌(モラクセラ・カタラーリス)は、人間や動物の口腔や気道に生息する常在菌の一種であると同時に、肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症の原因菌となる代表的な細菌の種類としても位置づけられることになるのです。
乳酸球菌、腸球菌、ペプトコッカスといった球菌に分類される常在菌
そして、その他にも、人体における皮膚の表面や腸内などにおいて生息する常在菌の一種として分類されることになる代表的な球菌の種類としては、乳酸球菌や腸球菌、、ペプトコッカスといった細菌の種類の名も挙げられることになり、
このうち、はじめに挙げた
乳酸球菌は、ヨーグルトやチーズあるいは漬物といった発酵食品の製造などに利用されるほか、人間や動物の口腔内や腸内においても広く生息している腸内細菌や常在菌の一種としても位置づけられることになる乳酸菌のなかでも棒状ではなく球形の形状をした細菌の種類のことを意味する言葉であるのに対して、
腸球菌は、人間を含む哺乳類の腸内に生息する常在菌のうち球形の形状をした細菌の総称のことを意味する言葉であり、主に、上述した乳酸球菌に分類される細菌の種類のなかでも、エンテロコッカスと呼ばれる細菌の種族に分類される腸内細菌の種類が数多く分類されることになります。
そして、最後に挙げた
ペプトコッカスは、人間の口腔内や腸内、さらには、皮膚などといった人体の粘膜を中心とする部位に広く生息している常在菌の一種としてそれぞれ位置づけられることになると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
こうした球菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる多様な細菌の種類のなかでも、人間に対する細菌感染症の病原体となる細菌や、皮膚や腸内における常在菌として位置づけられることになる代表的な細菌の種類としては、
黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌といったブドウ球菌に分類される細菌、肺炎球菌や化膿レンサ球菌といった連鎖球菌、
髄膜炎菌や淋菌といったナイセリア属に分類される細菌や、虫歯の原因となるミュータンス菌、カタル球菌、乳酸球菌、腸球菌、ペプトコッカス
といった全部で12種類におよぶ代表的な球菌の種類の名を挙げていくことができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:球菌に分類される細菌の大きさの比較、全部で12種類の球菌に分類される代表的な細菌の直径の長さの違い
このシリーズの前回記事:球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤乳酸球菌と腸球菌とペプトコッカスの具体的な特徴と常在菌としての位置づけ
このシリーズの初回記事:球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?①黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌と腐性ブドウ球の具体的な特徴の違い
前回記事:らせん菌に分類される代表的な細菌の大きさの比較、細菌感染症の病原体となる全部で10種類のらせん菌の細胞体の長さの違い
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