ミジンコやゾウリムシは微生物なのか?英語における微生物(マイクロオーガニズム)と微小動物(マイクロアニマル)の関係
前回書いたように、微生物とは、
狭義においては、細菌(バクテリア)や古細菌(アーキア)といった単細胞性の原核生物のみのことを意味する言葉であるのに対して、
広義においては、菌類の一部や、珪藻類や藍藻類などの植物性プランクトンの一部、ミジンコやゾウリムシといった微細な動物性プランクトンなどもそうした微生物のグループのうちに含まれることになるように、
こうした日本語における微生物という言葉は、比較的解釈の幅が大きい多義的な言葉であると考えられることになります。
それでは、
こうした様々な微細な生物たちのなかでも、今回取り上げるミジンコやゾウリムシといった主に水中などに生息する微小な動物たちは、
より厳密な生物学的な概念の定義においては、微生物に含める場合と、含めない場合とでは、どちらの方がより適切な生物の分類のあり方であると考えられることになるのでしょうか?
英語における微生物(マイクロオーガニズム)の定義とは?
まず、
こうした微生物という概念の定義について、より詳しく考察していくとすると、
日本語における微生物という言葉に対応する概念としては、英語では、microorganism(マイクロオーガニズム)という言葉が用いられることになりますが、
こうした英語におけるマイクロオーガニズムという概念は、日本語における微生物という言葉よりも比較的定義が明確な形に定まった概念となっていて、
一言でいうと、
英語におけるマイクロオーガニズムという言葉は、単細胞生物と同義語として用いられることが多い概念であると考えられることになります。
つまり、そういう意味では、
こうした英語における微生物(マイクロオーガニズム)の定義に基づくと、
主に、細菌や古細菌などの単細胞生物である原核生物や、一般的な生物である真核生物のなかでも単細胞性の菌類や藻類、さらには原生生物や原生動物なども含めたすべての単細胞生物がこうした微生物(マイクロオーガニズム)のグループの内に含められることになるのに対して、
多細胞生物の方は、それがどんなに小さい姿形をした微細な生物であっても、それを微生物(マイクロオーガニズム)として分類するのはあまり適切な生物の分類のあり方ではないと考えられることになるのです。
微生物(マイクロオーガニズム)と微小動物(マイクロアニマル)の関係
そして、
こうした英語における微生物(マイクロオーガニズム)の定義に基づくと、
冒頭で挙げたミジンコとゾウリムシという二つの代表的な動物性プランクトンの種族のうち、
ゾウリムシの方は、生物学上は原生動物に分類される繊毛虫類に属する単細胞生物であることから、それは、こうした英語における微生物の定義も満たす生物であると考えられることになるのですが、
それに対して、
ミジンコの方は、生物学上は節足動物に分類される甲殻類に属する多細胞生物にあたることから、それは、こうした英語における微生物の定義には当てはまらない生物であると考えられることになります。
ちなみに、
こうしたミジンコやカイアシ、ダニやクモダニといった多細胞性の微小な節足動物のことを表す言葉としては、英語においては、一般的に、
微生物ではなく、微小動物(micro-animals、マイクロ・アニマルズ)といった言葉が用いられることが多いと考えられることになるのですが、
そういう意味では、
こうした英語における微生物(マイクロオーガニズム)と微小動物(マイクロアニマル)という二つの概念を用いると、
単細胞生物はすべて微生物(マイクロオーガニズム)に分類されるのに対して、
多細胞生物のなかでも微細な動物は微小動物(マイクロアニマル)へと分類されたうえで、
それ以外のすべての多細胞生物が、一般的な動物や植物として分類されていくことになるといった比較的すっきりとした形で、
単細胞生物から多細胞生物、そして、微細な生物から巨大な生物へと至る、様々な生物の分類学上の階層分けをしていくことが可能となるとも考えられることになります。
・・・
そして、以上のような一連の考察に基づくと、結局、
単細胞生物の一種である原生動物の内に含まれる生物であるゾウリムシは、こうした英語などにおける厳密な生物学上の定義に基づいた場合でも、それが微生物のグループに分類されるということはほぼ間違いないと考えられることになるのですが、
それに対して、
多細胞生物の一種である節足動物の内に含まれる生物であるミジンコは、それが肉眼で判別することが難しいような微細な生物あるという点では、それを日本語における微生物のグループに含めても間違いであるとまでは言えないものの、
上述したような英語における微生物(マイクロオーガニズム)と微小動物(マイクロアニマル)の関係において見られるようなより厳密な生物学上の定義に基づくと、
ミジンコは、ダニやクモダニ、カイアシといった他の多細胞性の微小な節足動物などと共に、微生物とは別の微小動物と呼ばれる生物のグループに分類する方が、より適切な生物の種族の分類のあり方であると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:ゾウリムシやヤコウチュウが昆虫ではないのに「虫」と呼ばれ理由とは?「蟲愛づる姫君」や「蠱毒」における虫の概念
前回記事:微生物と原生動物との違いとは?ミジンコが原生動物ではない理由とは?
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