微生物と原生動物との違いとは?ミジンコが原生動物ではない理由とは?
微生物とは、肉眼ではその存在を判別することが難しい細菌などの微細な生物のことを意味する言葉ですが、
それに対して、こうした微細で原始的な生物のことを意味する言葉としては、微生物という言葉のほかにも、原生動物あるいは原生生物といった言葉もしばしば用いられることがあると考えられることになります。
それでは、
こうした微生物と原生動物という二つの言葉は、より厳密な意味においては、それぞれどのような特徴を持った生物のことを意味する言葉であると考えられ、
生物学上の概念としての定義においては、両者には具体的にどのような意味の違いがあると考えられることになるのでしょうか?
生物学における微生物と原生動物の定義のあり方の違いとは?
詳しくは、「原生動物とは何か?」、「原核生物と原生生物の違いとは?」といった前回までの一連の記事で考察してきたように、
生物学上の生物の分類のあり方において、
原生生物とは、核膜を持つことによって核と細胞質が明確に区分されている真核生物のなかでも、動物・植物・菌類といった一般的な生物の分類に属さない単細胞性の真核生物のことを意味する概念であり、
それに対して、
原生動物とは、一言でいうと、そうした単細胞性の真核生物のなかでも、自ら運動して栄養摂取を行うことができる動物としての性質を持った生物のことを意味する概念として定義づけられていると考えられることになります。
そして、その一方で、
今回取り上げるもう一方の概念である微生物という概念の方は、こうした原生生物や原生動物といった生物学上の概念よりもその定義のあり方が比較的あいまいで、その言葉が指し示す意味内容のあり方にある程度大きな解釈の幅がある概念であるとも考えられることになり、
こうした微生物という言葉は、
最も狭い意味においては、細菌(バクテリア)や古細菌(アーキア)といった単細胞性の原核生物のみがこうした微生物のグループのうちに含まれることになるのに対して、
より広い意味においては、そうした細菌や古細菌といった生物の種族のほかにも、微細な形状をした菌類や、植物性プランクトンのうちに含まれる珪藻類や藍藻類などの藻類の一部、
さらには、ミジンコやゾウリムシといった微細な動物性プランクトンなどもこうした広い意味における微生物のグループのうちに含まれることになると考えられることになるのです。
ゾウリムシが原生動物でミジンコは原生動物ではない理由とは?
そして、
上記のような広い意味における微生物の定義に基づくと微生物のグループのうちに含まれることになるミジンコやゾウリムシといった微細な動物性プランクトンのうち、
以前に「原生動物とは何か?」の記事でも詳しく取り上げたように、こうした動物性プランクトンの代表例として挙げた二つの生物の種類のうちの一方である
ゾウリムシの方は、繊毛(せんもう)と呼ばれる短い毛が全身に多数並んでいて、そうした繊毛を細かく動かすことによって水中を遊泳するタイプの単細胞性の真核生物にあたるた繊毛虫類と呼ばれる種族に属する生物であり、
こうしたゾウリムシが属する生物の種族である繊毛虫類は、鞭毛虫類・肉質虫類・胞子虫類などと並んで、原生動物に分類される代表的な生物の種族であると考えられることになります。
しかし、それに対して、もう一方の
ミジンコの方は、カニやエビなどと同様に、節足動物の一種である甲殻類に分類される生物であり、
こうしたカニやエビなどの生物の種類がゾウリムシのような単細胞生物とはまったく別種の生物の種類であることなどからも分かるように、
ミジンコも体長2ミリメートル前後と大きさ自体はかなり小さいとはいえ、こうしたカニやエビなどのほかの甲殻類に分類される生物と同様に、ゾウリムシのような単細胞生物ではなく、れっきとした多細胞性の真核生物に分類される生物であると考えられることになります。
つまり、
ミジンコは、ゾウリムシなどと同様に微細な動物性プランクトンのグループの内に含まれてはいるものの、
こうしたゾウリムシなどが含まれる原生動物は、細胞一つ一つが単体で生物体を形成する単細胞生物であるのに対して、
ミジンコは、複数の細胞が集まって一つの生物体を形成する多細胞生物に分類される生物という点において、
ミジンコは、微生物に含まれることはあっても、決して単細胞生物の一種である原生動物に含まれることはないと考えられることになるのです。
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以上のように、
微生物とは、肉眼では直接判別することが難しい細菌などの微細な生物のことを意味する言葉であり、広い意味における微生物の定義においては、
細菌や古細菌などのほかに、菌類の一部や、珪藻類や藍藻類などの植物性プランクトンの一部、ミジンコやゾウリムシといった微細な動物性プランクトンなどもこうした微生物のグループのうちに含まれることになると考えられることになるのですが、
それに対して、
原生動物とは、そうした様々な微細な生物のなかでも、自ら運動して栄養摂取を行うことができるという動物としての性質を持った単細胞性の真核生物のことを意味する言葉であると考えられることになります。
そして、
前述したように、微細な動物性プランクトンの一種であるミジンコが微生物に含まれることはあっても、原生動物に含まれることがないことなどからも分かるように、
原生動物には、アメーバやゾウリムシ、ミドリムシといった動物としての性質を持った単細胞性の真核生物のみが含まれるのに対して、
微生物には、そうした単細胞性の真核生物である原生動物のほかにも、原生動物のうちには含まれない多細胞性の真核生物であるミジンコや、単細胞性の原核生物である細菌や古細菌といったより多様な生物の種族が含まれることになるといった点に、
こうした微生物と原生動物という二つの言葉における具体的な意味の違いが存在すると考えられることになるのです。
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次回記事:
前回記事:原生動物という言葉は存在するのになぜ原生植物という言葉はほとんど見られないのか?
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