R on T型の期外収縮の具体的な特徴と危険性が高い不整脈である理由、一般的な不整脈の三つのタイプ⑤
前回書いたように、
通常はあまり問題のない不整脈である場合が多い期外収縮のなかでも、心室頻拍や心室細動といった重篤な不整脈へと移行してしまう危険性が比較的高いタイプとしては、頻脈発作へとつながりやすい連発型の期外収縮のタイプが挙げられることになります。
そして、こうした頻脈発作へとつながる危険性が高い期外収縮のタイプとしては、連発型の期外収縮の他に、R on T 型と呼ばれる期外収縮のタイプが挙げられることになるのですが、
こうしたR on T型の期外収縮は、具体的にどのような特徴を持った不整脈であり、どのような点において危険性が高い期外収縮のタイプであるとみなされることになるのでしょうか?
R on T 型の期外収縮の「R」と「T」の意味とは?
R on T 型の期外収縮は、一般的には、期外収縮を含む脈拍同士の間隔が非常に短くなるタイプの不整脈を意味することになるのですが、
そもそも、このR on T 型の期外収縮という言葉における「R」と「T」とは、具体的に何のことを示しているのでしょうか?
心電図においては、心臓の拍動における心筋の興奮と弛緩のリズムとの対応関係に従って、波形の各部分がR波やT波といったアルファベットで表される波によって分割して捉えられることになるのですが、
こうした心電図の波形において、心臓が全身に血液を送り出そうとするときに生じる心室の興奮状態を表す波はQRS波と呼ばれ、
それに対して、興奮状態が解除されて心室が弛緩する心室の沈静状態への移行を表す波はT波と呼ばれることになります。
そのなかでも、特に、心室の興奮状態を表す波であるQRS波においては、
興奮の開始を表す波がQ波、心室の興奮状態のピークがR波、興奮の終わりを表す波がS波というように、心電図の波形におけるそれぞれの部分が分割して捉えられることになるのです。
そして、
R on T 型の期外収縮においては、期外収縮によって生じる心室の興奮状態のピークを表すR波が、その前の心臓の拍動が沈静化へと向かう波であるT波に重なるような形で現れることになるので、
「T波の上に重なるR波」という意味で、「R on T」と呼ばれることになるのです。
つまり、
R on T型の期外収縮とは、期外収縮による心室のイレギュラーな興奮のピークであるR波が、本来、心室が弛緩し、沈静状態へと向かうはずの波であるT波と直接重なってしまうタイプの期外収縮であるということです。
R on T 型の期外収縮の危険性とQT延長症候群との関係
そして、こうしたR on T 型の期外収縮においては、
期外収縮による心室の興奮状態のピークを表す波であるR波が、心室が沈静化へと向かう波であるT波と直接重なってしまうことになるので、
それによって、心室の興奮と弛緩のリズムに重大な混乱が生じ、心室の心筋がけいれんを起こした状態である心室細動などへとつながってしまう危険性が高まってしまうことになります。
したがって、
R on T 型の期外収縮は、通常の期外収縮と比べて、心室頻拍や心室細動といった重篤な不整脈へと移行してしまう危険性が高い不整脈のタイプに分類されると考えられることになるのです。
こうしたR on T 型の期外収縮や、そこからの心室細動などの重篤な不整脈への移行は、通常の場合ではあまり高頻度で見られる不整脈のパターンではなく、
実際には、心筋梗塞や心筋症といった心臓の器質的な心疾患が原因となって、R on T 型の期外収縮が生じ、そこからさらに、心室細動などの重篤な不整脈へと移行してしまうケースが多いと考えられることになります。
しかし、
以前にも取り上げたQT延長症候群などの不整脈疾患が背景にある場合には、心臓の器質的な病変がない場合でも、
QT延長の部分に期外収縮のR波が重なってしまうR on T の現象が生じてしまうことによって、そこからトルサード・ド・ポアンツと呼ばれる多形性心室頻拍へとつながり、心室細動から心停止へとつながってしまうケースもあるので、
R on T 型の期外収縮は、心臓の器質的な病変がない通常の健康体の人の場合でも、立ちくらみやめまい、失神といった兆候が見られる場合などは特に、一定の注意をはらっておくことが必要な期外収縮のタイプであると考えられることになるのです。
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次回記事:心室細動と心房細動の違いとは?心房から心室への高頻度の電気的刺激の伝達が回避される仕組み
前回記事:期外収縮と頻脈性不整脈との関係とは?連発型の期外収縮の危険性と頻脈発作への移行、一般的な不整脈の三つのタイプ④
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