バイオセーフティーレベル3とレベル4に分類されるウイルスの代表的な種類とは?
前回書いたように、
細菌やウイルスといった病原体の総合的な危険度を表す指標としても用いられるバイオセーフティーレベル(Biosafety level、略称:BSL)においては、
レベル1には、大腸菌や枯草菌といった通常は人体にとって無害である微生物が分類され、
レベル2には、ライノウイルスやコロナウイルス、アデノウイルスといった風邪の原因となるウイルスや、通常のインフルエンザウイルス、病原性の大腸菌や黄色ブドウ球菌といった中程度くらいまでの症状を引き起こす細菌やウイルスが分類されることになります。
それでは、その次の段階であるレベル3や、さらにその上の最上級の段階であるバイオセーフティーレベルのレベル4に分類される病原体にはどのような種類のウイルスが該当することになるのでしょうか?
レベル3に分類されるウイルス:感染力は比較的弱いが重大な症状を引き起こすウイルス
上から二番目の警戒レベルにあたるバイオセーフティーレベルのレベル3に分類される代表的なウイルスとしては、
例えば、
熱帯地域を中心に蚊を媒介として感染を広げる黄熱病やウエストナイル熱、リフトバレー熱といった熱病の原因となるウイルスである
黄熱病ウイルス(Yellow fever virus)、ウエストナイル熱ウイルス(West Nile virus)、リフトバレー熱ウイルス(Rift Valley fever virus)といったウイルスの名が挙げられることになります。
そして、さらに、2010年現在の国立感染症研究所における病原体の安全管理規定に基づくと、
2002年~2003年にかけて中国の広東省を中心に流行した新型肺炎とも呼ばれる重症急性呼吸器症候群(SARS(サーズ))の原因となったSARSコロナウイルス(SARS coronavirus)や、
後天性免疫不全症候群(AIDS(エイズ))の原因となるHIVウイルス(Human immunodeficiency virus)もバイオセーフティーレベルのレベル3に分類されることになります。
また、
前回書いたように、通常の季節性のインフルエンザの流行を引き起こす弱毒株のインフルエンザウイルスは、バイオセーフティーレベルのレベル2に分類されていますが、
直接人間に感染を引き起こすタイプの鳥インフルエンザや、致死率が高い強毒性の新型インフルエンザウイルスなどは、レベル3の方に分類されることになります。
レベル4に分類されるウイルス:感染力も症状も共に最高レベルの危険性を持つウイルス
そして、
バイオセーフティーレベルの最上級の段階であるレベル4では、該当するウイルスの数がさらに少数に絞り込まれていき、2010年現在では、
エボラ出血熱の原因となるエボラウイルス(Ebola virus)と、マールブルグ熱の原因となるマールブルグウイルス(Marburg virus)、クリミア・コンゴ出血熱の原因となるクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(Crimean-Congo hemorrhagic fever virus)、
そして、ラッサ熱や南米出血熱などの原因となるウイルスの総称であるアレナウイルス(Arenavirus)という四種類の出血熱ウイルスに、
天然痘ウイルス(Variola virus)を加えた全部で五種類のウイルスのみがバイオセーフティーレベルの最高段階であるレベル4に該当することになります。
ちなみに、
この五種類のウイルスのうち、最後に挙げた天然痘ウイルスについては、ワクチン接種が進んだことにより、1977年の感染者を最後として、それ以降は自然発生による天然痘ウイルスの感染者は確認されていないので、
天然痘ウイルスはウイルス自体としては非常に危険ではあるものの、すでに人類が撲滅することに成功した自然界には存在しないウイルスということになります。
したがって、
現代においても感染が広がる可能性のある現実的な脅威を持ったウイルスとしては、エボラウイルス、マールブルグウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、アレナウイルスという四種類の出血熱ウイルスのみがレベル4のウイルスに該当することになるのです。
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以上のように、
バイオセーフティーレベルの上から二番目の警戒レベルにあたるレベル3には、主に感染力は比較的弱いが重大な症状を引き起こすウイルスが分類され、
具体的には、
黄熱病ウイルス、ウエストナイル熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルスといった蚊が媒介する熱病の原因となるウイルスや、
新型肺炎の原因となるSARSコロナウイルス、エイズの原因となるHIVウイルス、新型インフルエンザウイルスなどが分類されることになります。
そして、バイオセーフティーレベルの最上級の段階であるレベル4には、
エボラウイルス、マールブルグウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、アレナウイルスという四種類の出血熱ウイルスに、天然痘ウイルスを加えた全部で五種類のウイルスのみが分類されることになるのです。
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次回記事:DNAなのに一本鎖の遺伝子構造を持ったウイルスとRNAなのに二本鎖の遺伝子構造ウイルスとは?DNAウイルスとRNAウイルス⑩
前回記事:バイオセーフティーレベル1とレベル2に分類されるウイルスや細菌の代表的な種類とは?
関連記事:レベル4に分類される出血熱ウイルスの種類と致死率、RNAウイルスの代表的な種類⑤、DNAウイルスとRNAウイルス⑨
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