レベル4に分類される出血熱ウイルスの種類と致死率、RNAウイルスの代表的な種類⑤、DNAウイルスとRNAウイルス⑨
前回書いたように、
蚊によって媒介される熱帯地域のウイルス感染症としては、黄熱、ウエストナイル熱、リフトバレー熱、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱といった熱病の名前が挙げられることなります。
そして、
熱帯地域を中心に感染を広げるウイルスの中でも、より重篤で致死率の高い出血熱を引き起こす人類にとって最悪の種類のウイルス感染症としては、
ラッサ熱、マールブルグ熱、クリミア・コンゴ出血熱、そしてエボラ出血熱といった感染症を引き起こす出血熱ウイルスの名が挙げられることになりますが、
これらのウイルスの危険度は具体的にどのような基準によって評価され、それぞれのウイルス感染症における致死率の高さはどの程度にまでおよぶものなのでしょうか?
バイオセーフティーレベル4に分類される最も危険性の高いウイルス
冒頭に挙げた致死性の出血熱は、ラッサウイルス、マールブルグウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、そしてエボラウイルスという四つの種類のウイルスによって引き起こされることになりますが、
これらの四種類の出血熱ウイルスはすべて、病原体を取り扱う実験室や施設の格付けであるバイオセーフティーレベル(biosafety level、略称:BSL)では最高ランクの危険度であるレベル4のウイルスに分類されています。
上記のバイオセーフティーレベルにおいては、例えば、
鼻かぜなどの一般的な風邪の原因となるライノウイルスや、インフルエンザの原因となる通常のインフルエンザウイルスはレベル2のウイルスに分類されることになります。
また、
同じインフルエンザウイルスのなかでも、高病原性鳥インフルエンザなどとも呼ばれる強毒株のうち人間にも感染するものや強毒性の新型インフルエンザの原因となるウイルスはレベル3のウイルスに分類されていて、
エイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起こすウイルスであるHIVウイルスも新型インフルエンザと同じレベル3のウイルスに分類されることになります。
このように、
一般的には、人体および社会を脅かす危険度が極めて高いウイルスとして恐れられられている新型インフルエンザやHIVウイルスでさえ、バイオセーフティーレベルではレベル3のウイルス分類にとどまるのに対して、
上記のラッサウイルス、マールブルグウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、エボラウイルスという四種類の出血熱ウイルスは、そのさらに上のレベルであるレベル4に分類されるウイルスとなることから見ても、これらのウイルスの客観的な危険度の高さが推し測られることになります。
また、
国民の生命および健康への影響の重大性を評価する日本国内における病原体の分類基準おいては、感染症の分類は、一類感染症から五類感染症までの四段階に分類されていて、
こちらの分類においては、数字の小さい一類感染症の方が最高レベルの危険度の感染症として位置づけられることになるのですが、
上記のエボラウイルスといった四種類のウイルスが引き起こす出血熱は、すべて最高レベルの危険度である一類感染症に分類されることになります。
出血熱ウイルスにおける致死率の違い
出血熱とは、高熱と全身の関節や筋肉の痛みに始まり、歯茎からの出血や皮下出血、皮膚の点状出血といった見た目にも恐ろしい症状を引き起こし、
白血球の減少や精神状態の変調、さらには多臓器不全を引き起こすことによって死へと至ることも多い重篤な疾患ですが、
そうした症状の原因となる上記の出血熱ウイルスによって引き起こされる感染症の致死率の違いについては以下のようになります。
上記の四種類のウイルスが引き起こすウイルス性出血熱の内、はじめのラッサ熱だけは致死率1~2%程度とされていますが、
残りの三種類の出血熱については、クリミア・コンゴ出血熱の致死率が15~30%程度、マールブルグ熱の致死率が30~80%、そしてエボラ出血熱の致死率は50~90%となっていて、
出血熱という症状の恐ろしさだけではなく、致死率においても極めて高いウイルス感染症となっています。
ちなみに、クリミア・コンゴ出血熱やエボラ出血熱における致死率の幅に30~80%や50~90%といった大きな開きがある理由としては、
これらの極めて重篤な症状をもたらす強力なウイルスの場合には、それぞれのウイルス感染症の流行が起きたときの原因となったウイルス株のちょっとした構造の変化でも、
そうしたウイルスの細かい構造の違いに応じて人体が受ける致命的な影響の度合いが大きく異なってくることになるので、個々の流行におけるウイルス株の違いによって致死率の変動が大きく見られることが理由として挙げられることになります。
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以上のように、
前回取り上げたデング熱や黄熱、ジカ熱などの蚊によって媒介される熱病よりもさらに重篤な症状を引き起こす危険性の高い出血熱ウイルスの代表的な種類としては、
ラッサウイルス、マールブルグウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、そしてエボラウイルスという四つの種類のウイルスの名が挙げられ、
これらのウイルスはすべてウイルスの大枠の分類においては、多数派であるRNAウイルスに分類されることになります。
そして、これらの四種類の出血熱ウイルスはすべて、世界的なウイルス分類基準の最高レベルであるバイオセーフティーレベル4に分類されるウイルスであり、
致死率についてもエボラ出血熱の50~90%を筆頭に、非常に高い致死率が並ぶ、人類にとって最も危険性の高い最悪の種類のウイルスであると考えられることになるのです。
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次回記事:バイオセーフティーレベルと日本における感染症の分類規定の違いとは?
前回記事:蚊によって媒介される熱帯地域のウイルス感染症と致死率、RNAウイルスの代表的な種類④、DNAウイルスとRNAウイルス⑧
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