バイオセーフティーレベル1とレベル2に分類されるウイルスや細菌の代表的な種類とは?
前回書いたように、
バイオセーフティーレベルとは、本来、世界保健機関(WHO)の保安規定に基づいて定められている細菌やウイルスなどの病原体を取り扱う施設に関するランク付けを表す基準であり、
そうした施設に関するランク付けが、そのまま施設で扱う病原体自体のランク付けにも対応することから、ウイルス自体が有する総合的な危険度を表す指標ともなっています。
それでは、こうしたバイオセーフティーレベルの各レベルに分類される細菌やウイルスの代表的な種類としては、具体的にどのような感染症の原因となる細菌やウイルスの名前が挙げられることになるのでしょうか?
レベル1に分類される代表的な微生物:非病原性の大腸菌や枯草菌
まず、最も危険性の低いバイオセーフティーレベルであるレベル1には、
非病原性の大腸菌や枯草菌(こそうきん)などの通常は人体に無害であると考えられている、病気を引き起こす可能性の低い微生物が分類されています。
ちなみに、枯草菌とは、土壌に広く分布している常在細菌の一種で、枯れ草の表面などに多く見られることから枯草菌という名がつけられていて、
よく知られている細菌名で言うと、例えば、大豆を発酵させて納豆を作るときに使われる納豆菌なども枯草菌の一種に分類されることになります。
その他にも、
厳密には、生きた細菌やウイルス自体とは言えないものの、BCGワクチン(結核予防ワクチン)などのワクチンの原料となる弱毒性のワクチン株などもバイオセーフティーレベル1に分類されることになります。
レベル2に分類されるウイルス:中程度くらいまでの症状を引き起こすウイルス
前述したように、レベル1に分類される細菌やウイルスは基本的に人体にとって無害とされているものなので、
一般的な意味での病原体となる細菌やウイルスの分類は、バイオセーフティーレベル2から始まることになります。
そして、
そのバイオセーフティーレベルのレベル2に分類される代表的なウイルスとしては、
例えば、
鼻かぜなどの一般的な風邪の原因となるウイルスであるライノウイルス(Rhinovirus)や、のど風邪や咽頭結膜熱(プール熱)の原因となるアデノウイルス(Adenovirus)、せき風邪の原因となるコロナウイルス(Coronavirus)などの名が挙げられます。
他にも、
一般的なインフルエンザの流行を引き起こす弱毒株のインフルエンザウイルス(Influenzavirus)や、水ぼうそうや帯状疱疹などの原因となるヘルペスウイルス(Herpesvirus)、子宮頸癌の原因となるヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)、
麻疹(はしか)の原因となる麻疹ウイルス(Measles virus)、おたふく風邪の原因となるムンプスウイルス(Mumps virus)、風疹(ふうしん)の原因となる風疹ウイルス(Rubella virus)などといった一般的な感染症を引き起こす大多数のウイルスがバイオセーフティーレベル2に分類されています。
一方、レベル2に分類される代表的な細菌については、
食中毒などの原因となる病原性の大腸菌や黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌などが挙げられるほか、
その他の病原性微生物としては、マラリアの原因となるマラリア原虫などもレベル2に分類されることになります。
このように、バイオセーフティーレベル2には、感染力がある程度高くても比較的症状が軽くすむか、感染力も症状の重大さも共に中程度までであるような細菌やウイルスなどが分類されることになるのです。
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以上のように、
バイオセーフティーレベルのレベル1には、通常の免疫状態にある人間にはほとんど無害である微生物などが分類され、
具体的には、非病原性の大腸菌、枯草菌、弱毒性のワクチン株などが分類されることになります。
そして、
バイオセーフティーレベルのレベル2には、引き起こす症状が中程度くらいまでの細菌やウイルスが分類され、
具体的には、
ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、弱毒株のインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルスなどのウイルスと、
病原性の大腸菌や黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌など細菌、および、マラリア原虫などの病原性微生物が分類されることになるのです。
そして、
今回取り上げたバイオセーフティーレベル1とレベル2のウイルスは、通常は人体にとって無害であるか、感染しても中程度までの症状ですむことが多いウイルスであるのに対して、
次回取り上げるレベル3とレベル4のウイルスには、感染力が低くても重大な症状を引き起こすウイルスや、感染力も症状も共に最高レベルの危険性を持つウイルスが登場することになるのです。
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次回記事:バイオセーフティーレベル3とレベル4に分類されるウイルスの代表的な種類とは?
前回記事:バイオセーフティーレベルと日本における感染症の分類規定の違いとは?
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