WPW症候群の具体的な特徴と致死性不整脈との関係とは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類⑥

このシリーズの初回から前回までの記事で書いてきたように、

心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈へと直接つながってしまう危険性のある不整脈としては、

ブルガダ症候群QT延長症候群QT短縮症候群、さらには、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍進行性心臓伝導障害早期再分極症候群(J波症候群)といった不整脈疾患の種類が挙げられることになります。

そして、

その他に、致死性不整脈を引き起こす可能性のある代表的な不整脈の種類としては、WPW症候群といった不整脈疾患の種類も挙げられることになるので、

WPW症候群とは具体的にはどのような特徴を持った不整脈疾患であり、上記の不整脈疾患の種類とWPW症候群にはどのような性質の違いがあると考えられることになるのでしょうか?

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WPW症候群の具体的な特徴とは?

まず、はじめに、

WPW症候群Wolff-Parkinson-White syndrome、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)とは、一言で言うと、

心臓自体には器質的疾患は存在しないにもかかわらず、発作性上室性頻拍などの頻脈発作を引き起こしてしまう可能性のある不整脈疾患ということになります。

それでは、このWPW症候群によって引き起こされる上室性頻拍とは具体的にどのような不整脈の状態のことを指す言葉なのか?ということですが、

上室性頻拍の「上室」とは、心室よりも上にある心臓の部屋のことを意味する言葉であり、具体的には、心臓の上部に位置する心房や、房室接合部(心房と心室の隔壁)のことを指す言葉ということになります。

つまり、

上室性頻拍とは、こうした心臓の上室の部分、すなわち、心房や房室接合部に由来する頻脈のことを意味する不整脈の形態ということになるのです。

そして、次に、

WPW症候群において、こうした上室性頻拍が生じてしまう原因についてですが、

まず、通常の場合、心臓の電気的刺激の伝達には、心臓の右心房の付近にある洞房結節(どうぼうけっせつ、洞結節)から発せられた電気的刺激が、心房から心室へ一方通行の形で順次伝わっていくことで適切な心拍のリズムが刻まれていくことになります。

それに対して、WPW症候群の場合は、

通常の刺激伝導系のほかに、電気的刺激が伝達するバイパスのような経路である副伝導路が心房と心室の間に先天的に存在するのですが、

この副伝導路に流れ込んでしまった電気的刺激が、通常の刺激伝導系とは別に、勝手に電気的興奮を繰り返して伝達し続けるリエントリ-回路を形成してしまうことによって、上室性頻拍と呼ばれる頻脈発作を引き起こしてしまうことになるのです。

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WPW症候群と致死性不整脈との関係とは?

それでは、こうしたWPW症候群によって生じる上室性頻拍の危険性は具体的にどの程度高いと考えられることになるのでしょうか?

まず、一般的に致死性不整脈などとも呼ばれる、心停止へと直接つながってしまう危険性の高い重篤な不整脈としては、心室細動心室頻拍といった不整脈の状態が挙げられることになりますが、

こうした致命的な不整脈は、すべて、心臓において全身に血液を送り出す機能を担う器官である心室の部分において生じる不整脈であると考えられることになります。

不整脈の発作は、基本的に、心房部分心室部分のいずれかで生じることになるのですが、

血液が戻ってくる部分である心房部分における不整脈は、心臓の内部での血液の一時的な滞留を引き起こすだけで、全身への直接的な影響は比較的少ないのに対して、

全身に血液を送り出す心室部分における不整脈は、全身の血流不全へと直結してしまうことになり、脳への血流不足によるめまい立ちくらみといった症状から、失神、さらには心停止へとつながってしまうリスクが非常に高まってしまうことになるのです。

そして、

冒頭で挙げたブルガダ症候群QT延長症候群などの不整脈疾患においては、不整脈の発作は、まさに上記の心室部分において生じることになるので、そこから直接的に心室細動心室頻拍といったより重篤な不整脈へと移行してしまう危険性が生じてしまうことになるのですが、

それに対して、先ほど書いたように、WPW症候群による不整脈発作は、直接的には、心室部分ではなく、心房部分や心房と心室の境界部分である房室接合部において生じることになるので、

そうした点においては、上記の不整脈疾患と比べると、心室細動や突然死へとつながる危険性は、そこまで高くはないと考えられることになります。

つまり、

ブルガダ症候群QT延長症候群などの不整脈疾患においては、全身に血液を送り出す心臓の部分である心室部分において不整脈の発作が起きるのに対して、

WPW症候群における不整脈の発作は、基本的には、心房部分房室接合部といった心室以外の部分で生じることになるので、その分、心室細動や突然死へとつながる直接的な危険性は低くなると考えられるということです。

しかし、

それでは、こうしたWPW症候群における頻脈発作は、絶対に心室細動や突然死へとつながる可能性のない、完全に良性の不整脈であるのか?というと、必ずしもそう言い切ることができるわけではなく、

WPW症候群によって生じる発作性上室性頻拍自体が全身の血流不全といった致命的な状態へとつながってしまう危険性はほとんどないものの、

特に、WPW症候群によって生じる上室性頻拍が房室接合部の中でも心室に近い部分で生じる場合や、頻拍の間隔が著しく短いケースでは、それが偽性心室頻拍とも呼ばれる特殊な心房細動を誘発することがあり、

心房細動における強い電気的興奮が、副伝導路を介して隣接する心室部分へも伝達されてしまい、結果として心室細動などの重篤な不整脈へとつながってしまうことも稀なケースではあるものの存在することになります。

・・・

以上のように、

WPW症候群ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)とは、

心臓における電気的刺激の通常の伝達経路のほかに、副伝導路と呼ばれる伝達経路が先天的に存在することによって、勝手に電気的興奮を繰り返し伝達し続けるリエントリ-回路が形成され、

心房房室接合部における頻脈性不整脈である発作性上室性頻拍を引き起こしてしまう可能性がある不整脈疾患であり、

WPW症候群における発作性上室性頻拍は、通常の場合は、心室細動や突然死へと直結する危険性は低いものの、

房室接合部における強い電気的興奮が隣接する心室部分へも伝達されてしまうケースでは、稀に心室細動などの重篤な不整脈へとつながってしまうこともあります。

そして、そういう意味では、

WPW症候群は、心室細動や心室頻拍へと高確率で直結してしまうような致死性不整脈であるとまでは言えないものの、

そうしたリスクが完全にゼロとまでは言い切ることができない、言わば、命の危険性の高い致死性不整脈と、そうした危険性がほとんどない比較的安全な不整脈の分類の間に位置する不整脈として、

準致死性不整脈といったカテゴリーに分類するのが最も適切な不整脈の形態であると考えられることになるのです。

・・・

次回記事致死性不整脈を引き起こす代表的な五つの不整脈疾患の種類のまとめ

関連記事:WPW症候群における心房細動が偽性心室頻拍とも呼ばれる理由とは?副伝導路によって形成されるリエントリー回路の仕組み

前回記事:トルサード・ド・ポアンツの具体的な特徴とQT延長症候群との関係とは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類⑤

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