早期再分極症候群(J波症候群)の具体的な特徴と危険性の判別基準、致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類④

前回書いたように、

カテコラミン誘発性多型性心室頻拍進行性心臓伝導障害といった遺伝性の不整脈疾患は、狭心症や心筋梗塞、心筋症といった心臓の器質的な病変がない場合でも、心室細動などの致死性不整脈へと直接つながってしまう可能性が高い非常に稀な不整脈疾患に分類さることになりますが、

それに対して、今回取り上げる早期再分極症候群J波症候群)と呼ばれる不整脈は、数多くの症例が見られる発症率の高い不整脈の形態であり、

こうした不整脈が一つの誘因となって、心室細動や心室頻拍などの致死的な不整脈へとつながってしまうケースはあるもの、その不整脈自体としての重大性の評価については、個々のケースにおいて大きく評価が分かれる不整脈の形態ともなっています。

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「再分極」と「J波」の具体的な意味とは?

早期再分極症候群の「再分極」(repolarization)とは、具体的には、心電図の波形において、心臓の電気的興奮が収束していく過程のことを指す言葉であり、

早期再分極症候群early repolarization syndrome)とは、一言で言うと、心臓の拍動を生み出す電気的刺激の伝達において、通常の場合よりも心筋の電気的興奮が早く収束してしまう不整脈の形態のことを意味することになります。

これに対して、

早期再分極症候群の別名として使われることも多いJ波症候群の「J」とは、心室の収縮を表すQRSと、心室の弛緩すなわち再分極を表すTの間に出現することがある心電図の小さな波のことを指す言葉であり、

心電図のQRS波の終わりにJ波が割り込むように出現することによって、心筋の電気的興奮を収束させる本来の波であるT波が来る前に早期に心筋の弛緩が始まってしまうことになります。

したがって、

心電図においてJが出現すると、心臓の電気的興奮の収束である再分極が通常よりも早期に始まってしまうことになるので、

心電図にJ波が現れるJ波症候群は、早期再分極症候群へとつながる一連の不整脈の形態としても捉えられることになるのです。

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早期再分極症候群(J波症候群)の特徴と危険性の判別基準

以上のように、

早期再分極症候群ないしJ波症候群においては、心筋の電気的刺激の伝達において、本来よりも早く再分極が始まってしまうことによって心臓の電気的状態が不安定となり、

特発性の心室頻拍心室細動といったより重篤で命にかかわる不整脈の状態へと移行してしまう可能性がある程度高まってしまう危険性があると考えられることになります。

しかし、こうした潜在的な危険性の一方で、

早期再分極心電図におけるJ波の出現は、自覚症状もなく、心電図におけるJ波の所見も極めて軽微であるものも含めると、全人口の510%程度もの人に見られるほどの非常に多く見られる心電図の特徴でもあることが分かっています。

つまり、

早期再分極症候群J波症候群)という不整脈の形態自体は、発症率の極めて高い、極めて一般的な不整脈の形態であり、

こうした不整脈の形態を有する人の多くが、実際には、失神などの危険な兆候はおろか、何の自覚症状も感じずに、心室細動のような致死的な不整脈とは無縁のまま健康な生活を送っているということにもなるのです。

したがって、

早期再分極症候群J波症候群)と診断された場合、その不整脈の形態が実際にどの程度命にかかわる危険性の高い重大な不整脈であるのかは、

心電図に見られるJ波の波形の大きさや、頻脈発作の有無、失神めまい立ちくらみといった危険な兆候の有無などから総合的に判断されていくことになるのですが、

特に、このシリーズの第一回で取り上げたブルガダ症候群QT延長症候群といった他の致死性不整脈と合併してこの症候群があらわれている場合は、心室細動や心室頻拍を引き起こす危険性が高まる要因として重視されることになるのです。

・・・

以上のように、

早期再分極症候群J波症候群)とは、通常よりも心筋の電気的興奮が早く収束してしまう不整脈の形態であり、

心臓の電気的刺激の伝達において、心筋の弛緩状態への移行である再分極が本来よりも早く始まってしまうことによって心臓の電気的状態が不安定となり、

特発性の心室頻拍心室細動といったより重篤で命にかかわる不整脈の状態へと移行してしまう可能性が生じることになります。

この不整脈の形態自体は、軽微なものも含めると全人口の510%程度もの人に見られる非常に多く見られる心電図の特徴であり、多くの場合は、自覚症状のないまま健康な日常生活を送り続けることができるのですが、

心電図に見られるJ波の波形がある程度大きいケースや、失神めまい立ちくらみといった危険な兆候が見られるケース、または、ブルガダ症候群QT延長症候群といった他の致命的になりうる不整脈と合併して現れるケースでは、

心室細動や心室頻拍といった重篤な不整脈を引き起こす危険性が高まる要因としてより重視されていくことになります。

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次回記事トルサード・ド・ポアンツの具体的な特徴とQT延長症候群との関係とは?致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類⑤

前回記事:カテコラミン誘発性多型性心室頻拍と進行性心臓伝導障害の特徴、致死性不整脈を引き起こす代表的な不整脈の種類③

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