オランダの正式名称はネーデルランドとネーデルラントのどっち?ドイツ語や英語での呼び方は?
「オランダ」とは、もともと、アムステルダム、ロッテルダム、ハーグなどの主要都市が位置するこの国の中心となる州である「ホラント州」(Holland)が語源となる言葉であり、
ホラント州がポルトガル語では、“Holanda“(オランダ)と呼ばれていて、それがホラント州が位置する国全体のことを表す俗称ともなっていました。
そして、
こうしたポルトガル語におけるオランダの俗称が
16世紀頃、ポルトガル人宣教師によって、戦国時代の日本へと伝わり、
それに「和蘭」、「和蘭陀」、「阿蘭陀」といった漢字が当てられてることによって、日本国内に「オランダ」という呼称が定着していくことになっていったのです。
これに対して、
オランダというヨーロッパの国のことを表すオランダ語における正式な国称は“Nederland“(ネーデルラント)となっているのですが、
この”Nederland“という単語は、英語式に読むと「ネーデルランド」とも読めることになります。
そうすると、
オランダの正式な国称である”Nederland“という単語の正式な読み方は、「ネーデルラント」と「ネーデルランド」のどちらということになるのでしょうか?
Nederlandの語源と国土の4分の1が海面の下に位置する国
“Nederland“は、オランダ語で「低い、下の」を表す“neder“(ネーデル)と「国、土地」のことを表す“land“(ラント)が合わさってできた言葉であり、
“Nederland“(ネーデルラント)のもともとの意味としては、「低地の国」のことを表す言葉ということになります。
オランダは、アルプスから北へとヨーロッパ中部を縦断するように流れるライン川の下流の低湿地帯に位置する国であり、
国土の多くを干拓地(海岸や湖などを堤防で仕切り、内側の水を排出して造成された陸地)が占めていて、国土の4分の1は海面の下に位置する国でもあります。
ちなみに、
オランダは、2012年の統計では成人男性の身長が世界で一番高い国となっていますが、
そういう意味では、オランダは、住んでいる人の身長は高くて、住んでいる土地の
高度は低い、世界で一番高くて低い国ということになるかもしれません。
また、
オランダというと、ゴーダチーズ(Gouda cheese)などで知られるように、酪農や牧畜が非常に盛んな国でもありますが、
これらの農牧業が営まれている牧草地の多くは、もとは湿原に水路を引いて水の流れを整備し、その水を風車によって汲み出すことによって造られたポルダー(polder)と呼ばれる干拓地が土台となっています。
そして、
こうしたポルダーは、12世紀以降、海の浅瀬や沼地の大規模な干拓が進んでいくことによって、北部や西部の海岸地帯を中心とするオランダ国内の各地へと広がっていき、同国の農業を担う重要な存在となっていくのですが、
以上のように、
オランダにおける酪農と牧畜の歴史は、国土の大半を占める湿地帯における土壌の改良と、国を挙げた大規模な干拓事業の進展と共に進んでいったと考えられることになるのです。
そして、このような地理上および歴史上の経緯から、
ヨーロッパ全体から見て低い土地にある国という意味で、
“Nederland“(ネーデルラント)という言葉が、この国自体のことを指す正式名称として定着していくことになっていったのです。
「オランダ」の英語やドイツ語における一般的な呼び方と発音とは?
それでは、
英語やドイツ語といった他の国の言語においては、オランダのことはどのように呼ばれているのかというと、
英語においては、
通称では、”Holland“(ホランド)
正式には、”the Netherlands“(ザ・ネザーランズ)
ドイツ語では、
通称では、”Holland“(ホラント)
正式には、”die Niederlande“(ディー・ニーダーランデ)
と呼ばれることになります。
通称の方の「ホランド」と「ホラント」の方は、両方とも、前述したオランダの中心となる州であるホラント州に由来する呼び方ということになりますが、
正式な呼び方の方の”the Netherlands“と”die Niederlande“が
定冠詞である”the“と”die“が付いた複数形の形になっているのには、さらに少し込み入った理由が考えられることになります。
まず、定冠詞がついて、名詞の内容が特定化されている理由としては、
ただ”nether land“や”nieder Lnad“と言ってしまうと、それは、英語やドイツ語といったそれぞれの言語の範疇では、”nether”および”nieder”で「低い」、”land”で「土地」、合わせて「低い土地」という普通名詞のことを表す概念になってしまうので、
そうではなく、特定の低い土地にある国であるオランダという国のことを指す概念であることを強調するために、単語の前に定冠詞である”the“や”die“を付けることが必要になったと考えられることになります。
そして、
“the Netherlands“と”die Niederlande“がそれぞれ”-s“、”-e“と複数形の形になっている理由については、
これらの呼び方が正確には、ヨーロッパ大陸におけるオランダ本国だけではなく、アルバ、キュラソー、シント・マールテン※といったオランダ王国を構成する複数の海外領土も含む概念になっていることが理由として挙げられることになります。
※オランダの海外領土であるアルバ、キュラソー、シント・マールテンは、すべて南北アメリカ大陸に挟まれたカリブ海に位置する西インド諸島の島国。
つまり、
オランダ本国だけではなく、海外領土も含めた複数の国々の総称として、”the Netherlands“および”die Niederlande“という言葉が使われているので、正確な表現としては、単数形ではなく、複数形にすることが必要と考えられるということです。
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以上のように、
ヨーロッパの国としてのオランダのことを表す正式な国称である”Nederland“は、
英語式に「ネーデルランド」と発音しても間違いとまでは言えないのですが、
オランダ語の”Nederland”にあたる単語が英語では“the Nederlands”(ザ・ネーデルランズ)とはならずに、”the Netherlands“(ザ・ネザーランズ)となること、
そして、
そもそも、オランダ人自身の言葉であるオランダ語では、”Nederland”は「ネーデルラント」と発音されことを踏まえると、
英語式の「ネーデルランド」よりも、オランダ語式の「ネーデルラント」の方が、より正式な正しい発音であると考えられることになるのです。
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