「ダックスフンド」か「ダックスフント」か?ドイツ語と英語における発音の違い
短い足と細長い胴体が特徴のドイツ原産の犬であるダックスフント(Dachshund)は、
少し面長の優しげな落ち着いた表情と、モタモタした感じもある愛らしい動きが人の心を和ませることもあり、日本では、常に、飼いたい犬のランキングベスト3位前後にはランクインする人気の犬種ですが、
“Dachshund“は、ドイツ語式に「ダックスフント」と発音されることもあれば、英語式に「ダックスフンド」と発音されることもあります。
こうした「ダックスフント」という発音と「ダックスフンド」という発音では、どちらの方がより正しい発音の仕方ということになるのでしょうか?
ドイツ語と英語における「d」の発音の違い
“Dachshund“は、もともとドイツでアナグマやキツネといった斜面に巣穴を掘って生活する獲物を狩るために改良された猟犬であり、
“Dachshund“という単語自体も、ドイツ語でアナグマを表す”Dachs“(ダックス)と、犬を表す”Hund“(フント)を合成して作られた単語ということになります。
そして、
ドイツ語の”Hund“(フント、犬)は、
英語では”hound“(ハウンド、猟犬)にあたる単語ということになるのですが、
ドイツ語において、”Hund“の語末の”-d“が「フント」と濁らずに発音されるのに対して、英語においては、”hound“の語末の”-d“は「ハウンド」と濁って発音されることになります。
他にも、例えば、
英語の”hand ball“(ハンド・ボール)は、
ドイツ語では”Handball“(ハント・バル)、
英語の”gold medal“(ゴールド・メダル)は、
ドイツ語では”Goldmedaille“(ゴルト・メダレェ)
と発音されるというように、
ドイツ語と英語の発音規則における語末の「d」の発音の違いにしたがって、”Dachshund“という同じアルファベット表記に対する「ダックスフンド」と「ダックスフント」という二つの異なる発音の仕方が生じてしまうことになるのです。
国語辞書における表記と、ケネルクラブにおける表記の違い
それでは、
日本国内においては、ドイツ語式の「ダックスフント」と、英語式の「ダックスフンド」とでは、どちらの方が主流の発音の仕方となっているのか?ということについてですが、
上述したように、”Dachshund“という言葉自体は、もともとドイツ語の単語であり、犬種としてもドイツ原産の犬にあたるので、
広辞苑や大辞林といった日本の標準的な国語辞書においては、”Dachshund“のカタカナ表記はすべてドイツ語式の「ダックスフント」となっています。
これに対して、
国際的な愛犬家団体であるケネルクラブ(Kennel Club、※Kennel (ケネル)は犬小屋や犬の飼育場の意味)の一員であり、
日本国内における犬の品種の認定や大規模なドッグショーの開催などを一手に担う公式機関であるジャパンケネルクラブ(Japan Kennel Club、略称JKC)においては、
“Dachshund“のカタカナ表記は、英語式の「ダックスフンド」が採用されています。
その理由としては、ドイツ語式よりも、世界でより広く使われている言語である英語式の発音にした方が、日本人にもより親しみやすく分かりやすい発音になるといったことも考えられるのですが、
そもそも、
世界最古の最も権威あるケネルクラブは、その名もザ・ケネルクラブ(The Kennel Club、略称:KC)と呼ばれるイギリスのケネルクラブであり、
それに次ぐ、世界で二番目に古いケネルクラブもアメリカのアメリカンケネルクラブ(American Kennel Club、略称:AKC)であるように、
ケネルクラブと呼ばれる国際的愛犬家団体自体が、イギリスやアメリカといった英語圏の国々からの強い影響と指導のもとに発展してきた組織であるとも考えられることになります。
そして、
そうした英米本国のケネルクラブにおける呼称にしたがって、日本国内のケネルクラブにおいても、”Dachshund”は、英語式に「ダックスフンド」と呼ばれることになっていったと考えられることになるのです。
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以上のように、
日本国内における公式の愛犬家団体であるジャパンケネルクラブにおいても、「ダックスフンド」という発音が採用されているように、
“Dachshund“という言葉の発音については、それを英語式に「ダックスフンド」と発音しても間違いではないということになり、
むしろ、ペットショップやドッグショーなどにおける表記を通じて、そちらの方が愛犬家たちの間では、より親しみのある標準的な呼称となっているとも考えられることになります。
しかし、その一方で、
“Dachshund”がその語源においても、犬種の由来においてもドイツに深く根差した言葉であることを考えると、
やはり、
ドイツ語の発音規則にしたがって、「ダックスフント」と読む方が、言葉の成り立ちとしては、より正式な発音の仕方であるとも考えられることになるのです。
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関連記事①:ダックスフントの語源と由来とは?ドイツの猟犬とイギリスの闘犬ブルドッグとの関係
関連記事②:ホットドッグの語源と由来とは?ドイツ語ではホットドックでも間違いではない?
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