ホットドッグの語源と由来とは?ドイツ語ではホットドックでも間違いではない?
ホットドッグの語源については諸説ありますが、
その有力な説の一つとして、
焼いた細長いソーセージの形がドイツに由来する犬であるダックスフント(dachshund)の姿に似ていたので、その形のイメージからホットドッグ(hot dog)と呼ばれるようになったという説があります。
アメリカへのドイツ人移民の増加とダックスフントのイラスト
ドイツの食べ物と言うと、ソーセージの他には、日本ではジャーマンポテトなどとも呼ばれる厚めにスライスしたジャガイモをベーコンや玉ねぎなどと一緒に炒めた料理なども有名ですが、
19世紀に、アメリカへのドイツ人移民が増えていく中で、こうしたドイツの食文化もアメリカへと伝わっていくことになり、
街角の屋台や野球場などで手軽に食べられるファーストフード(fast food)としてソーセージを食べる食文化がアメリカ国内へと広く定着していくことになります。
ちなみに、
英語で“hot dog“(ホット・ドッグ)と言うと、
焼いたソーセージそのもののことも指すことになるのですが、
それに対して、
アメリカにおいて、スライスしたロールパンにソーセージをはさみ、上からケチャップやマスタードをかけて食べる日本でもお馴染みのホットドッグの形が定着したのは、もう少し後になってからのことと考えられています。
例えば、
1900年から1920年代にかけてアメリカのニューヨーク・ジャーナルなどの有名誌のスポーツライター兼漫画家として活躍していたタッド・ドーガン(Tad Dorgan)は、
スタジアムで売り子がロールパンにはさんだソーセージを売り歩いているのを目にしたのちに、ソーセージの代わりにダックスフントがロールパンにくるまれたイラストを示し、それを”hot dog“(ホット・ドッグ)と呼ぶシーンを描いていますが、
このように、19世紀末から20世紀初頭になると、アメリカの野球場などにおけるスタジアムの定番メニューとして、ロールパンにソーセージをはさむホットドッグの形が定着していくことになるのです。
また、上記の漫画のイラストの逸話にちなんで、
タッド・ドーガンが描いたロールパンにくるまれたダックスフントのイラストこそがホットドッグの語源であり、”hot dog“(ホット・ドッグ)という言葉自体が彼によって作られた造語であるという説もあるのですが、
ドーガンの作品において”hot dog“という単語が現れるのは、1906年にマディソン・スクエア・ガーデンで開催された自転車レースに関する記述におけるものが初めてであり、
一方、少なくとも、1893年の段階では、デイリー・タイムズやノックスビル・ジャーナルといったアメリカの他の雑誌においても、焼いたソーセージのことを指して”hot dog“(ホット・ドッグ)と記述しているケースを確認することができます。
したがって、
ドーガンが初めて自分の作品の中で”hot dog”という単語を用いた1906年の段階では、アメリカ国内では、すでに、ホットドッグという呼称が一般的になりつつあったということになるので、
“hot dog“(ホット・ドッグ)という言葉自体がドーガン自身によって作られた造語であるという説は、厳密には誤りである可能性が高いと考えられることになるのですが、
いずれにしても、
ドーガンの漫画のイラストにおいても表れているように、アメリカにおいて、ドイツから来た食品である細長いソーセージの形が、同じくドイツに由来する犬であるダックスフントの姿に似たイメージとして捉えられていく中で、”hot dog“(ホット・ドッグ)という呼称が定着していったことはある程度確かであると考えられることになるのです。
英語の「ホット・ドッグ」とドイツ語の「ホットドック」
ちなみに、
アメリカで定着した、ロールパンにソーセージをはさんでケチャップやマスタードをかけるファーストフードとしてのホットドッグという食品の形態は、
その後、もともとのソーセージ食文化の発祥地であるドイツ本国にも逆輸入されるような形で定着していくことになります。
そして、
現在では、ホットドッグは、ドイツ語の辞書にも、”Hotdog“というそのままのスペルの形で載るまでになっているのですが、
英語とドイツ語では、アルファベットの表記は同じ単語でも、発音の仕方が異なるケースが多くあり、英語の”hot dog“とドイツ語の”Hotdog“においてもそうした違いが出てくることになります。
具体的に言うと、
英語において、単語末の”-g“や”-d“の発音は、
“dog“(ドッグ、犬)や”hound“(ハウンド、猟犬)というように、「グ」や「ド」といった濁音になることが多いのに対して、
ドイツ語においては、単語末の”-g“や”-d“は、
“Hamburg“(ハンブルク※ドイツ北部の都市名)や”Hund“(フント、犬)というように、「ク」や「ト」といった清音(濁らない発音)になることが多いのですが、
それにしたがって、
英語の”hot dog“は、
「ホット・ドッグ」と単語末が濁って発音されるのに対して、
ドイツ語における”Hotdog“は、
「ホットドック」と単語末が濁らずに発音されることになるのです。
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そして、以上のことを踏まえると、
ホットドッグはもともとはドイツの食文化に由来する料理であり、その語源も、ドイツに由来する犬であるダックスフントに由来すると考えられることから言っても、
日本語のカタカナ表記においては、通常、ホットドッグと表記されるロールパンにソーセージをはさんでケチャップやマスタードをかけて食べる食品のことを
英語式に「ホット・ドッグ」と発音するのではなく、
ドイツ式に「ホットドック」と発音しても間違いではないと考えられることになるのです。
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