球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?①黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌と腐性ブドウ球の具体的な特徴の違い
以前に「球菌と桿菌とらせん菌の違い」の記事で考察したように、細菌と呼ばれる原核細胞からなる単細胞性の微生物の種族は、一般的に、
形態的な特徴の違いから、球菌(きゅうきん)と桿菌(かんきん)と螺旋菌(らせんきん)と呼ばれる三つの細菌のグループへと分類されることになると考えられることになります。
そこで、今回からの一連の記事では、こうした球菌と桿菌とらせん菌という三つの細菌のグループのうちの最初に挙げた球菌に分類されることになる代表的な細菌の種類について、
それぞれの細菌の具体的な大きさや形状、さらには、そうした個々の細菌によって引き起こされることになる細菌感染症の具体的な症状といった観点から詳しく考察していきたいと思います。
球菌の大きさや形状と球菌に分類される代表的な細菌の種類
まず、そもそも、
球菌(coccus、コッカス)とは、その名の通り、細胞の形が球形をしている細菌のグループのことを意味する言葉であり、
一般的な球菌の大きさと形状は、直径0.5~2µm(0.0005~0.002mm)程度のほぼ完全な球形の形状をしていると考えられることになります。
そして、
こうした球菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類としては、
黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、肺炎球菌、化膿レンサ球菌(溶連菌)、髄膜炎菌、淋菌、ストレプトコッカス・ミュータンス、モラクセラ・カタラーリス(カタル球菌)、乳酸球菌、腸球菌、ペプトコッカス
といった全部で12種類の細菌の種類が挙げられることになるのです。
黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌と腐性ブドウ球の具体的な特徴
そして、このうち、はじめに挙げた
黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌という三つの細菌は、
無数の球菌が互いにくっつき合うことによってブドウの房のような形状を形成しているブドウ球菌と呼ばれる細菌の種族に分類される細菌であり、
こうしたブドウ球菌(Staphylococcus、スタフィロコッカス)と呼ばれる細菌の種族は、直径 1マイクロメートル(0.001mm)くらいの大きさをしたグラム陽性の嫌気性球菌に分類されることになり、
皮膚や消化管、喉や鼻の粘膜や毛髪といった人間を含む様々な動物の体の内外に広く分布する常在菌の一種として位置づけられることになります。
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そして、このうち最初に挙げた
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、スタフィロコッカス・アウレウス)とは、こうしたブドウ球菌と呼ばれる細菌の種族のなかでも、比較的毒性が高い細菌の種類として位置づけられることになり、
手足にすり傷などのケガをした場合に、皮膚に常在していた黄色ブドウ球菌が原因となって傷口の化膿などの症状が引き起こされることがあるほか、こうした黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌が皮膚上で異常に増殖していくことによってにきびやおできといった皮膚トラブルの原因菌となってしまうケースもあり、
調理の際などに料理人の手や指などにある傷口などを介して食品中に黄色ブドウ球菌が付着してしまった場合には、黄色ブドウ球菌が増殖していく際に生み出すエンテロトキシンと呼ばれる毒素によって、吐き気や嘔吐、腹痛や下痢といった食中毒の症状が引き起こされることもあると考えられることになります。
そして、さらには、
MRSA(多剤耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれる多種類の抗生物質に対する耐性をもった黄色ブドウ球菌の感染などで有名なように、細菌性の肺炎の原因となることもあるほか、
細菌が血管内へと侵入して全身へと運ばれていってしまうことによって、髄膜炎や敗血症といったより重篤な全身症状を引き起こすこともあるというように、
こうした黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌は、皮膚における化膿性の炎症や食中毒、肺炎や髄膜炎そして敗血症といった多様な症状や疾患の原因となる細菌の種類として位置づけられることになるのです。
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そして、それに対して、その次に挙げた
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、スタフィロコッカス・エピデルミディス)は、その名の通り、人間の皮膚の表面に存在する常在菌の一種であり、
通常の場合は、人間の皮膚の表面において皮脂などを養分として脂肪酸などの皮膚を弱酸性の状態に保つ物質を分泌することによって、他の病原菌から表皮を守るバリアのような役目を果たしている人間と共生関係にある細菌の種類であるとも考えられることになるのですが、
こうした本来は人間の皮膚の表面において活動している表皮ブドウ球菌と呼ばれる細菌が、手術などの際に、カテーテルや心臓弁などの医療用器具に付着して体内へと侵入してしまった場合には、感染性心内膜炎などの感染症の原因となってしまうケースもあると考えられることになります。
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そして、最後に挙げた
腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus、スタフィロコッカス・サプロフィティカス)は、主に、泌尿器の周囲の皮膚や粘膜などに存在する常在菌の一種であり、
宿主となる人間の体力や免疫力が弱ってきた場合などには、本来の生息部位である泌尿器周辺の皮膚や粘膜から尿道などの部位へと侵入することによって尿路感染症などの原因となるケースがあると考えられることになるのです。
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次回記事:球菌に分類される代表的な細菌の種類とは?②肺炎球菌と溶連菌(化膿レンサ球菌)の具体的な特徴と症状の違い
前回記事:寄生虫の大きさはどのくらいのなのか?代表的な56種類の寄生中の大きさの比較とランキング
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