球菌と桿菌とらせん菌の違いとは?細胞の形状に基づく三つの細菌グループに分類される代表的な細菌の種類と具体的な特徴
前回の記事で書いたように、細菌と呼ばれる生物の種族に対する一般的な分類法のあり方としては、まずは、グラム染色と呼ばれる染色法に基づいてなされる
グラム陽性菌とグラム陰性菌という二つの細菌のグループへと区分していく分類のあり方が挙げられることになります。
そして、それに対して、
細菌の形状というよりシンプルな観点からは、こうした細菌の種族に対する分類のあり方は、大きく分けて、
球菌(きゅうきん)と桿菌(かんきん)と螺旋菌(らせんきん)という三つの細菌のグループへと分類していくことができると考えられることになります。
球菌の具体的な特徴と分類される代表的な細菌の種類
まず、
こうした球菌と桿菌とらせん菌という三つの細菌のグループのうちの最初に挙げた球菌(coccus、コッカス)とは、
その名の通り、細菌の一つ一つの細胞の形が球形をしている細菌のグループのことを意味する言葉であり、
一般的な球菌は、直径0.5~2µm(0.0005~0.002mm)程度のほぼ完全な球形を示す個々の細菌の大きさが比較的小さい細菌のグループに分類されることになります。
また、
こうした球菌と呼ばれる細菌のグループは、細胞分裂したのちに個々の細菌の細胞がバラバラに離れていく単球菌のほかにも、分裂した後も球菌どうしがくっついたままで2個ずつ対をなす双球菌や、4個ずつ対をなす四連球菌や、八連球菌、
さらには、無数の球菌が鎖状に連なっている連鎖球菌や、そうした無数の球菌が互いにくっつき合ってブドウの房のような形状となるブドウ球菌といった細菌の種族などへと細かく分かれていくことになります。
そして、
こうした球菌に分類されることになる代表的な細菌の種類としては、
肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、乳酸菌(乳酸球菌)、さらには、髄膜炎菌や淋菌といった細菌の種類も挙げられることになるのです。
桿菌の具体的な特徴と分類される代表的な細菌の種類
そして、それに対して、
その次に挙げた桿菌(bacillus、バシラス(※ラテン語読みではバチルス))とは、
細菌の一つ一つの細胞の形が細長い棒状または円筒状をしている細菌のグループのことを意味する言葉であり、
一般的な桿菌は、短径が0.2〜1µm、長径が1〜5µm程度の大きさであるとはされているものの、実際には、長径でも1µmに満たない細菌から炭疽菌のように長径が10µm以上にもおよぶ細菌まで、多様な大きさと形状をした細菌の種族が分類されることになります。
また、
こうした桿菌に分類される細菌のグループは、短径に対する長径の長さが長い長桿菌と、短径に対する長径の長さ短い短桿菌、さらには、短径と長径の長さがほとんど変わらないため見た目では球菌との区別がつきにくい球桿菌といった細菌の種族へと細かく分かれていくことになります。
そして、
こうした桿菌に分類されることになる代表的な細菌の種類としては、
納豆菌、枯草菌、乳酸菌(乳酸桿菌)、大腸菌、ウェルシュ菌、サルモネラ菌、リステリア、緑膿菌、百日咳菌、結核菌、ボツリヌス菌や破傷風菌やウェルシュ菌などのクロストリジウム、ペスト菌、チフス菌、赤痢菌、らい菌(癩菌)、炭疽菌、インフルエンザ菌、腸炎ビブリオ※、ビブリオ・バルニフィカス
といった数多くの細菌の種類が挙げられることになるのです。
※ビブリオ属の細菌は菌体が1回転から半回転ほどした形状をしているので、桿菌ではなく、後述するらせん菌として分類されることもあります。
らせん菌の具体的な特徴と分類される代表的な細菌の種類
そして、
最後に挙げたらせん菌(spirillum、スピリルム)とは、
細長い形状をした菌体がとぐろを巻いたりコイル状になったりすることによってらせん形(螺旋形)の形状になっている細菌のグループのことを意味する言葉であり、
こうしたらせん菌と呼ばれる細菌のグループには、菌体の回転数が1回転程度のものから、2~3回転程度、さらには、数百回転にもおよぶものまで、多様な形状をした細菌の種族が分類されることになります。
そして、
こうしたらせん菌に分類されることになる代表的な細菌の種類としては、
コレラ菌、カンピロバクター、ピロリ菌などのヘリコバクター、梅毒トレポネーマなどのスピロヘータ
といった細菌の種類が挙げられることになるのです。
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次回記事:肺炎球菌と肺炎桿菌の違いとは?人体に対する強毒性と弱毒性の違いとグラム陽性の球菌とグラム陰性の桿菌としての特徴の違い
前回記事:グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いとは?両者に分類される代表的な細菌の種類と具体的な特徴
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