心理学における「合理化」の意味とその具体例とは?論理的に見える不合理な説明を導く心の働き、合理化とは何か?①、防衛機制とは何か?⑬
このシリーズの初回から前回までの記事で詳しく考察してきたように、
人間の心を現実の社会生活において生じる様々な心理的ストレスから守る役割を持った自我の防衛機制の働きの主な種類としては、
精神分析学の祖として有名なジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイトによる分類のあり方に基づいて、
「抑圧」、「退行」、「反動形成」、「隔離」、「打ち消し」、「投影」、「取り入れ」、「自己自身への向け換え」、「逆転」、「昇華と置き換え」
という全部で十種類の防衛機制のあり方が挙げられることになるのですが、
こうしたアンナ・フロイトの分類において直接的には触れられていない心の働きのなかにも、さらに、いくつか重要な働きを担う防衛機制の種類を挙げることができると考えられ、
そのなかでも、主要なものとして位置づけられる代表的な防衛機制の種類としては、「合理化」と呼ばれる心の働きが挙げられることになると考えられることになります。
心理学における「合理化」の意味とその具体例とは?
まず、
心理学の分野においては、「合理化」(Rationalization)と呼ばれる自我の防衛機制の働きのあり方のことを示す概念は、一般的に、
自分の心の内に存在する満たされない欲求や不安などに対して、合理的な説明を与えることによって、自分自身を納得させようとする心の働きや、
そうした合理的な説明を言い訳として用いることによって、意識的あるいは無意識的に自分が行った行為の本当の動機を隠して、自分自身のの行為の正当化を図ろうとする心の働きのことを意味する言葉として用いられていると考えられることになります。
そして、
こうした「合理化」と呼ばれる自我の防衛機制の働きが実際に機能している具体例としては、例えば、
原因不明の発作や体調不良に悩まされている神経症の患者が、不必要な精密検査を何度も繰り返してでも、自分の症状を説明する何らかの希少な身体的な疾患の病名を見つけようと躍起になってしまうケースや、
さらには、悪霊などの霊的な働きの内にその原因を求めてお祓いや悪魔祓いをすることなどに頼ってでも、そうした自らの不安を軽減しようとするケース、
あるいは、
自分の不注意で交通事故を起こしてしまった犯人などが、被害者側の落ち度を強く主張するような自分の側に都合のいい言い訳を考え出していくことによって、自己の保身や正当化を図ろうとするケースがなどが挙げられることになると考えられることになります。
一見すると論理的に見えるが実際には不合理な説明を導く心の働き
以上のように、
心理学の分野において、自我の防衛機制の働きの一つとして位置づけられている心理的な機能である「合理化」においては、
原因不明の現象に対して、明確な論理的根拠ない場当たり的な説明を与えることによって、その場しのぎの安心感を得ようとする心の働きや、
自分がやってしまった行為に対する責任を正面から取ろうとせずに、本来の動機や理由とは異なる説明を後づけで加えることによって、そうした自分の行為の正当化を図ろうとする心の働きなどが生じていくことになると考えられることになるのですが、
そういった意味では、少し逆説的な言い方にはなりますが、
こうした「合理化」と呼ばれる心の働きは、それが「合理化」という言葉で呼ばれてはいるものの、
原因不明の出来事や自分にとって不都合な事実などを、一見すると少し論理的であるようにも見えるが実際は不合理な説明によって覆い隠そうとする心の働きとして捉えることができると考えられることになるのです。
・・・
そして、詳しくはまた次回の記事で改めて考察していくように、
こうした「合理化」と呼ばれる心の働きについて、その性質のあり方が最も端的な形で示されている物語としては、
古代ギリシアの『イソップ物語』のなかに出てくる「酸っぱいブドウ」の話が挙げられることになると考えられることになります。
・・・
次回記事:「酸っぱいブドウ」の心理学的な意味とは?『イソップ物語』における擬人化されたキツネの寓話の心理学的な解釈、合理化とは何か?②
このシリーズの次回記事:自我の防衛機制における「孤立」と「逃避」の定義と心理学における「退行」との関係とは?防衛機制とは何か?⑭
前回記事:近代の物理学と中世の錬金術における「昇華」の意味と現代心理学における「昇華」の概念との関係とは?昇華とはなにか?②
このシリーズの前回記事:心理学における「昇華」の定義とは?抑圧された心的エネルギーの発展的で創造的な方向への解放、昇華とはなにか?①、防衛機制とは何か?⑫
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