桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?④緑膿菌、百日咳菌、肺炎桿菌の具体的な特徴と引き起こされる細菌感染症の症状
前回までの一連の記事では、大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、セレウス菌といった急性胃腸炎の原因となる病原菌、そして、クロストリジウム属に分類されるボツリヌス菌とウェルシュ菌と破傷風菌という三つの細菌の種類の具体的な特徴について順番に考察してきましたが、
今回の記事では、それに引き続いて、
緑膿菌、百日咳菌、肺炎桿菌という三つの桿菌の種類について、それぞれの細菌の具体的な大きさや形状といった特徴や、そうした個々の桿菌の種類によって引き起こされることになる細菌感染症の具体的な症状の違いといった観点から、詳しく考察していきたいと思います。
緑膿菌の具体的な特徴と化膿性の炎症や院内感染の原因菌としての位置づけ
まず、はじめに挙げた
緑膿菌(りょくのうきん、Pseudomonas aeruginosa、シュードモナス・エルギノーザ)とは、幅0.5マイクロメートル、長さ1.5~4.0マイクロメートルくらいの大きさをした細胞の周囲に1本から3本の鞭毛を持つ棒状の形状をしたグラム陰性の好気性桿菌の一種であり、
こうした緑膿菌と呼ばれる細菌は、土壌や淡水、海水中などといった自然環境のいたるところに生息する常在菌の一種として位置づけられることになるものの、
その一方で、
以前に球菌の代表的な種類について考察した一連の記事のシリーズのなかで取り上げた黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌(溶連菌)などと同様に、傷口などの化膿の原因となる病原菌の一種としても分類されることになると考えられることになります。
そして、
こうした緑膿菌を原因とする細菌感染症においては、前述したように、傷口から感染した緑膿菌が皮膚などにおいて、その名の通り、緑色の膿を伴うような化膿性の炎症が引き起こされることがあるほか、
免疫力が低下した患者などにおいては、日和見感染症の形で感染を広げていくことによって、気道感染から肺炎などの症状が引き起こされてしまうケースや、心内膜炎や敗血症といった重篤な症状が引き起こされてしまうケースがあると考えられることになります。
また、
こうした緑膿菌と呼ばれる細菌は、しばしば、比較的低濃度の消毒液の中でも増殖していくケースまであるように、消毒薬や抗生物質といった薬剤に対して強い耐性を示すことが分かっていて、
そうした多剤耐性緑膿菌を原因とする院内感染の原因菌としても注意が必要な細菌の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
百日咳菌の具体的な特徴と百日咳という病名の呼び名の由来
そして、その次に挙げた
百日咳菌(Bordetella pertussis、ボルデテラ・パーツシス)とは、幅0.3~0.5マイクロメートル、長さ1.0~1.5マイクロメートルくらいの大きさをした卵型の形状をした比較的小型のグラム陰性の好気性桿菌の一種であり、
患者の咳をあびるといった飛沫感染によって感染を広げていく病原菌の種類として位置づけられることになります。
そして、
こうした百日咳菌によって引き起こされる百日咳と呼ばれる細菌感染症においては、短い連続的な咳やヒューヒューという笛の音のような呼吸音を特徴とする痙攣性の咳の発作が繰り返し長期間にわたって続いていくことになり、
回復までに1か月から長い場合には3か月もの期間を要することになるため、「3か月=90日≒100日」といった意味で、こうした百日咳という呼び名が付けられることになったと考えられることになります。
そして、
こうした百日咳と呼ばれる感染症は、小学生以下の小児や乳幼児などにおいて感染を広げていくケースが多く、そのなかでも特に、1歳以下の乳児は重症化しやすく、6か月以下の場合には死亡の危険性が高い感染症としても位置づけられることになるため、
乳幼児期や小児期において、的確にワクチンの予防接種を行っておくことが必要な病原菌の種類として分類されることになると考えられることになるのです。
肺炎桿菌の具体的な特徴と日和見感染症の原因菌としての位置づけ
そして、その次に挙げた
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、クレブシエラ・ニューモニエ)とは、幅0.3〜1.5マイクロメートル、長さ0.5〜5マイクロメートルくらいの大きさの棒状の形状をしたグラム陰性の嫌気性桿菌の一種であり、
以前に球菌の代表的な種類のうちの一つとして取り上げた肺炎球菌と同様に、免疫力の低下した人に感染して肺炎などの呼吸器疾患の症状を引き起こす病原菌の一種として分類されることになります。
そして、
こうした肺炎桿菌は、前述した肺炎球菌と比べると病原性が低く、実際に肺炎などの呼吸器系疾患の原因となるケースも比較的少ない弱毒性の病原菌の種類として分類されることになるのですが、
その一方で、免疫力の低下した人に対して感染した場合には、肺炎などのほかに、尿路感染症や敗血症などを引き起こすこともある日和見感染症の原因となる細菌の種類としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤結核菌、らい菌というマイコバクテリウム属に分類される二つの細菌の具体的特徴
前回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?③ボツリヌス菌とウェルシュ菌と破傷風菌というクロストリジウム属の三つの細菌
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