桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?③ボツリヌス菌とウェルシュ菌と破傷風菌というクロストリジウム属の三つの細菌

前々回前回の記事では、一般的な細菌性胃腸炎の原因となる桿菌の代表的な種類として、大腸菌のほかに、サルモネラ菌腸炎ビブリオセレウス菌といった三つの細菌の種類の具体的な特徴や引き起こされる感染症の具体的な症状といったことについて詳しく考察してきましたが、

前回も書いたように、こうした一般的な細菌性胃腸炎の原因となる桿菌の代表的な種類としては、その他にもボツリヌス菌ウェルシュ菌といった細菌の種類も挙げられることになります。

そして、

こうした残りのボツリヌス菌ウェルシュ菌という二つの桿菌の種類は、破傷風菌と呼ばれる桿菌の種類と共に、クロストリジウム属と呼ばれる同じ細菌の種族に分類されることになる互いに近しい関係にある細菌の種類としても位置づけられることになります。

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ボツリヌス菌の具体的な特徴とボツリヌス食中毒における神経毒の症状

まず、はじめに挙げた

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum、クロストリジウム・ボツリヌス)とは、0.91.2マイクロメートル長さ46マイクロメートルくらいの大きさをした周毛性の鞭毛を持つ棒状の形状をしたクロストリジウム属に分類されるグラム陽性嫌気性桿菌の一種であり、

ボツリヌス菌を含む嫌気性細菌は、本来は、酸素が存在する環境下では生存を維持することができないももの、

こうしたクロストリジウム属に分類される細菌は、芽胞(がほう)と呼ばれる特殊な耐久性の高い構造体を形成することによって、そうした他の一般的な嫌気性細菌が生き残ることができない過酷な環境においても生存し続けることができるため、

耐久性と生命力の強い細菌の種族として位置づけられることになると考えられることになります。

そして、

こうしたボツリヌス菌と呼ばれる細菌は、酸素が少ない状態で密閉されている缶詰ビン詰などの保存食品の容器内などにおいて増殖していく場合が多く、

大量に増殖したボツリヌス菌によって汚染された食品を摂取した場合などに、そうしたボツリヌス菌と呼ばれる細菌が増殖の際に生産するボツリヌス毒素と呼ばれる強力な毒素によって、吐き気嘔吐、さらには、物が飲み込みづらくなる嚥下障害言語障害視力障害といった神経症状が引き起こされることになり、

こうしたボツリヌス食中毒重症化したケースにおいては、そうしたボツリヌス毒素の働きが中枢神経系にまで達してしまうことによって、呼吸麻痺によって死に至ってしまうケースもあると考えられることになるのです。

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ウェルシュ菌の具体的な特徴と集団食中毒の原因菌としての位置づけ

そして、その次に挙げた

ウェルシュ菌(Clostridium perfringens、クロストリジウム・パーフリンジェンス)とは、0.91.3マイクロメートル長さ39マイクロメートルくらいの大きさをした鞭毛を持たない非運動性の細菌にあたるクロストリジウム属に分類されるグラム陽性嫌気性桿菌の一種であり、

こうしたウェルシュ菌と呼ばれる細菌は、肉類や魚介類や野菜を使用した煮込み料理などの大量の食材を調理する際に、料理がそのまま冷えた状態で長期間放置されていると、空気に触れていない大鍋の内部などにおいて増殖していってしまうケースがあり、

弁当仕出し屋旅館学校の給食などにおける集団食中毒の原因となることが多い細菌の種類としても位置づけられることになります。

そして、

こうしたウェルシュ菌を原因とする食中毒急性胃腸炎においては、下痢腹痛吐き気嘔吐といった消化器系を中心とする症状が引き起こされることになると考えられることになるのです。

破傷風菌の具体的な特徴と全身の筋肉に硬直や痙攣を引き起こす致死性の細菌感染症としての位置づけ

そして、こうしたクロストリジウム属に分類される代表的な三つの細菌の種類のうちの最後に挙げた

破傷風菌(Clostridium tetani、クロストリジウム・テタニー)とは、0.30.6マイクロメートル長さ48マイクロメートルくらいの大きさをした周毛性の鞭毛を持つ太鼓の撥(ばち)のように細胞の一端が膨らんだ形状をしたクロストリジウム属に分類されるグラム陽性嫌気性桿菌の一種であり、

こうした破傷風菌と呼ばれる細菌は、芽胞の状態で土壌中に広く生息しているため、土や泥などで汚れた状態ですり傷や切り傷などの外傷を負った場合や、とげや古い釘などが刺さった場合に人間に対して感染することがあると考えられることになります。

そして、

こうした破傷風菌が原因となる破傷風と呼ばれる細菌感染症においては、傷の表面がいったん治ってきたように見えても、嫌気性細菌である破傷風菌が、外気が触れていない傷の内部において増殖を続けていってしまうケースがあり、

そのようなケースにおいては、破傷風菌が生産するテタノスパスミンと呼ばれる神経毒によって末梢神経から脳や脊髄といった中枢神経へと至る全身の神経細胞が冒されることによって、全身の筋肉硬直や痙攣といった症状が引き起こされることになり、

病状が進行していくと、体が弓なりになる姿勢に硬直していく反弓緊張や、顔の筋肉が引きつって半笑いのような奇妙な表情に固着していく、あるいは、舌を噛んで出血するといった特有の症状が現れていったうえで、

最終的には、呼吸作用を担う横隔膜が硬直してしまうことによる呼吸麻痺心臓麻痺などによって発症者の50%が死亡してしまうことになる非常に危険な細菌の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。

したがって、

こうした破傷風菌による細菌感染症の予防のためには、海外渡航土木作業などをする際などには破傷風ワクチンの予防注射をあらかじめ受けておくといった処置や、

古い木材や釘などを扱う作業や、野外活動を行う際などには、軍手や厚手の靴下、長袖、長ズボンなどでしっかりと皮膚を防護しておくことが破傷風感染の予防対策として重要となると考えられることになるのです。

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次回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?④緑膿菌、百日咳菌、肺炎桿菌の具体的な特徴と引き起こされる細菌感染症の症状

前回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?②サルモネラ菌と腸炎ビブリオとセレウス菌の具体的な特徴と症状の違い

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